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「木村さんだからできた信長像」木村拓哉×綾瀬はるか『レジェンド&バタフライ』 全身で“相手を感じながら”演じた撮影秘話

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ライター:#SYO
「木村さんだからできた信長像」木村拓哉×綾瀬はるか『レジェンド&バタフライ』 全身で“相手を感じながら”演じた撮影秘話
綾瀬はるか

『龍馬伝』『るろうに剣心』シリーズの大友啓史監督が、木村拓哉×綾瀬はるかと共に壮大な感動超大作を作り上げた。2023年1月27日に劇場公開を迎える『レジェンド&バタフライ』だ。「リーガルハイ」や「どうする家康」『コンフィデンスマンJP』シリーズの古沢良太が脚本を手掛け、織田信長の波乱に満ちた生涯を妻・濃姫との出会いから共に歩んだ数十年を軸に描いていく。

いわば夫婦のラブストーリーという斬新なアプローチが効いた本作に、木村と綾瀬はどう挑んだのか。貴重な裏話を語ってもらった。

『レジェンド&バタフライ』©2023「THE LEGEND & BUTTERFLY」製作委員会

新たな信長と濃姫

―織田信長を描いた映像作品は数多く存在しますが、『レジェンド&バタフライ』は濃姫との夫婦の物語であるのが特長です。印象が変わるような新鮮さがありました。

木村:「いままでの織田信長像とは違う」であったり、様々な感想や想いは存在して構わないと思いつつ、あくまでも自分たちの向き合い方として、何かと比較するものではなく脚本に書かれているものが唯一であり正解だと思っています。

『レジェンド&バタフライ』©2023「THE LEGEND & BUTTERFLY」製作委員会

脚本は作品の設計図であり、出演者以外にも照明部・録音部・美術部ほか全員がそれを共有して作業するもの。たとえば読んだときに「こんなに優柔不断で腕っぷしも弱いんだ」と思ったとしても、そうじゃないと濃姫がいる意味がないともいえる。そうした作品全体のバランス感覚を含め、すごく理解しやすい脚本で「なぜこんなことを言うのか? なぜこういうことをするのか?」と思うことは一切ありませんでした。

冒頭、濃姫を迎え入れる段階の信長は16~17歳。それを49歳の男がやっていいのだろうかとは正直思いましたが、現場に立たせていただいた瞬間にそんな思いは全くなくなりました。

綾瀬:濃姫に関しては、大友啓史監督から最初に「何でもできる人」とお話がありました。作法も武芸も一通り訓練されていて、聡明で男勝りな“一緒に戦える”人。「信長の寝首をかこうとして嫁に行く」を違和感なく遂行できる、カッコいい人だと感じました。

綾瀬はるか

木村:綾瀬さんが濃姫をやってくれていなかったら、今回のようなアクションは存在していないと思います。彼女だから武芸に長けた濃姫ができたし、ただ美しいだけではない人物になった。

綾瀬:でも、それは木村さんももちろんそうで、木村さんだからできた信長像だと思います。そして、どう動いても受け止めてくれる懐の深さがあったからこちらも安心して臨めました。アクションでも「着流しで動くのは大変だからこうしたらどう?」と、どんどん提案して下さいました。

息が上がるほどキツかった! 渾身の殺陣の裏側

―アクションでいうと、盗賊のようになってしまった人々と戦うシーンが印象的でした。足場も相当悪いなかで、群がってくる人々を斬っていく殺陣は相当大変だったのではないでしょうか。

綾瀬:相当汗をかきましたし、かなり激しいアクションでした。私はカツラがどんどんズレていき、大勢の人に囲まれて引っ張られて着物もはだけすぎて3回くらい着直したり……ボロボロになりました。

『レジェンド&バタフライ』©2023「THE LEGEND & BUTTERFLY」製作委員会

木村:私事になってしまうのですが、子どもの頃ずっと剣道をやっていて。このシーンの稽古で剣道経験者にとっての聖地と言っても過言ではない場所をお借りできたんです。個人的にはそういう場所に入らせていただけるのもそうだし、その場所で作品の構築をさせていただいたのがすごく嬉しかったです。

作品の話に戻ると……このシーンは信長と濃姫にとって、とても重要な場面でした。興味本位で町に出た彼と彼女が、生きることにギリギリで盗賊まがいのことをせねばならなくなった人たちに遭遇してしまう。そして共闘した結果、動物的にお互いを求め合えるようになる――その導火線として必要なシーンでしたが、稽古しているときは疲労がヤバかったです(笑)。よく息が続いたなと思います。

綾瀬:100メートルダッシュを3本連続でやったあとみたいに、フルフルしちゃいました(笑)。

木村:ああいう稽古をすると、「俺なんでタバコ吸ってるんだろう」って思う(笑)。

綾瀬:(笑)。稽古から衣装を着させていただいたのですが、あの一連の動きは本当に激しくて、続けてやったら着物がびりびりに破けてぺろんぺろんな状態になるほどでした(笑)。

綾瀬はるか

撮影前日の会話から脚本にないシーンが生まれた

木村:そのシーンの前に、町に出たふたりが金平糖と置物を盗まれて追いかけますよね。実は当初は金平糖の描写はなかったんです。撮影の前日に美術部と「この人(信長)って金平糖好きだったよね」という話をして翌日現場に行ったら、見事な金平糖屋さんが存在していて、東映京都撮影所の役者さんがそこにいてくださり「お侍さんおひとつどうですか」と振ってくれたことであの場面が生まれました。

―そうだったのですね! 驚きです。

木村:それで金平糖を口に運んだら「こんなの食べたことない」という衝撃的な出合いで、喜んで懐に入れたらスられてしまう。そして犯人を追いかけた結果戦いとなり、その後に脚本では「濃姫のほうから動物的に唇を奪いに来る」といったことが書いてあるのですが、じゃあどうやってその状況に持っていくのかは監督とも色々話しました。ただ、前のシーンで金平糖をゲットしておけば、何か口で言うことなく金平糖を渡すことでコミュニケーションが生まれるし、自然な流れで距離が近づける。そこはすごく上手くいきましたね。

『レジェンド&バタフライ』©2023「THE LEGEND & BUTTERFLY」製作委員会

形式上、今回の尺に収まってはいますが、実際は本編が3時間半くらいになりかねないほどの撮影をしているんです。そのぶん、いまお話ししたように色々なことにトライしました。今回は順撮り(※脚本の順番通りに撮影していくこと。転じて、時系列順に撮影するという意味も)ではなかったからこそ、脚本という設計図を基に「このパーツの作り方で間違っていないよな」と全ての部署が意識したうえで撮影する現場でした。

飛び飛びで撮影していくなかで、自分においては「相手を感じていればおのずと距離感が生まれてくるはず」と考えていました。綾瀬さんが自分を感じてくれて、自分も全身で彼女のことを感じながら演じていました。例えば自分の命を絶とうとする濃姫を信長が止めるシーンでは、彼女の行動を察知してから行動に移すのではなく、彼女の気持ちを全て感じていたから「次の瞬間に自分の命を絶とうとする」ことが筋肉の動きで分かった。撮影のときは、そういう感覚で動いていたなと思います。

綾瀬はるか

取材・文:SYO
撮影:落合由夏

ヘアメイク:中野明海
スタイリスト:山本マナ
衣装:
黒ドレス:¥60,500/エイトン
パールバングル:¥41,800、ゴールドリング:¥31,900/ともにイー・エム(イー・エム アオヤマ)
シルバーイヤーカフ:¥24,200/エテ
シルバーリング:¥12,100/ソワリー
シューズ:スタイリスト私物
問合せ先:イー・エム アオヤマ(03-6712-6797)/エイトン(03-6427-6335)/エテ(0120-10-6616)/ソワリー(06-6377-6711)

『レジェンド&バタフライ』は2023年1月27日(金)より全国公開

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『レジェンド&バタフライ』

政略結婚で結ばれた、格好ばかりの織田信長(木村拓哉)と密かに信長暗殺を目論む濃姫(綾瀬はるか)は、全く気が合わない水と油の関係。ある日、濃姫の祖国で内乱が起こり父・道三が命を落とす。自身の存在意義を失い自害しようとする彼女に、再び生きる意味と場所を与えたのは、他でもない信長だった。そんな信長もまた、大軍に攻められ窮地に立たされた時、濃姫にだけは弱音を吐く。自暴自棄になる彼を濃姫は鼓舞し、二人は桶狭間の激戦を奇跡的に勝ち抜く。これをきっかけに芽生えた絆は更に強くなり、いつしか天下統一が二人の夢となる。しかし、戦さに次ぐ戦さの中で、信長は非情な“魔王”へと変貌してゆく。本当の信長を知る濃姫は、引き止めようと心を砕くが、運命は容赦無く<本能寺>へと向かっていく。
<魔王>と恐れられた信長と、<蝶>のように自由を求めた濃姫。激動の30年を共に駆け抜けた二人が見ていた、“本当の夢”とは──。

監督:大友啓史
脚本:古沢良太
音楽:佐藤直紀

出演:木村拓哉 綾瀬はるか
   宮沢氷魚、市川染五郎、音尾琢真、斎藤 工、北大路欣也、伊藤英明、中谷美紀

制作年: 2022