キアヌが何かとアレなマッド・サイエンティストを熱演!
“父親大暴走SFアクション”というのが、日本での『レプリカズ』のキャッチコピーになっている。いや宣伝担当の方、かなり苦心したんじゃないか。この映画、エンターテインメント作品としてスパッと「こういう映画です」と説明できるタイプではないのだ。
主人公は神経科学者ウィリアム。人間の記憶や心をロボット(別の体)に移し替えるという研究をしており、そもそものところで生命倫理ギリギリである。そんな人間が事故で妻子を失い、研究所の設備を極秘で使ってクローンを誕生させる。そして、そこに家族それぞれの記憶を移植するわけだ。つまりこの映画、マッド・サイエンティストものである。
安易な感情移入を許さない! 悲劇の主人公キアヌ
もともとが「そこまでしていいのか?」という研究に手を染めている主人公。彼が家族を失ったショックからさらに暴走していくわけで、「あんなにいい人だったのに……」という前提がない。なおかつこの主人公、直面するさまざまな事態にいちいち「えっ!?」という無茶な行動を取ってしまう。まさに「正気じゃないだろ」というやつで、それが後半のストーリーにも大きく影響していくのだが。
家族愛を描きながら、主人公に感情移入することが難しいのが『レプリカズ』という映画だ。しかし、主人公に感情移入できないけれども面白い映画というのもたくさんあるわけで、“そういう映画”だと思って見始めると一気に集中力が増す。「これはなかなかの怪作だぞ」ということで前のめりになれるのだ。
好感度No.1俳優キアヌの“暴走そのもの”を楽しむべし!
「それやっちゃダメだろ」という狂気を主人公が見せつつ、その間に軽いコメディ演出が入ったりするのも怪作ぶりに拍車をかけている。しかも主人公を演じるのはキアヌ・リーヴスだ。
これがウィレム・デフォーやニコラス・ケイジだったら「そりゃこの人マッド・サイエンティストでしょ」となるし、ロバート・ダウニー・Jrやライアン・ゴズリングでもまあ、腑に落ちるだろう。でもキアヌだ。さすがに感情移入してナンボの人だろうというイメージも、この映画の“仕掛け”に思えてきたりする。
プロットに穴はあるし、結局のところ最後まで根本的なテーマは解決されてないような気がする。が、本作は何よりも映画自体の“暴走”を楽しむものだろう。キャッチコピー、あながち間違っていないのだった。
文:橋本宗洋
『レプリカズ』は2019年5月17日(金)より公開
『レプリカズ』
その発明は、大罪か?奇跡か?
愛する家族を守るため、科学者の戦いが、今はじまる!
制作年: | 2017 |
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監督: | |
出演: |