『シャークネード』とは何だったのか
『シャークネード』を一言で言えば、「竜巻に巻き上げられたサメが空から降ってきて人を襲う」……そんなおバカな作品です。しかし、本編には単なるおバカ作品の一言では片付けられない、トンデモない映像と展開が待っているのです。
2013年7月にアメリカのケーブルテレビの専門チャンネルで放送されて人気に火が付き、以降2018年まで毎年1作品ずつ作られ、『シャークネード』シリーズは全6作で完結しています。
「人気」と書きましたが、2作目以降は放送される度にツイート数も増加。各作品の放送当日、アメリカ本国のTwitterはタイムラインが「SHARKNADO」で埋まり、当時のTOPツイートを記録しました。本作の関係者は「アメリカでTOPということは、世界でもTOPだ!」と喜んでいたんだとか……。
上映時にはグッズも登場し、Tシャツやフィギュアはもちろん子供用のパジャマ、靴下……などなど様々作られましたが、驚いたのはライセンス無視の、いわゆる“パチもの”グッズまで勝手に売られる状況になったことです。
さらには、明らかに本作を意識した設定の大人向けビデオ(HUSLER社『SKANKNADO』)までもが他社で作られる、なんてこともありました(※ちなみにアサイラム社の飾り棚にはこのDVDが飾ってありました……)。
サメ映画の“恐怖”ではなく、“驚き”や”楽しさ”を全面に打ち出す
こんなことは有名作品ならば聞かない話ではないのですが、『シャークネード』の製作はアメリカの映画製作会社アサイラム。彼らは『トランスモーファー』や『ターミネーターズ』などの便乗作品で名を馳せていた会社なのです。
さらに、主人公フィンを演じたアイアン・ジーリングは、本作のヒットを受けて<Chainsaw Brands>というアパレルブランドの立ち上げまで行っています。ちなみにブランドロゴはチェーンソーを二つ交差させたもので、『シャークネード4(フォース)』にはロゴ入りの青いポロシャツを着て出演を果たしています。
しかし、本作の最大のポイントはなんと言っても、これまでのサメ映画の定番だった“恐怖”ではなく、“驚き”や”楽しさ”を全面に打ち出したこと。
来るぞ来るぞ……ではなく、いきなりドーン! と「おい、それはないだろ~!」と思わずツッコミを入れたくなるような、刺激のある映像が飛び込んでくるのです。だから、ビールやピザ(またはコーラにポップコーン)を片手に、「ワハハ!」と笑いながら楽しんでいただくスタイルがピッタリな、新世代を切り拓いたサメ映画なのです。