以前、『デイ・アフター・トゥモロー2020』(2019年)という映画を紹介した。原題は『ARCTIC APOCALYPSE』だ。
そして今回は、『デイ・アフター・トゥモロー2021』(2020年)という作品を紹介する。原題は『APOCALYPSE OF ICE』である。正直、原題込みでめちゃくちゃまぎらわしい。なんだこれ。
2021年、新型ウイルスの感染爆発により世界はロックダウン。だが、人類を襲う危機はそれだけではなかった。気象変動により、北極で発生した巨大寒波が凄まじい勢いで成長していたのだ。パナマの研究所でそれを知った科学者のジルたちは、完成したばかりのウイルス治療薬を護るため、唯一の安全地帯である赤道直下のエクアドルを目指す。その間にも、絶対零度の寒波はすべてを凍らせながら、猛スピードで北米大陸を南下。ジルは、“人類最後の希望”を護りきることが出来るのか?(ジャケット裏のSTORYより引用)
ほぼまちがいなく新型コロナウイルスがモチーフであろう未知のウイルスの蔓延に加え、世界規模の大災害がやってくるという、ディザスター・パニック系よくばりセット全開のアサイラム作品。まあ実際のところはその未知のウイルスが人に害をなす直接的な描写は少なく、お話的にも、無意味ではないにせよ最悪べつの設定に代替えしてもよかったんじゃないかと思われるくらいの存在感であり、ぶっちゃけ自然災害要素だけで充分成り立っていただろうパニック映画である。
本作には屋外ロケのシーンが非常に少ない。ほとんど屋内セットで登場人物が会話しているシーンばかりで、屋外シーンの多くは、クロマキー合成やらフッテージの活用やら、なんやかんやの手法でごまかされている。まあ“氷の嵐であちこちが雪に埋もれ、凍結した世界”が舞台設定のパニック映画を、アサイラム社の規模で作ろうとするならば、まあコロナ禍があろうがなかろうがどのみち合成まみれにはなるのだろうが、それにしたって屋内セットのシーンが多すぎる。特に“登場人物がそれぞれなんらかの目的のためのひたすら車を運転しているシーン”及び“その車内の俳優を寄りで映して諸々なんとか繋いでいるショット”が、かなり目立つ。苦肉の策ということか。
なお、CGやら合成やらを駆使して作られた“人工”屋外シーンは、基本的に真っ白な雪景色。が、ちゃんとロケを行ったらしき“天然”屋外シーンでは、どう見ても思いっきり快晴で、“ものすごい氷の嵐の到来で世界が滅びかかっているシーン”とのギャップが激しい。かつ、そのシーンの間は登場人物がほぼ腰から上しか画面に映らなくなる。おそらく足元を映すと、地面にぜんぜん雪が積もっていないことが丸わかりになってしまうからだろう。不格好ながらもそういうところを律義に隠しているのは、アサイラム社なりのこだわりか……と思いきや、うっかりそのむき出しの地面をまんま映しちゃっているショットがチラッとあったりもするので、あまり深く考えない方がいいのかもしれない。
ほか、アサイラム製ディザスターにしては珍しく家族愛・夫婦愛要素が控えめなのが特徴だろうか(まったくないわけでないし、ラストでは案の定“家族の絆”を強調して話をまとめてくる)。総合的にはごくごく凡庸な低予算映画である。
ちなみに本作の序盤には、ウイルス対策のためにせっかく開発されたワクチンの認可がなかなか降りず、登場人物の一人が不満を漏らすという、ちょっとした政府批判描写が存在する。元々アサイラム社には、普段から今時の流行りものやアメリカの社会問題といった時事ネタをつまみ食いしては、それを雑に脚本へと盛り込み、申し訳程度の「今風」感を出そうとする傾向が見られる。そのため上記の描写も、べつに本気で政府に物を申したいわけではなく、単なる節操のない時事ネタだと捉えられなくもないが……。
一方でアサイラム社はほかの映画スタジオと同様、コロナ禍の影響により、新作のロケには相当苦労しているようだ。未知のウイルスとやらに絡めたアメリカ政府批判も、今回ばかりは案外、アサイラム社の本音だったりするのかもしれない。
文:知的風ハット
『デイ・アフター・トゥモロー2021』はCS映画専門チャンネル ムービープラスで2021年1月放送
『デイ・アフター・トゥモロー2021』
2021年、新型ウイルスの感染爆発により世界中がロックダウン。だが人類を襲う危機はそれだけではなかった。北極で巨大寒波が急成長していたのだ! パナマの研究所でそれを知った科学者のジルたちは、完成した治療薬を守るため、唯一の安全地帯である赤道直下のエクアドルを目指す。
制作年: | 2020 |
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監督: | |
出演: |
CS映画専門チャンネル ムービープラスで2021年1月放送