パク・チャヌク監督が解説
全国公開中のパク・チャヌク監督最新作『別れる決心』より、監督自らが語る“3分でさらにわかる”本作の特別映像が解禁された。
ディティールの隅々まで監督のこだわりがたんまりと込められた本作に「何度か観て謎や伏線を確認したい」「一度では消化できないけれど、傑作」などの声が上がり、その独特な表現に何度も観たくなるとリピーター続出している。今回解禁となった映像では、ソレ(タン・ウェイ)とへジュン(パク・ヘイル)はなぜ惹かれ合うのか、そして監督が描き上げた2人の関係性とは?さらに、二人の脇を固める魅力的なキャラクターまでを徹底解説。未鑑賞の方も、すでに鑑賞済みの方もこの映像を見れば本作をまた違った角度からさらに楽しめることだろう。
二人の関係性について
まずパク・チャヌク監督は、『別れる決心』のタイトルには、“私たちは合わない”と別れる決意をしたとしても、心の奥底では“別れるべきではない”とわかっているという意味が込められているという。このタイトルのように、本作の表現も一筋縄ではいかないものばかりだ。「へジュンとソレは考え方が似ているから、2人は恋に落ちるのだ」というが、その表現の優雅さにはただ驚くばかりだ。
本映像の中でも紹介されているが、ソレはヘジュンに「慈悲深い人は山を好むが、自分は海が好きだから慈悲深くない」と語りかける。それに対してへジュンも「僕も海が好きです」と答える。本作には海にも山にも見えるディティールたちが散りばめられており、さらに二人は荒れ狂う海で映画史に残る衝撃のラストにたどり着くのである。2人が似ているという表現は他にも出てくるが、「夫の死を言葉で説明するか、写真で確認するか」というものであったり、「取調室で高級寿司を食べる様子」であったりと、どれも他に類を見ないものばかりだ。そういった独特な表現を通して描かれる2人の様子に、中毒者が続出している。
さらに、本作では「霧」という歌謡曲や、霧の多い「イポ」という架空の街など、“霧”が印象的に登場している。とあるシーンで、ソレはへジュンに「ここは霧がありません」と優しく語りかけるのだが、それは「彼女が彼の沈んだ心を晴らすと宣言しているようなものだ」と監督は語っている。決して“愛している”と言わないラブストーリーを作りたかったというように、本作は直接的ではない表現が度々登場しており、二人だけの世界をより一層ロマンティックに作り上げている。監督は本作について、「ある2人の関係の発展と崩壊までを描いたラブストーリーだ」と語っている。喪失を描いた悲痛な物語であるが、それを悲劇に浸るのではなく、さりげなく優雅に語るように表現することを心がけたのだという。
脇を固める魅力的なキャラクターたち
2人の脇を固めるキャラクターたちもパク・チャヌク監督のこだわりが満載だ。へジュンの妻は、ソレと対極にある存在として描かれており、ソレが再婚した第2の夫も名刺のデザインだけで高慢な人間性が伝わってくる。また、へジュンに憧れて釜山にきた後輩刑事のスワン(コ・ギョンピョ)はへジュンとは違う視点で物事を見つめることができる存在であり、へジュンがイポへ移ってからの後輩刑事のヨンスはスワンとはまた正反対のキャラクターである。ヨンスを演じたキム・シニョンはコメディアンが本業で、本作が映画デビューとなるのだが、パク・チャヌク監督は「彼女は天才だ!」と称賛し、さらに『パラサイト 半地下の家族』(2019)で知られるポン・ジュノ監督も彼女を絶賛していることも本映像で明かしている。
『別れる決心』はTOHOシネマズ日比谷ほか全国公開中