クレイグ=ボンドの集大成
ダニエル・クレイグが『007/カジノ・ロワイヤル』(2006年)で6代目ジェームズ・ボンドに就任して15年。ついに彼の任務も終わりを迎える。この15年間、ボンドは大きく変化した。そこには共同プロデューサーでもあるクレイグの意見も反映されている。最新作にしてクレイグ=ボンドの集大成となる『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』への想いをたずねると、すがすがしい笑顔で答えてくれた。
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「今までボンドは女性を甘く見ている部分もあった」
―ジェームズ・ボンドに別れを告げた、今の率直な心境は?
落ち込んではいないよ。悲しくはあるけれど。なにせ15年もの長い間、僕の人生を占めていたわけだから。ボンドから離れるのはちょっと悲しいけど、とても幸せだった。多くの絆に恵まれたしね。でも、今がボンドから旅立つにはちょうどいい時期だと思ったんだ。ジェームズ・ボンドとしてこの5本の映画を撮れたことを、本当に誇りに思っている。ボンドとしても、映画としても最高で、これ以上は望めないだろう。
―ジェームズ・ボンドを辞める決断をした理由を教えてください。
最初にボンドを演じたときは30代だった。その頃より倍の努力をしないと、体力も体型もキープできなくなったよ。ボンドらしくあるためのね。今回も撮影の初期に怪我をして2週間、現場を離れることになったんだ。走れるようになるには6週間必要と言われた。特別に素晴らしい外科医のおかげで早めに走れるようになって復帰できたけれど、もうサイボーグだよ(笑)。体に金属が入ってるからね。でも素晴らしいチームが常に気を使ってくれたおかげで、無事にやり遂げられた。
―今回、かなりフェミニズムの視点がもたらされているようですね。
ボンドにとって最も重要な問題は女性なんだ。『カジノ・ロワイヤル』ではヴェスパーに出会い、裏切られ、傷ついた。その後も強い女性キャラクターが生まれてきたけど、今回はその頂点になっていると思う。フェミニズム、というだけじゃなく、すごく強くて素晴らしい女性が必要だと僕は思ったし、それがこの映画の最も重要な点だと思うんだ。
今までボンドは女性を甘く見ている部分もあった。でも今回はラシャーナ(・リンチ)演じる同僚ノーミをはじめ、ボンドに匹敵する女性が出てくる。そんな物語にできてよかった。アナ・デ・アルマスも『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』(2019年)で共演してこれは凄いと思い、フクナガ監督も彼女を買っていたから、すぐに出演が決まったんだ。
「世界の現状から離れては、映画は作れない」
―脚本にフィービー・ウォーラー=ブリッジを推薦した理由を教えてください。
彼女が超、超、超優秀な脚本家だから。それに尽きる。ドラマの『Fleabag フリーバッグ』(2016年~)や彼女の舞台も観ていたし、『キリング・イヴ/Killing Eve』(2018年~)の脚本もスリラーとコメディのバランスが良くできていた。原作を脚色する能力も優れている。それで彼女はどうかな、ってバーバラ・ブロッコリ(プロデューサー)に話したら、彼女もフィービーと知り合いで、それでうまくタイミングがあったんだ。
―今回からボンドガールではなく“ボンドウーマン”と呼ぶことになりましたね。時代を反映させたのですか?
世界の現状から離れては、映画は作れない。時代に引っ張られることもあるし、映画が現実に先行することもある。
―今までの『007』映画と比べて、この作品は特別なものになりましたか?
そう思う。僕はこうしたファンタジーの世界においては、ストーリーが一番大事だと常に思っている。ジェームズ・ボンドはある意味ファンタジーだから。ボンドが言うセリフも、行動も現実離れしているので、その行動原理となるストーリーが面白くなくてはいけない。その点において、この映画は間違いなく合格点だし、今までの作品とも繋がっているんだ。
「『ノー・タイム・トゥ・ダイ』が最高の出来になったから、もう悔いはないよ」
―キャリー・ジョージ・フクナガが監督に抜擢された理由を教えてください。
『007』映画は並外れて大規模な映画であり、非常に多くのスタッフが関わっているけれど、その軸になるのは監督なんだ。キャリーは確固としたビジュアル・スタイルを持っていて、それはとても特別なものだ。そして、ここまで大規模な映画を作り上げるには、とにかく最高の人材が必要だが、ただ単に最高なだけじゃなく、何か特別なものを持っていないとならない。それがキャリーにはある。彼はプレッシャーに打ち克つエネルギーもあるし、ビジョンも明解だし、『007』映画にぴったりだったと思うよ。
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―悪役サフィンを演じたラミ・マレックとの共演はいかがでしたか?
ファンタスティック。ラミはこの映画に力を注いでくれた。ラミはオスカーを獲ったばかりで、誰もが彼を欲しがっていた。ラミがこの映画を選んでくれたことは、幸運だったね。
―改めて聞きますが、あなたのボンドはこれが最後なんですよね。
これが最後。『ノー・タイム・トゥ・ダイ』が最高の出来になったから、もう悔いはないよ。
取材・文:石津文子
『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』ブルーレイ&DVD は、2022年3⽉2⽇(⽔)リリース。
『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』
ボンドは00エージェントを退き、ジャマイカで静かに暮らしていた。しかし、CIAの旧友フィリックスが助けを求めてきたことで平穏な生活は突如終わってしまう。誘拐された科学者の救出という任務は、想像を遥かに超えた危険なものとなり、やがて、凶悪な最新技術を備えた謎の黒幕を追うことになる。
制作年: | 2020 |
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監督: | |
出演: |
2021年10月1日(金)より全国公開
CS映画専門チャンネル ムービープラス「特集:ダニエル・クレイグ誕生祭」
2022年3月2日(水)に54歳の誕生日を迎える、「007」6代目ボンドのダニエル・クレイグ。3月1日(火)~4(金)13:30~ダニエル・クレイグ主演の「007」作品字幕版を連日放送!さらに3月6日(日)12:00~は、名探偵を演じたアガサ・クリスティ原作の『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』と、「007」作品吹替版を一挙お届け。
『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』ブルーレイ&DVD
『007』シリーズ最新『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』のブルーレイ&DVDが2022年3⽉2⽇(⽔)にリリースすることが決定︕セル商品はボーナスブルーレイが付いた3枚組︕〈 4K Ultra HD+ブルーレイ〉の4K UHD には さらに約47分のドキュメンタリー「ジェームズ・ボンドとして」を収録︕豪華な仕様となっている。