• BANGER!!! トップ
  • >
  • アニメ
  • >
  • 『THE FIRST SLAM DUNK』 自分の子供でいてもおかしくないくらい年下になった湘北高校の奴らに泣かされた夜。

『THE FIRST SLAM DUNK』 自分の子供でいてもおかしくないくらい年下になった湘北高校の奴らに泣かされた夜。

  • Twitter
  • LINE
  • Facebook
ライター:#デッドプー太郎
『THE FIRST SLAM DUNK』 自分の子供でいてもおかしくないくらい年下になった湘北高校の奴らに泣かされた夜。
『THE FIRST SLAM DUNK』©︎I.T.PLANNING,INC. ©︎2022 SLAM DUNK Film Partners

はじめまして、デッドプー太郎と申します。

会社員をしながら「ネット史上最も意識の低い映画サイト」ビーパワーハードボイルドを運営しています。
また、Monstar Of Fireというバンドで音楽活動をしています。早く音楽業界の偉い人が発掘して欲しいです。この度以前から愛読しておりました「BANGER!!!」さんにて書かせて頂くことになりました。ありがたい限りです。

さて、今回書くのは『THE FIRST SLAM DUNK』です。

『THE FIRST SLAM DUNK』©︎I.T.PLANNING,INC. ©︎2022 SLAM DUNK Film Partners

※以下、物語の内容に触れています。ご注意ください。

スラムダンクが映画化。
俺はというと複雑な気持ちだった。

アニメ放送当時、小学生4年生だった俺はどハマり。単行本は全て買いスーファミのゲームでも遊んでいた。
学校の体育館のバスケットゴールにボールを投げながら「俺も身長は180cmくらいになって熱い高校生活を送るんだろう」と自分の未来に期待していた。

しかし、人生は非情だった。

小学校5年くらいに成長期を迎え身長が伸び始めたが、成長期は奇跡的な速さで終了した。
中学生の時にバスケ部に入ったが身長の低さと致命的なセンスのなさで全く芽が出ず3年間が終了。

そしていよいよ高校になるわけだが・・・・。

その頃には既にスポーツより音楽だったのでバンドを組んだが、1か月で俺以外のメンバーが全員脱退。
新たなメンバーでバンドを組むも俺以外のメンバーは運動系の部活に入っておりバンドは片手間であまりやる気がなかった。

結局、ライブは1度だけ。

一人手持無沙汰だった俺はハードロック/ヘビーメタル雑誌のBurrn!を読み、
放課後は神戸の中古CD屋を巡る日々だった。

ちなみに身長だが、小学校6年頃はクラスで身長順で並ぶと後ろの方だったが、年々抜かされていき、中学3年生の時に学級写真で最前列で並びことになり、高校2年の時についにクラス内の背の順でトップとなってしまった。
今日に至るまで165cmなのだが身長を聞かれる時は170cmとウソをつき、多くの人を困惑させてきた。

熱さとは無縁の灰色の青春。制覇したのは全国ではなく神戸の三宮、元町の中古CD屋だった。
あの時と今どちらが楽しいかと聞かれると圧倒的に今の方がマシ!!と即答できるほど、ぼんやりした高校生活だった。

あっ、申し訳ございません、これスラムダンクの記事でしたね!

というわけでスラムダンクには
「俺は全く楽しい高校生活じゃなかった!!井上(雄彦先生)の野郎、ウソつきやがって!!」
と逆恨みでしかない感情を抱いていた。

そんなスラムダンクが26年ぶりに復活、映画化と言う事で世間も大賑わい
「やっぱ山王戦か」
「いや、当時アニメ化しなかった豊田戦だろ」
「もしかしたら花道のシュート1万本を延々見せられるかもしれない」
と湧き上がる中、当時とはかなり異なるタッチの絵柄、声優一新という事で今度は荒れに荒れた。

そして日本がサッカーでワールドカップ決勝リーグ出場。
映画公開直前にも関わらず誰も話題にしない危険な状態だったが、公開されるや否や絶賛の嵐。

先に観た人達いわく「ずっと泣いてた」「手のひら返しでごめん、ほんと良かった」と言ってたし、グッズに至っては公開初日の早朝の時点でほとんどなくなっていたとの事。

俺も少し遅れてレイトショーで観たのだが想像を超えるおもしろさだった。
内容は大方の予想通り全国一位の強豪校である山王戦だったわけだが、
宮城リョータを主人公にし彼の視点で物語が進むので結末がわかっているにせよ新鮮だった。

現代の技術を総動員したようなアニメーションも感動したが、一番の誤算は自分自身だった。
涙腺が緩んで仕方ない。

今回初めて描かれたリョータの壮絶な生い立ちはもちろん、登場人物それぞれに感情移入してしまう。
ようやく理想のチームメイトに出会えインターハイ出場をつかんだゴリに泣けるし、ベンチで応援する部員達の健気さにも泣ける。

何より小暮君。名言が多く、ここぞという時に見せ場があるので昔から好きなキャラクターだったが、
高校最後のインターハイで後輩にレギュラーを渡して自分はベンチなのに…
「コートの中の連中だけじゃなくてベンチの俺達も戦うぞ!」とベンチを鼓舞する姿に号泣。

まだ若いのに。なんて人間が出来た奴なんだメガネ君。
連載当時、俺より年上だった湘北高校バスケ部は今や自分の子供でいてもおかしくないくらい年下になった。

どいつもこいつも一生懸命でめちゃくちゃ眩しいのだ。

小学生の頃もおもしろかったが、年を重ねた今の方が染みる。
スラムダンクは自分が思ってた以上に遥かにおもしろかった。

「スラムダンクって30年近く前の漫画でしょ?」と敬遠している人がいたら
是非とも映画から観て欲しい。

作品の魅力を凝縮した一本だから原作を知らなくても楽しめるし、
本作は時系列的に物語のクライマックスを映像化しているので原作にも入りやすい。

エアジョーダンを30円で強引に買う花道。
授業中居眠りを邪魔されて先生をボコりかける流川。
フンフンディフェンス、脳天ダンクシュート。
インターハイ前にゴリ以外が赤点なので赤木家で泊まり込みで勉強会、
と映画ではなかったギャグパートのキレ味に衝撃を受けるだろうし
不良時代のミッチーや、インターハイ出場をかけた陵南高校選は涙なしには読めないだろう。

映画がめちゃくちゃヒットしているみたいなので、是非とも今回の手法で各メンバーの視点での試合を作って欲しい。ゴリの視点で描く陵南戦なんて想像しただけで泣ける。
もしくは本作の追加シーンを加えたバージョンを出してくれないだろうか。

ゴリのピンチに駆けつける板前姿の魚住が出なかったのは残念だったし、やっぱりアニメの主題歌が名曲ばかりなので・・・
「君が好きだと叫びたい」は一瞬でもいいから流して欲しかった。

映画見た後「やっぱ高校の時に何かスポーツに打ち込んでおくべきだった。青春の熱い思い出がない」
としょんぼりしていたら、ちょうど高校時代の友達から
「最近サッカー部の集まりが悪いから今度バーベキューする時におまえも参加する?おまえならみんな知ってるし」と連絡があった。

20年遅れて俺の熱い高校生活が始まるかもしれない。
「一緒に頑張った思い出」が文化祭で焼きそば作ったことくらいしかないけど。

文:デッドプー太郎

『THE FIRST SLAM DUNK』は大ヒット公開中

 

Share On
  • Twitter
  • LINE
  • Facebook

『THE FIRST SLAM DUNK』

原作/脚本/監督:井上雄彦
美術監督:小倉一男
声:仲村宗悟、笠間淳、神尾晋一郎、木村昴、三宅健太
オープニング主題歌:The Birthday(UNIVERSAL SIGMA)
エンディング主題歌:10-FEET(EMI Records)
音楽:武部聡志、TAKUMA(10-FEET)

制作年: 2022