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岡田准一&坂口健太郎インタビュー!『ヘルドッグス』濃厚撮影エピソード「アクションと芝居は時としてベクトルが別」

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ライター:#SYO
岡田准一&坂口健太郎インタビュー!『ヘルドッグス』濃厚撮影エピソード「アクションと芝居は時としてベクトルが別」
『ヘルドッグス』©2022 「ヘルドッグス」製作委員会

岡田准一が潜入捜査官、坂口健太郎がサイコパスなヤクザの構成員を演じ、バディを組む――。『ヘルドッグス』が、2022年9月16日に劇場公開を迎える。

『渇き。』(2014年)の原作でも知られる深町秋生の小説を原田眞人監督が実写映画化した本作。闇堕ちした元警官・出月(岡田准一)は、兼高という名を与えられて関東最大の広域暴力団・東鞘会に潜入させられる。会長・十朱(MIYAVI)率いる最強部隊<ヘル・ドッグス>の一員になり、メンバー一危険とウワサされる“サイコボーイ”の室岡(坂口健太郎)を相棒に任務をこなしていく兼高だったが、最大の危機が訪れる……。

本作で「相性98%」のバディを演じた岡田准一と坂口健太郎にインタビュー。初共演ながらがっぷり四つに組み合ったふたりが、原田組に充満する熱気やアクションシーンの舞台裏を語り合う。

『ヘルドッグス』©2022 「ヘルドッグス」製作委員会

熱気が充満した特殊な現場だった

―非常に濃厚な作品でしたが、現場の雰囲気はいかがでしたか?

岡田:撮りながら「どういう映画になるんだろう」と思うような、いい意味でぶっ飛んだ現場でした。まずもってキャストがとにかく濃いですよね。僕、北村一輝さん、大竹しのぶさん、MIYAVIさん、松岡茉優さん……坂口くんくらいですよ、救いなのは(笑)。

現場に行ったら、北村さんが全身タトゥーに上半身裸でトレーニングマシンを漕いでいたり、リーゼントでサングラスをかけた女性がいたり……とんでもないことが日々起こっていました。僕の役もまとも風に書かれていますが常軌を逸していますし、全員キャラクターが立っている。フィルムノワールでありつつ、海外の方が思うアジアのエキゾチックを意識した映画になっていると思います。

坂口:原田監督ご自身が、面白いものにすごく敏感な方でしたね。その瞬間の好奇心や興味で新しいものをどんどん足していくので、台本に書いていないことが具現化されていく現場でした。言葉で形容するのが難しいのですが、現場に入ってお芝居をしているとアドレナリンというか……空間に変な煙が充満しているような感覚になるんです。撮影がとにかく怒涛のように進んでいきましたし、僕も岡田さんと同じように「すごく濃い撮影だった」と感じています。

『ヘルドッグス』©2022 「ヘルドッグス」製作委員会

―いまお話を伺って、相当熱量の高い現場だったのだと感じました。

岡田:特殊な空気感はありましたね。緊張感とはまたちょっと違う、熱気といいますか。

坂口:僕は原田監督とも岡田さんともご一緒するのは初めてですが、怒涛の撮影の中でも意外とリラックスしていました。アクションシーンだけじゃなく、現場でちょっと動くところも岡田さんに色々お聞きできましたし、映画の前半で兼高と室岡がトレーニングしているシーンに近いような感覚でカメラが回っていないときも過ごせました。

岡田さんはアクションの振り付けをしてくださるので現場にずっといらっしゃるのですが、アクションシーンでカットがかかると「どうでした?」という感じで、まず岡田さんを見ました。ここまでのアクションは初めてでキツかったですが、岡田さんが見ていてくれるのは心強かったし、そういうやり取りも含めて楽しかったです。

岡田:坂口くんは基本的な動きができるうえで「アクションをもっと練習したい」と言ってきて、その姿勢が素晴らしいと思いました。さらに良くなるためにどうするかを考えて、取り組まれる。アクションと芝居って、時としてベクトルが逆なんですよ。お芝居は周りのことを考えないでワガママにできたりそれを求められることもあるけど、アクションでそれをやるとケガをしたり画にならなかったりする。

坂口:確かに、想いが先行しすぎるとまずいなと思っていました。一番はアクションをカッコよく見せたいというのがあって、その部分は岡田さんが逐一教えてくれたので単純明快でした。僕はアクションができないから、できる人に聞いて、それで作品が1ミリでもよくなればいいと思っていました。

『ヘルドッグス』©2022 「ヘルドッグス」製作委員会

―技闘デザイン(アクション振り付け)とご自身の演技の両立は、大変だったでしょうね……。

岡田:やっぱり忙しかったですね。周りの方の安全を考えたりスタッフの方と打ち合わせもし、アクションに応じて美術部に発注もしないといけない。監督がスタッフさんと話している間に役者の方にアクションの振り付けを伝えたりと、とにかく動き回っていました。

先ほど坂口くんが話してくれた通り、原田監督はその場での直感を大事にされているので、芝居を途中で切るようなアクションのための準備は好まれません。かつ、シーンの頭から終わりまで、何回も撮られるんです。そういった意味では、『ザ・ファブル』(2019年/2021年)的な(美術も含めて準備したうえで作り上げる)アクションができない瞬間も多い。役者さんにとにかく頑張ってもらわないといけない、対応力を求められる現場でしたね。

『ヘルドッグス』©2022 「ヘルドッグス」製作委員会

サイコだけど純真、狂犬だけど寡黙

―兼高と室岡の相性は98%ですが、ふたりが出会ってから親密になるまでの過程は直接的には描かれません。岡田さんと坂口さんがどのように関係を構築していったのか気になったのですが、岡田さんが現場にずっといてくれるのも大きかったのでしょうか。

坂口:そうですね。前半のトレーニングのシーンを撮影スケジュールの序盤で撮ることができて、そこで僕は室岡と兼高のつながりが構築できたな、という感覚を得られました。あのシーンは僕自身も楽しんでやりたいと思っていて、バディとして動くけど室岡と兼高がふたりだけで楽しんでいるのを見せたかったから、最初の方にできてよかったです。全体的に見ても、大事な時間でした。

室岡は「サイコボーイ」と言われていますが、僕自身はすごく純粋さを感じていました。確かにやっていることは暴力的ですしぶっ飛んでいますが、ヤクザ組織に身を置きながら根本に純真さがある。兼高とのバディ感がかわいらしく見える瞬間もあると思っていました。同時に台本を最後まで読んだ僕としては、お芝居をしながらもどこかに切なさを感じていました。特に、自分が本当に信じて愛していた兼高が裏切り者というか、別人じゃないか? と感じてしまう流れは「切ない……」と思いながら演じていました。

だから、「サイコパス役だから無茶苦茶ぶっ飛ばしてやろう」とは思っていなくて。あくまで兼高とふたりでひとつのような感覚を持っていて、浮いてしまうのか浮かないのかギリギリのところでいようと思っていたし、だからこそ兼高との距離が離れていくのが切なかったです。

岡田:僕は「感情を抑える」のが難しかったですね。潜入捜査官だとバレてはいけないから、ボロが出ないようにどんどん寡黙になるし表情も変化がなくなる。暴れ出したら手が付けられないキャラクターだけど、それを抑えないといけない。だから演じる側としては我慢しないといけない瞬間がたくさんあって、大変でした(笑)。

『ヘルドッグス』©2022 「ヘルドッグス」製作委員会

セリフはメロディ! 原田監督流・演出術

―肉体的な過酷さはもちろんですが、本作はセリフ量もなかなかに多く、しかもハイスピードです。間(ま)を詰めていくスピーディなセリフ回しについては、いかがでしたか?

岡田:原田監督は本読み(撮影前、キャストが一堂に会して行う台本の読み合わせ)でちょっとでも間ができると「間はいらない」とおっしゃるんです。セリフを一言一句聞かせるというよりは、メロディのように聴かせたいんです。

雨降らしのシーンは、普通の現場だったら後からアフレコでセリフを入れますが、今回はしませんでした(笑)。案の定なにを言ってるかわからないんですが、監督としてはそれで良いんです。ご覧になる方も、メロディだと思って楽しんでいただければと思います。

『ヘルドッグス』©2022 「ヘルドッグス」製作委員会

坂口:本読みは衝撃的でしたね。もう途中からセリフがセリフじゃなくなってきたというか、そのとき感じたものでしゃべっていて。もちろん軸としては台本があるんですが、その先に行く感覚でした。

撮影でも、室岡が兼高と事務所に帰ってきたら鍵が開かなくて、お歯黒(吉田壮辰)を蹴り飛ばしながらわめくシーンがあるんですが、僕自身、後から観ても意味の分からないことを言っているんです。

室岡は死刑囚の息子で、組織の中でも阻害されているキャラクターだから、何か言われたときにセリフとは全然関係ないけれど「なんだこの野郎!」みたいにバッと言ってしまって。それを原田監督が面白がって使ってくれました。何かやってみたら監督が楽しくキャッチしてくれる現場ではありました。

『ヘルドッグス』©2022 「ヘルドッグス」製作委員会

岡田:アクションもそうですが、原田監督は芝居で演出とドキュメンタリー性の両方を撮りたいと願っている監督なんですよね。だからアクションシーンでも、決めきるところと決めさせてくれないところを作る。振り付けをする方としては大変なんですが、その空白の部分を現場でセッションしていくことが役づくりにもつながっていく。あえてそういったやり方をして、コミュニケーションの場を作っているように思います。

取材・文:SYO

『ヘルドッグス』は2022年9月16日(金)より全国公開

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『ヘルドッグス』

復讐のみに生きてきた兼高は、その獰猛さゆえに警察に目をつけられ、関東最大のヤクザ組織へ潜入させられるハメに。任務は、組織の若きトップ・十朱が持つ“秘密ファイル”の奪取。警察の調査で相性が最も高い室岡との接触を手始めに、着実に、かつ猛スピードで組織を上り詰めるが、その先には誰も予想できない結末が待っていた。

監督・脚本:原田眞人
原作:深町秋生「ヘルドッグス 地獄の犬たち」(角川文庫/KADOKAWA刊)

出演:岡田准一 坂口健太郎
   松岡茉優 MIYAVI 北村一輝
   大竹しのぶ

制作年: 2022