今こそ知りたいスパイ・ゾルゲ
「リヒャルト・ゾルゲ」という名を聞けば、多くの人が第二次大戦中に暗躍したソ連のスパイの顔を思い浮かべるだろう。昭和初期の東京で起きた「ゾルゲ事件」は、その後の国際情勢を大きく変えることとになる“世紀のスパイ事件”だった。
没後、多くの関連書籍やドキュメンタリー作品の題材となったロシア系ドイツ人ゾルゲ。手塚治虫の漫画「アドルフに告ぐ」では当初主人公として構想され、またアニメ『風立ちぬ』に登場した某キャラクターのモデルになったと言われており、日本人にも馴染み深い人物と言える。
あのプーチンも敬愛する伝説的スパイの半生を描くドラマ
1930年代から日本で諜報活動を行っていたゾルゲは逮捕・処刑後、当時のソ連からはその存在が冷遇されていたが、1960年代にスターリン政権の内情が暴露されはじめたことで再評価の動きが拡大。現在では駐日ロシア大使が毎年ゾルゲの墓参りに訪れるなど、完全に英雄視されている。
当然ながらゾルゲ再評価には、KGB出身のウラジミール・プーチンも無関係ではない。プーチンの「ゾルゲに憧れてKGB入りした」とも取れる発言の真偽は不明だが、彼の銅像を建てたり墓をロシアに移そうとしているという報道からは、祖国が誇る“影の功労者”への敬意が見て取れる。
はたしてゾルゲは祖国を売ったスパイなのか、それとも戦争を止めようとした真の愛国者だったのか……。 ロシア・ウクライナ・中国合作のドラマ『スパイを愛した女たち リヒャルト・ゾルゲ』(2019年製作)は、ヒリヒリとしたサスペンス要素とともに、日本人女性やドイツ人女性との恋愛模様も盛り込んだ“国際情報ドラマ”だ。
ソ連共産党の諜報員でありながら、ナチス党員という二つの顔をもつ希代の「人たらし」が、天才的な諜報員として技量を発揮する際の葛藤や苦悩を浮き彫りにする本作。いまだ評価が揺れる伝説的人物の諜報活動と知られざる内面にまで迫る、全12話の壮大な人間ドラマである。
『スパイを愛した女たち リヒャルト・ゾルゲ』は2023年2月25日(土)より新宿 K’s CINEMAにてロードショー