「ブロックバスター・ビデオ」知ってる?
80年代中頃から90年代末までは、旧作映画・ドラマはレンタルビデオで楽しむのが普通だった(セルビデオは1万円以上した)。いまやVHSは骨董品扱いで、動画サブスク全盛となった現在、“レンタルビデオ(DVD)店”は世界的に風前の灯である。
<ブロックバスター・ビデオ>は、かつてアメリカだけでなく世界中に1万店舗近く展開していた巨大レンタルチェーン(日本にも90年代に進出したがすぐに撤退)。しかし急速なサブスク化の波には抗えず次々と閉店し、2022年現在は米オレゴン州に最後の1店舗を残すのみとなってしまった。
そんな“最後のブロックバスター・ビデオ”を舞台にしたNetflixのドラマシリーズが、『アントマン&ワスプ』(2018年)や『ワンダヴィジョン』(2020年)のFBI捜査官ジミー・ウー役でお馴染み、ランドール・パークが主演する『わが愛しのブロックバスター』だ。
『ブルックリン99』製作陣による“超”ライトな疑似家族ドラマ
このドラマ、まるでNetflixがレンタル業界の魂を成仏させたいかのような設定だが、“いつ潰れてもおかしくない店”を舞台にした、いわゆるシチュエーション・コメディ(シットコム)である。従業員の給与や家賃に苦心する店長ティミーの姿に身につまされつつ、その底抜けの明るさには(少しだけ)元気づけられる(かもしれない)。
登場人物は、地球最後のブロックバスター店長ティミーを筆頭に、ティミーから好意を寄せられているベテラン店員イライザ、数字に強く病的にマメな映画オタクの青年カルロス、キュートだが貧乏くさいトラッシー女子ハンナ、メンタルヘルス維持のためにバイトしている有閑おばさんコニー、近所のマーケットの店主で地主でもあるパーシー、その娘で何かと斜に構え気味なカイラとキャラ立ちはバッチリで、誰が誰だかわからなくなる、みたいなことはない。
ティミーは深刻な経営難に陥りながらも「誰のクビも切れない!」と頭を抱えるが、もはや店員たちとは疑似家族のような関係になっていて、毎日何かしら(しょうもないことで)ぶつかり合ってもいる。つまり機能不全気味なファミリードラマであり、世代間ギャップや些細なディスコミュニケーションを抱えながらも経営(生活)難を乗り越えようとする物語なのだ。
そのため、数字的な部分で根本的な経営改善策を模索するのではなく、短絡的なアイデアからイベントを企画して転機を図り、降って湧いたラッキーに全力で飛びついたりする軽薄さがメイン機動力。警察署コメディ『ブルックリン・ナイン-ナイン』(2013年~2020年)の製作陣が手がけているだけあって、ビタイチ内容を引きずらない“超”が付くほどのライトさも大きな魅力だ。
ホンモノの最後のブロックバスター・ビデオを追った『The Last Blockbuster(原題)』(2020年)というドキュメンタリーもあったが、本作のアイデアソースになっている部分は大きいだろう。
地味に異常なシチュエーションが“当たり前”になるまでに少し時間を要するかもしれないが、3話目くらいからは登場人物たちのシュールなやり取りを真剣に見つめていた……みたいな不思議な癒やし効果すら感じられる本作。もちろん、映画ネタにしても音楽ネタにしてもアラサー~アラフォー世代がビミョ~な懐かしさと気恥ずかしさに失笑してしまう、そんなネタの数々がクセになるはずだ。
ちなみにオレゴン州ベンドに現存する“ラスト・ブロックバスター”は観光名所のようになっているらしく、SNSアカウントも活発に運用しているようだ。地球上で最後の1店とあって、もはや会員カードすら立派なお土産である。
Check it out!! To add to the shirts, we now have hats, stickers, and magnets!! Come down and support, we are here Sun-Thurs 10:30am-9:00pm and Fri/Sat 10:30am-10:00pm!! #LastBlockbuster pic.twitter.com/vfb5KQDjnP
— Blockbuster Bend (@BlockbusterBend) September 2, 2018
Netflixシリーズ『わが愛しのブロックバスター』独占配信中
『わが愛しのブロックバスター』
かのブロックバスター・ビデオもついに1店舗を残してすべて閉店。最後の1店を切り盛りする店主は、複雑な心境と過酷な競争のなか、愛する店の存続とスタッフの暮らしを守るべく奮闘を続ける。
出演:ランドール・パーク
メリッサ・フメーロ オルガ・メレディス
タイラー・アルバレス マデリン・アーサー
制作年: | 2022 |
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