ウルトラマン像に新たな解釈を加える「俺ウルトラマン」全開
日本人ならば誰もが知っている特撮作品の金字塔「ウルトラマン」。それはイコール、それぞれにとってのウルトラマン像があるということだ。
初代ウルトラマンが絶対! という「原理主義」的な層もいれば、近年の新しいウルトラマン=ニュージェネレーションシリーズのイケボなウルトラマンが素敵! という人もいるし、80~90年代のスーパーデフォルメされたかわいいウルトラマンに馴染みがあるって人もいるだろうし、なんなら「ウルトラマンであれば基本的に何でも好きですよ、えぇ!」という僕のような人間もいる。
50年を超える歴史の中で、それだけの懐の広さを獲得してきたことが「ウルトラマン」というコンテンツの持つ凄さなのだが、Netflixオリジナルアニメシリーズ『ULTRAMAN』は、そうしたウルトラマン像にさらに新たな解釈を加える、まさに「俺ウルトラマン」を全開でいく作品だ。
2011年に<月刊ヒーローズ>の看板作品として連載開始した原作マンガを、『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』シリーズ(2002年~)の神山健治監督、『APPLESEED アップルシード』シリーズ(2004年~)の荒牧伸志監督のダブル体制で、Netflix向けに完全3DCGアニメ化! という、トピック盛りすぎで皿からこぼれそうな今作は、“初代”ウルトラマンが最後の敵ゼットンと戦い地球を去った直接の後日譚となっている。
オリジン直結の設定やアクロバティックな展開の中でヒーローの本質を問う
昨今のリブート映画などでお馴染みのオリジンから直接つながるパラレルワールドという設定なのだが、その間のウルトラシリーズのキャラクターや設定も細かくアレンジされて登場するのがファン心をくすぐる。ここだけ聞くと至極正統派な続編のようだが、これが「こんなのあり!?」的なアクロバティックな展開を見せる。
主人公は、ウルトラマンに変身していた男、早田進の息子・早田進次郎。しかし彼はウルトラマンには変身せず、なんと科学特捜隊が開発したメカニカルなスーツを身にまとい等身大のまま戦うのだ。言うなれば、日本の特撮作品とマーベルの『アイアンマン』(2008年~)を合体させたような、独自の世界がそこに描かれている。
「こんなのウルトラマンじゃない!」という声もあると思うが、この『ULTRAMAN』を見ていくと、「こんなのウルトラマンじゃない!」主人公が、「いかにウルトラマンになっていくか」=「いかにヒーローとしての本質を手にしていくか」が物語のテーマなのだと気づかされる。このアニメ版では、さらにそのポイントが強調されていることも特筆したい。
また、全編3DCGで描かれたスーツや異星人は現実感を持ちながらもヒロイックで、アニメでも特撮でも実写でもない、しかし、その全てを繋ぐ新たな表現の「ウルトラマン」の可能性を感じさせる。特撮作品としてのウルトラマンに馴染みがない方にも、その広大な世界への新たな入り口としても触れてみてほしい作品だ。
文:タカハシヒョウリ
Netflixオリジナルアニメシリーズ『ULTRAMAN』独占配信中