パトリック・ヒューズ監督インタビュー
『ヒットマンズ・ワイフズ・ボディガード』はライアン・レイノルズ、サミュエル・L・ジャクソン、サルマ・ハエック(ここまでが本作の主役3人組)、フランク・グリロ、アントニオ・バンデラス(彼が本作のメイン・ヴィラン)、そしてモーガン・フリーマンら豪華スターが共演する過激なアクション・コメディです。
実は、この作品は2017年に公開され大ヒットした『ヒットマンズ・ボディガード』の続編。日本ではNetflixで配信されましたが、その面白さによってファンが急増し、この続編は日本でも劇場公開されることになりました。ただし本作は、前作を観ていなくても十分に楽しめる痛快作に仕上がっています。
今回、このシリーズの生みの親であるパトリック・ヒューズ監督にオンライン・インタビューを行いました。なおヒューズ監督は、シルヴェスター・スタローンらが共演した『エクスペンダブルズ3 ワールドミッション』(2014年)も手掛けています。
「ライアン・レイノルズをもっとひどい目にあわせてやろう、と(笑)」
―お話をうかがう前に、言わせてください。僕は前作『ヒットマンズ・ボディガード』が大好きで、今回の『ヒットマンズ・ワイフズ・ボディガード』も大笑いしました。このシリーズが大好きです。
ありがとう、気に入ってくれて嬉しいです。実はすでに3作目の脚本も描き上げました。
―わ、それは嬉しい。元々この作品はシリーズ化するつもりだったんですか?
1作目の編集作業している時に、続編のアイデアが思い浮かびました。その編集作業を通じて再びキャラクターたちと向かい合っているうちに、彼らの未来が気になったんです。特に主人公のマイケル・ブライス(演:ライアン・レイノルズ)を『ヒットマンズ・ボディガード』でひどい目にあわせましたから(笑)、彼はきっとセラピーが必要だろうと。それからもっとひどい目にあわせてやろうと思い(笑)、そうして生まれたのが本作です。ブライスにとって最悪のシナリオ(※ネタバレになるのでここは伏せておきますね)を考え、そこをラストにして逆算してシナリオを作りました。
―ブライスは極めてユニークな主人公ですよね。アクション・ヒーローとしてはすごいのにメンタル面はグダグダといいますか。
そうなんです。彼は誰かに認められたいと思っている。そして神経質で心配性。精神年齢は7歳、いや4歳くらいだと思います。つまり“子ども”なんですね。そこが『ヒットマンズ・ワイフズ・ボディガード』の大きなポイントです。
―監督は『エクスペンダブルズ3』も手掛けていますが、いつもアクション・シーンがすごいですよね。だから僕にとってはアクション映画の監督というイメージがあります。そこでお聞きしたいのですが、『ヒットマンズ・ワイフズ・ボディガード』は“コメディ・タッチのアクション映画”ですか? それとも“アクション・シーンの多いコメディ映画”ですか?
コメディ映画ですが、アクションの見せ場も忘れていません。撮影中は「大の大人がこんなことをやっていいのか?」というくらい馬鹿げたことをやっています。現場は大笑いの連続でした。ただし編集の時には少し冷静になって、笑える部分とアクションのバランスをうまく取るようにしました。
「豪華キャストのスケジュール調整が一番大変だった(笑)」
―僕はこのシリーズの楽しさの一つに、ロケーション撮影があると思います。ヨーロッパの街を使ったアクション・シーンが素晴らしい。監督には『007』シリーズを撮っていただきたいです。
『007』映画を任されたら最高ですね。それが叶ったら、もう映画監督を辞めてもいいくらいです(笑)。前作はアムステルダムやロンドン、今回はイタリア、クロアチア、スロベニアで撮影しました。監督にとっては有給旅行みたいなもので(笑)、撮影の合間にお城を見たり、ワインツアーにも行きました。実は、ライアン・レイノルズとは主人公ブライスを“負け犬の007”として描こうと話していたんです。だから僕なりの『007』へのオマージュ映画でもありますね。
―キャストも素晴らしいと思います。それにしても『エクスペンダブルズ3』もオールスター共演映画でしたし、この作品も豪華スターが揃っていますよね。大スターたちを現場で仕切るのは大変だったのではないですか?
才能ある役者たちと仕事ができることが、映画製作の醍醐味です。どのスターも性格・クリエイティビティ・価値観が違う。だからこそ、彼らを共演させることで起こる“化学反応”が楽しみでした。でも何より大変だったのは、彼らのスケジュール調整です。これはもう<テトリス>みたいなものでしたね(笑)。
―メイン・キャスト3人の印象を聞かせてください。
ライアン・レイノルズは本当にナイスガイです。ただ、僕も彼もすぐ笑ってしまうので、何度も撮影を中断させてしまってスタッフに怒られました(笑)。サミュエル・L・ジャクソンはキンケイド(※彼が演じる凄腕ヒットマン)そのもの。ハッキリものを言う人だし、とてもクールです。なによりも大スターのオーラがありますね。
サルマ・ハエックは、もうエネルギーの塊みたいな女性! 勘がいいし、とてもクリエイティブな意見も言ってくれます。人を包み込む懐の広さのようなものもある。彼女の持つ母性的な魅力が本作の大きなポイントですね。さきほどパート3の脚本はもうできていると言いましたが、あとはこの3人のスケジュールが合うかどうかです。またテトリス作業ですね(笑)。
―ぜひまた彼らに会いたいです。今日はどうもありがとうございました!
とても楽しいインタビューでした(※実はもっといろいろお話してくれたのですが、映画の核心部分に触れるので、ここまでにしておきます)。この映画、派手なカーチェイスも多く、心配性のブライスがいつもシートベルトを気にするんですが、監督に日本のファンへのメッセージをお願いしたら、「シートベルトを忘れずに!」とのことでした(笑)。つまり、そのくらいぶっ飛んだ映画ということです。この興奮、ぜひ劇場で味わってください。
取材・文:杉山すぴ豊
『ヒットマンズ・ワイフズ・ボディガード』は2022年4月8日 (金)よりTOHOシネマズ⽇⽐⾕ほか全国公開
https://www.youtube.com/watch?v=V2sU6y0KfVE&feature=emb_title
『ヒットマンズ・ワイフズ・ボディガード』
超一流のボディガード、マイケル・ブライスも今や落ち目。宿敵の殺し屋ダリウスに保護対象者を殺害されたトラウマで神経症に陥り、ライセンスをはく奪され、休暇で訪れたバカンス先にも災難は待ち受けていた。
ダリウスの妻で詐欺師のソニアに拉致されたマイケルは、マフィアに捕まったダリウスを救出するというミッションを強いられる。クレージーな彼女に振り回されながらも、救出に成功するが、殺したマフィアの中にインターポールへの情報提供者も混じっていたことで、かわりに捜査に協力するハメになる。最先鋭装置を使ってEUへのサイバーテロを企てるギリシャの大富豪アリストテレスから、装置の奪取に成功するマイケルたちだったが、敵の包囲網は彼らを苦しめていく。新婚旅行気分のダリウスとソニアに対して、マイケルは心も体もボロボロになり、伝説のボディガードである父を頼る。しかし、魔の手はすぐそこに迫っていた。
3人は世界を救うことができるのか?そして、ひたすら打ちのめされ、神経をすり減らすマイケルの運命は⁉︎
監督:パトリック・ヒューズ
脚本:トム・オコナー フィリップ・マーフィ ブランドン・マーフィ
出演:ライアン・レイノルズ サミュエル・L・ジャクソン サルマ・ハエック
アントニオ・バンデラス モーガン・フリーマン
フランク・グリロ キャロライン・グッドオール
制作年: | 2020 |
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2022年4月8日 (金)よりTOHOシネマズ⽇⽐⾕ほか全国公開