スコセッシ、カンヌに帰還
第76回カンヌ国際映画祭の目玉のひとつ。マーティン・スコセッシのカンヌ復帰作と言われる『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』、3時間26分の大作である。
ネイティブ・アメリカンの居留地域で実際にあった事件をもとに、フィクションを交えながら描くクライム映画になっている。原作はデイヴィット・グランのノンフィクション「花殺し月の殺人―インディアン連続怪死事件とFBIの誕生」(早川書房)だ。
あるネイティブ・アメリカンの死とFBI誕生のきっかけ
西部開拓時代を経て居留地に囲い込まれた先住民の土地に石油が湧き出す。たちまち先住民はリッチになり、彼らが暮らす町オクラホマ州オセージは発展を遂げる。しかし、その富と石油の湧き出す土地に目をつけた白人たちは、あらゆる手段を使いその権利を奪い取ろうと画策する。
そしてオセージで連続怪死事件が起こる。しかし、先住民である被害者の死は全く問題視されず、単に事故死として処理され、事件は闇に葬られるのである。保安官も役人も白人権力者と結託して彼らの利益のためにしか動かない。
そんな1920年のオセージの町に、第一次大戦からの帰還兵アーネストがやってくる。仕事を求め、叔父である町の有力者ビルのもとに身を寄せたアーネストを演ずるのがレオナルド・ディカプリオだ。
アーネストはロバート・デ・ニーロ演ずる叔父ビルの勧めるままに、先住民のリーダー的な女性モリーに近づき結婚する。ある日、モリーの妹の死体が発見されるが、いつもの通り事故として処理されてしまう。憤ったモリーは、とうとう一族を引き連れてワシントンDCに向かい、政府に調査を直訴することを決意する。それがエドガー・フーバーを長とする<FBI>の誕生のきっかけになるのだ。