ゲームと恋と溝の口
「『ハイスコアガール』というアニメがある」と聞いたら、どんなストーリーを想像でしょうか? 少女たちのスポ根ものだったり、バトルアクションなんかをイメージするかも知れません。しかし『ハイスコアガール』はそのどちらでもなく、青春の甘酸っぱい思い出をフラッシュバックさせてくれるラブコメ作品です。
物語の舞台となるのは神奈川県・溝の口(をイメージした街)。対戦型格闘ゲームが大ブームを巻き起こしていた1990年代という時代背景の中で、ゲームが好きすぎて恋愛には興味がない主人公・矢口春雄(ハルオ)、お金持ちのお嬢様で無口なヒロイン・大野晶、そして<中学生編>から登場する(個人的にヒロインよりも推しキャラな)おとなしい性格の日高小春の3人による三角関係を軸に、実在する伝説的なゲームタイトルを織り交ぜたストーリーが展開されます。
ラブコメでありながら、少年マンガにありがちな強引ラブ展開や都合のよすぎる設定、ベタな泣き要素を押し付けてくるようなこともない、当時のカルチャーや人物描写、物語の主題が丁寧に練られた良質なアニメ作品、それが『ハイスコアガール』です。
秘めた想いが爆発! 胸キュン悶絶必至の神回
小学生編から始まるアニメ版では、高校生編までが24話構成で描かれます。作品全体に散りばめられている“胸キュン”ポイントがどれも秀逸なので、今回どこをピックアップして紹介するべきか悩んでしまいました。ということで少々ピンポイントすぎるかもしれませんが、先述した僕の“推しキャラ”である日高小春が、ずっと好意を寄せていたハルオへの想いを抑えきれなくなって……という描写が素晴らしかった、シーズン2の「ROUND18」について書かせて下さい。
高校生になり、ハルオをハッキリと意識しはじめるようになった小春は、恋敵の晶に対してヤキモチを抱く様になります。そんなある日、ゲームセンターの縄張り争いに巻き込まれて渋谷のチームに入ることになったハルオは、小春の所属する溝の口チームと対戦することに……。しかしこのエピソードの本題は、対戦後に渋谷で終電を逃した2人がファミレスで時間を潰すシークエンスです。
そこで小春は、ハルオをグイグイ攻めるんです。
大事なことなのでもう一度言いますが、小春、グイグイきます。
しかも彼女の口から飛び出したのは、「男女2人で布団のあるところ行きたいな……」という妙に具体的な、しかし本作のセリフTOP3に入るであろうキラーワード。残念ながら現実世界で耳にしたことはありませんが、このシーンに悶絶した視聴者は少なくないでしょう。いや〜、このときの小春はセリフも仕草もヤバかった。
結果的にはハルオの鈍感力が勝り、一線を越えることなく始発の時間を迎えます。すると、それまで溜め込んでいだ感情が爆発し、泣きながらハルオに抱きついてくる小春! しかも、ハルオが渋谷にいるという噂を聞いて夜な夜な探し回っていた晶が、その現場を目撃してしまうのです!!
……以上、後に描かれる告白シーン以上にドキドキさせてくれる、僕が大好きなエピソードでした。
ラブコメ好きやゲーセン好き、そして平成レトロ世代にもオススメ!
90年代当時のゲーセンブームがどストライクな世代の方にはもちろん、最近では“平成レトロ”なんてジャンルも確立されつつあるので、ぜひ00年代生まれの世代や、今回ご紹介した神回の内容が少しでも心に刺さった方々には激しくオススメしたい作品です。
最終話(ROUND24)のラストはしっかり涙させられる良い締めくくりでしたが、原作者の押切蓮介先生は「『ハイスコアガール』はまだ終わらない」とおっしゃっていました。なので、ひとまず現在公開されているシーズン2までをイッキ見しましょう。そして月刊「ビッグガンガン」 で絶賛連載中のスピンオフ作品「ハイスコアガール DASH」や、高校生編のその後を描いた作品たちがアニメ化されることを楽しみに待っています!
文:男成公平
『ハイスコアガール』はBlu-ray/DVD発売中、Netflixで全話(ROUND1~24)配信中
©押切蓮介/SQUARE ENIX・ハイスコアガール製作委員会
©押切蓮介/SQUARE ENIX・ハイスコアガールⅡ製作委員会
『ハイスコアガール』
「ポリゴン」って何? 食えんの? そんな2D全盛期だった古き良き格ゲーブーム到来の1991年。ヤンキーとオタクとリーマンが蔓延る場末のゲーセンに、彼女は凛として座していた──。主人公ハルオを通して描かれる、90年代アーケードラブコメディ。
制作年: | 2021 |
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監督: | |
声の出演: |
Blu-ray/DVD発売中、Netflixで全話(ROUND1~24)配信中