チャン・イーモウ監督による映画『崖上(がいじょう)のスパイ』が、2023年2月10日(金)より全国公開される。
スタイリッシュで魅惑的な予告編
予告編映像は、暗号のような文字が記された紙で焼き消される謎めいたシーンで幕を開け、豪雪の森林地帯にパラシュートで降下した女が登場。特務警察に寝返った裏切者の諜報員が、ソ連から4人のスパイが満州国ハルビンに潜入したことを密告。彼らは、男女4人のスパイ・チーム。降下、射撃、格闘の訓練を受け、ロシア語にも堪能な精鋭チームが、命を賭けて挑む極秘任務“ウートラ計画”の目的が明かされる。
特務警察の執拗な追跡、次々に放たれる罠。陰謀、仲間の裏切り、暗号による情報伝達、そして、特務警察の中にいる“モグラ”とは誰なのか。氷点下40度の厳寒のもとでロケ撮影を行った雪原シーン、1930年代のハルビン中心部の街並みを精巧に再現させた大スケールのセットで展開される銃撃戦や追跡劇といったスパイ映画には欠かせないエッセンスをふんだんに織り交ぜ、雪の“白”と深い闇の“黒”とのコントラストを強調した鮮烈な映像世界は、スタイリッシュで魅惑的なノワール映画を期待させる予告編になっている。
世界的巨匠初挑戦の本格スパイ・サスペンス
1987年の監督デビュー作『紅いコーリャン』でベルリン国際映画祭金熊賞を受賞し、中国第5世代を牽引する存在として、高度な芸術性と娯楽性に富んだ作品の数々で大ヒット作を世に送り出してきたチャン・イーモウ監督。2008年夏季と2022年冬季の北京オリンピックでは、開会式・閉会式の総監督も務めた。
『崖上のスパイ』は、そんな華やかなフィルモグラフィーを築き上げてきた世界的巨匠が初めて挑戦した本格スパイ・サスペンス。1934年冬の満州国ハルビンを舞台に、ソ連で特殊訓練を受けた男女4人のスパイ・チームが極秘作戦に命懸けで潜入するが、そのミッションは天敵である特務警察に察知されていた。
ヒッチコックの名作を彷彿とさせる列車内の攻防、ハルビン市街地や迷路のような路地での激烈なチェイス、銃撃戦といった息づまる見せ場が満載。スパイの信念と特務警察の威信をかけた騙し合いは、観客をも欺いて翻弄し、予測不能なスリルを楽しめる。
チームを率いる張憲臣(チャン・シエンチェン)を、チャン・イーモウ監督の近作『ワン・セカンド 永遠の24フレーム』主演を務めた中国映画界の実力派チャン・イーが好演。ある秘密を隠し持つミステリアスな周乙(ルビ:ジョウ・イー)を『わたしは潘金蓮じゃない』、TVシリーズ『三国志~司馬懿 軍師連盟~』のユー・ホーフェイが演じる。
スパイとしての過酷な任務中に生き別れた我が子への情愛をにじませる、張憲臣の妻でもある王郁(ワン・ユー)を『ドリアン ドリアン』『桃(タオ)さんのしあわせ』の実力派チン・ハイルー、責任感の強い若手スパイ楚良(チュー・リャン)を熱演するのは『1950鋼の第7中隊』などで知られるチュー・ヤーウェン。
そして近作『ワン・セカンド 永遠の24フレーム』で銀幕デビューしたイーモウガール、リウ・ハオツン。かつてコン・リー、チャン・ツィイー、チョウ・ドンユィを見出したチャン・イーモウ監督に発掘された新星が、可憐で芯の強いチーム最年少の女スパイを体現しているのも注目だ。
中国映画界の実力派と若手ホープのキャストが魅せるスパイの信念と哀愁のドラマは、中国のアカデミー賞である2021年金鶏奨で監督賞、主演男優賞(チャン・イー)、撮影賞を受賞した。
史実とフィクションを融合させたストーリーは、黒沢清監督作『スパイの妻〈劇場版〉』とも時代背景が共通しており、歴史的な視点においても多くの観客の興味をそそるに違いない。
『崖上のスパイ』は2023年2月10日(金)より公開