『メタモルフォーゼの縁側』から飛び出したBL漫画
“あの”咲良くんと佑真くんにまた出逢えるなんて……! 映画『メタモルフォーゼの縁側』(2022年)を鑑賞した人は、「君のことだけ見ていたい」が実写化されると知り、胸が高鳴ったのではないだろうか。もちろん、筆者もそのひとりである。
ちなみに「君のことだけ見ていたい」とは、『メタモルフォーゼの縁側』の劇中に登場するBL漫画。佑真と咲良の淡い恋模様を描いた同作が、17歳の女子高生・うらら(芦田愛菜)と、75歳の老婦人・雪(宮本信子)を結ぶきっかけになった。作画を担当したのは、「黄昏アウトフォーカス」や「残像スローモーション」、「宵宵モノローグ」など数々のBL作品を手がける漫画家、じゃのめ。映画を通して初めてBL作品に触れる人を考慮してか、王道ど真ん中の仕上がりになっている。
「佑真くん、かっこいいですね!」「綺麗ねぇ、咲良くん」と目を輝かせていた、うららと雪。「君のことだけ見ていたい」の魅力を語り合う2人の姿を通して、好きなものを共有する相手がいることの尊さを知ることができた。一歩踏み出してみれば、驚くほどに世界が変わって見えるかもしれない、ということも。
倉悠貴と水沢林太郎の瑞々しいハイスクール・ラブ
17歳の女子高生から、75歳の老婦人までを夢中にさせた、このBL漫画。Huluオリジナルドラマ版『君のことだけ見ていたい』は、原作の温かな世界観を守りつつ、また新たな佑真と咲良の魅力が発見できるものになっている。
脚本を担当したのは「キングオブコント2021」王者、空気階段の水川かたまり。清涼感とノスタルジックな空気が入り混じる夏に、佑真と咲良の甘酸っぱい恋がピタッとハマっている。水川が脚本を担当しているからこその、クスッと笑えるシーンもあり、映画を観ていない人にも楽しめる作品になっていた。
劇中で、うららの“推しキャラ”だった咲良を演じるのは、倉悠貴。アンニュイな瞳が魅力な倉は、どこかミステリアスな雰囲気を纏っている。しかし、ドラマ内では必殺技の上目遣いを見せる場面も。小学校から高校までずっと一緒に過ごしてきた佑真に、友情以上の気持ちが芽生えてしまったことへの葛藤。そして、突然キスをしたりする咲良の小悪魔さを、忠実に表現している。
一方、雪の推しキャラである佑真は、クールに見えるがおちゃらけたりもする一般的な男子高校生。演じる水沢林太郎は“巻き込まれ型”がハマり役のようだ。直近の役柄だと、『もしも、イケメンだけの高校があったら』(テレビ朝日系)の神宮源二郎。剣道一筋で、どこか冷めているように見える神宮だが、いつの間にか<全国選抜高等学校イケメン大会>の候補者になってしまう。第4話では、韓国からやって来た転校生に影響を受けて、明るさを取り戻していく姿が描かれた。『君のことだけ見ていたい』の佑真も、どちらかと言えば、咲良のペースに巻き込まれていく役柄だ。まさに、水沢の魅力を最大限に生かしているキャラクターと言えるだろう。
淡く儚い男子高校生たちの恋と青春を描いた『君のことだけ見ていたい』。うららと雪のように、このドラマが人生を変えるきっかけになる人もいるかもしれない。
文:菜本かな
Huluオリジナル『君のことだけ見ていたい』Huluで独占配信中
Huluオリジナル『君のことだけ見ていたい』
映画『メタモルフォーゼの縁側』で主人公の女子高生佐山うららと老婦人の市野井雪をつないだ一冊のBL漫画『君のことだけ見ていたい』をオリジナルドラマとして実写化! 空気階段の水川かたまりが初のBLドラマ脚本を執筆! 出演者には若手注目株の倉悠貴と水沢林太郎が淡く儚い男子高生2人の恋と青春をみずみずしく演じ、映画『茜色に焼かれる』で2021年報知映画賞新人賞、ヨコハマ映画祭助演女優賞、など躍進を続ける片山友希やシソンヌのじろうが脇を固める
プロデューサー:河野英裕 大倉寛子
監督・演出:狩山俊輔
原作・脚本:(原案)鶴谷香央理 (脚本)水川かたまり
出演:倉悠貴 水沢林太郎
石川瑠華 櫻井健人 内山晴斗
寺嶋慎太朗 田中レイ 宇都宮太良
片山友希 じろう(シソンヌ)
制作年: | 2022 |
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