法で裁けぬクズどもを皆殺し! 天に代わってN・ケイジが正義を執行
『ヴェンジェンス』(2017年)
またニコケイのB級アクション映画? なんて敬遠するなかれ、本作はノーベル文学賞候補として知られるアメリカの作家ジョイス・キャロル・オーツの小説「Rape: A Love Story」が原作ということで、物語の強度は他のドンパチ作品と一線を画している。
冒頭、クズいチンピラ集団から性的暴行を受けるシングルマザーとその娘。母娘は周囲からクソみたいな誹謗中傷を浴びせられたり、裁判のせいで住所が加害者側にバレたりと、被害者にもかかわらず不条理な扱いを受けて心身共にボロボロになってしまう。そう、日本でも近年やっと報じられるようになった性的暴行事件の被害者を待ち受ける“セカンドレイプ”の問題に踏み込んでいるのだ。
性的暴行を受けた母親はもちろん、その様子を目の当たりにした娘のトラウマたるや、いかばかりか……。思わず「てめえらの血は何色だーーっ!」と義憤に駆られるところだが、ここでクズどもに正義の鉄槌を振り下ろす刑事こそ、我らがニコケイというわけである。ちなみに加害者側のムカつく弁護士をドン・ジョンソンが演じており、ドラマ『刑事ナッシュ・ブリッジス』(1996年~)のファンには嬉しいところ。
日本でも被害者を叩く匿名のヤカラがSNSなどに湧いているが、ぜひ本作を観て心を入れ替えてほしい。もっとも、そういう連中はニコケイにぶっ殺されてしまうのであしからず。
この恨み晴らさでおくべきか! ニコケイ、天から来りて悪を討つ
『ドライブ・アングリー』(2010年)
同じくニコケイ主演だが、こちらは冒頭から景気の良いチェイス&銃撃が繰り広げられる(というかニコケイが一方的にチンピラを追っかけてショットガンをぶっ放す)カー・アクション。ここでのニコケイは、愛する家族を奪ったカルト教団に復讐を誓う!
……と聞くとフツーの復讐モノのようだが、実は予想外の方向にブッ飛んだ壮大なお話。どう見てもカタギじゃないミルトン(ニコケイ)はウェイトレスのパイパー(アンバー・ハード)をDV彼氏から救うと、カルト教団にさらわれたという幼い孫を救うべく車を走らせる。
しかし、アンバーが数年後にジョニデと交際し実際にDVがらみの泥沼離婚劇を繰り広げるなんて、このとき誰が想像できただろうか……。
さておき、そんなミルトンを、FBIを名乗る謎の男が追跡していた。紳士的だが冷静で非情な追跡者を演じるのは、常に醒めた表情がクールなウィリアム・フィクトナー。まるで死神のようにどこからともなく現れるこの“監査役”は、淡々と冷静にミルトンを追い詰めていく。なんとも超然とした2人のやり取りは超カッコいいので、やがて明らかになる彼らの関係性を楽しみにしておいてほしい。
ニコケイ主演『ゴーストライダー』シリーズもびっくりのラストシーンは、汗臭いBGM(ミートローフの「Alive」)と相まって猛烈に暑苦しいのだが、ハードボイルドなアクション映画が好きなら拳を突き上げたくなること間違いなし!
いつものステイサムとは一味違う! 哀しき男女の復讐物語
『ハミングバード』(2012年)
強くて怖い“復讐俳優”といえば、皆さんご存知ジェイソン・ステイサム。中でもこの『ハミングバード』は、他のステイサム作品とは登場時のインパクトがケタ違いに非・ステイサム!
のっぴきならない事情から路上生活者に身をやつしていたホームレステイサムは、毛根壊滅状態のざんばら頭&ヨタヨタ歩きの情けなさ。チンピラにカツアゲされそうになるやヒーコラ逃げ出し、高級マンションに忍び込んで難を逃れる。
しかし、そこで久しぶりにシャワーを浴びてお馴染みの坊主頭にクリーンナップすると、ついでに上等な洋服やクルマもゲット。ところが今回のステイサムは過去のトラウマに捕われているのか、酒に溺れてばかりでなかなかマトモな生活に戻れない。
そんなステイサムの数少ない理解者は、路上仲間の少女イザベルとシスターのクリスティナ(アガタ・ブゼク:ポーランドの幸薄顔美女!)。心に傷を抱えた者同士ギリギリの距離感で慰め合い……って、これ本当にステイサム映画なの!? と言いたくなるほど暗く繊細で、クズどもを拳で黙らせるいつものステイサムとはなんだか調子が違う(あ、拳で黙らせたりはしてます)。
それもそのはず、本作の監督は『イースタン・プロミス』(2007年)の脚本を手がけたスティーヴン・ナイト。英国アンダーグラウンドを舞台に繰り広げられる非道な犯罪、光を見出せない暴力の連鎖、つらい過去を抱えた男と女の儚い交流……。どう展開してもハッピーエンドはあり得ないであろうシビアな物語だが、ステイサム史上もっとも痛そうな“げんこつ映画”でもあるので、みなさんの荒ぶる魂を鎮めることはできるはず。
『ハミングバード』
DVD&Blu-ray好評発売中
価格 1,200円 (税抜)
発売・販売元:ハピネット
© 2012 Hummingbird Film Investments LLC
自宅を爆破されてキレたキアヌ、巨大犯罪組織を殲滅!
『ジョン・ウィック:チャプター2』(2017年)
2019年10月に待望の3作目が公開される『ジョン・ウィック』シリーズの2作目。引退した伝説の殺し屋が悪人たちにちょっかいを出されたおかげで復讐せざるを得なくなる不可抗力物語であり、キアヌ・リーヴスが新たなハマり役をゲットした記念すべきシリーズでもある。予想外の反響を受けて続編の製作が即決された完全続きモノではあるが、1作目を観ていなくても楽しめるのでご心配なく。
1作目で愛車を盗まれ&愛犬を殺されてブチ切れたジョン・ウィック(キアヌ)を今回怒らせるのは、イタリアの巨大犯罪組織カモッラの幹部。殺しの依頼を断ったことで、亡き妻との思い出が詰まった自宅を爆破されるキアヌは前作以上に不憫で……。ともあれ、本作はキアヌの“ガンフー(銃撃×カンフー)”だけでなく、命を狙ってくる個性豊かな殺し屋たちも大きな見所。入れ墨クールビューティーことルビー・ローズ演じるアレスや、知性派ラッパーから俳優へ転身したコモン演じるカシアンなど、カッコよすぎる商売敵との死闘は手に汗握る緊迫感だ。
そのへんにあるものを使って追っ手をバタバタ殺害していくキアヌや、表向きは高級ホテルだが実は武器のソムリエや特殊スーツの仕立て屋がいる殺し屋組織という中二設定など、復讐というきっかけを忘れてしまうほどケレン味に満ちたバイオレンスアクションの傑作。
世界最強の親父! ……の若かりし頃を描く復讐ドラマ
『96時間 ザ・シリーズ』シーズン1(全10話)
最強の親父が家族を守るべく一人で大暴れする映画『96時間』シリーズでリーアム・ニーソンが演じたCIA上がりの強すぎる父親……の、若かりし頃を描くドラマ『96時間 ザ・シリーズ』。まさか数十年後に娘が誘拐されたり元妻が殺されたりするなんて想像もしていないだろう元グリーンベレーの主人公ミルズが、自身の正義感から妹を殺されてしまうところから物語が始まる。
自責の念に駆られるミルズは、その特殊スキルと復讐心を買われてODNI(国家情報長官室)からスカウトされる。任務のためならムチャな自作自演も辞さない組織にはドン引き必至だが、ここで心身ともに鍛えられたからこそ映画『96時間』につながったんだなァ……と妄想すると感慨深い。時代設定どうなってんだよ!? なんてツッコミは野暮というものだ。
幼い頃に父親から授かったサバイバルスキルと、過酷な任務をこなす上で培った特殊スキルの数々。映画シリーズでミルズに惚れ込んだ人は必修科目ということで、この機会にチェックしよう。
CS映画専門チャンネル ムービープラス<特集:24時間 復讐>は2019年5月5日(日・祝)17:00から8作品連続放送
https://www.youtube.com/watch?v=NEAeOm3Jrts