SFホラーの世界を変えた、映画史に残る金字塔
『2001年 宇宙の旅』がSF映画の概念を変え、『スター・ウォーズ』がSFファンタジー映画に新たな地平を拓いたように、それ以後のSFホラー映画の世界をまったく変えてしまったエポックメイキングな傑作がリドリー・スコット監督の『エイリアン』だ。
宇宙貨物船ノストロモ号が救難信号を受けて未知の惑星に降り立つと、そこには異星人(エイリアン)の宇宙船の残骸が横たわり、底に卵のような生命体が並んでいた…。
監督・脚本・俳優の変更 すべての偶然が必然となり、伝説的な作品に仕上がった
ダン・オバノンの原案・脚本が、ウォルター・ヒルのプロダクションに持ち込まれ、自分が監督する予定だったヒルがリドリー・スコットにメガホンを渡し、脚本では男性だったリプリーが女性になり、ヴェロニカ・カートライトが演じる予定だったリプリー役が、映画デビューしたばかりの新人女優シガニー・ウィーヴァーに代わる。すべては偶然だったことが今になってみると必然に思えるほど伝説となった作品で、何度観ても面白い。
J・キャメロン、D・フィンチャー…シリーズを進化させる名監督たち
『エイリアン2』では前作のラストで宇宙に脱出したリプリーが57年後に救助される。彼女が漂流していた間に、未知の惑星LV426にアチェロンという名が付けられ、数十組の家族が移住していた。ところがアチェロンからの連絡が途絶えた。何が起こったのか。リプリーは、救援に向かう宇宙海兵隊と共に、再びエイリアンのいる惑星へ向かうが…。
『エイリアン2』のメガホンは、『ターミネーター』を大ヒットさせたばかりの新鋭ジェームズ・キャメロンの手に。一種の密室ホラーだった前作のテイストを尊重しながら、戦争アクションとして大胆に改編した見事な手腕で、キャメロンの第一級のアクション監督としての名声を確立した。
『エイリアン2』のラストで、アチェロンから脱出した救命艇が監獄星に不時着。救命艇に潜んでいたエイリアンは、囚人の飼い犬に寄生し、新たな姿へ進化する。リプリーは武器のない状況でエイリアンと再び対決する。
1、2作のヒットで3度目のお色直しとなった企画は、しかし二転三転する。『ダイ・ハード2』の撮影で降板したレニー・ハーリンに代わって監督に抜擢されたのはMTVやCMを手がける映像作家デヴィッド・フィンチャーだった。しかし、撮影前から続く混乱は収まらず、度重なる中断を経て、フィンチャーは映像を撮り終わった時点で降板、編集には立ち会わなかった。それでも、緻密でダークな映像にフィンチャーらしさが垣間見える監督デビュー作だ。
『エイリアン3』で誰もが終わったと思ったシリーズだが、意外に早く再登場する。それが『アメリ』のジャン=ピエール・ジュネが監督した『エイリアン4』で、前作の設定から200年後にリプリーはクローンとして復活する。さすがに、これ以上続編を作るのは無理だろう(まだ『エイリアン5』は作られていない)が、プレデターやアバターと戦うスピンオフ版や前日譚は続々と作られており、ハリウッドの商魂たくましさはエイリアンの生命力以上だなと、ほとほと感服してしまう。
文:齋藤敦子
『エイリアン』
地球への帰路を急ぐ宇宙船ノストロモ号に、謎の異星人(エイリアン)が侵入。一人、また一人と乗組員の命を奪っていく。閉鎖された宇宙船内で、だた一人生き残ったリプリーとエイリアンの絶望的な闘いが始まろうとしていた。
制作年: | 1979 |
---|---|
監督: | |
出演: |