阿吽の対談インタビュー後編
人気ドラマシリーズ『時効警察』(2006年ほか)などで度々共演してきたオダギリジョーと麻生久美子が、今度はオダギリの脚本・演出作品『オリバーな犬、 (Gosh!!) このヤロウ』(2021年9月17日からNHKにて放送開始)で再び合流した。
本作は、鑑識課警察犬係に所属する警察官・青葉一平(池松壮亮)が、相棒の警察犬オリバーと個性豊かな仲間たちと共に、不可解な事件の解決・真相究明に奔走する……という物語だ。
今回は、そんなオダギリと麻生に対談インタビューを敢行。軽口を交わし合いながらもお互いの信頼関係がにじみ出る、意外な撮影秘話も飛び出したインタビュー後編をお送りする。
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監督としてのオダギリは俳優のときとは別人!?
―映画に始まり、様々な分野に活動が広がっていったおふたりですが、今回は脚本・演出と出演という関係です。
麻生:オダギリさんは監督になると別人格が出てくるんですよ(笑)。もともと真面目な人だとは思うのですが、「私にそんなに気を遣ってくれるの?」っていうくらい優しくなる(笑)。役者同士だと、ことあるごとに茶々を入れてくるんです。
オダギリ:『時効警察』のときは、とにかくいじり倒してましたね(笑)。僕がやり過ぎて、しょっちゅう「いい加減にして!」って怒られてました(笑)。
麻生:だって、傷つくこと言うじゃん!(笑)
オダギリ:俳優のときは、ついそういうモードになっちゃうんですよね……(笑)。ただ、監督のときは自分の作品に集まってきていただいているわけですから、悪いことはできない(笑)。
麻生:真面目か(笑)。
―(笑)。となると、意識的に接し方を変えていらっしゃる……?
オダギリ:そうですね(笑)。どうしても変わってきちゃいますね。
麻生:岩松了さんみたいだよね。岩松さんも役者と演出とで、出している雰囲気から何から全く別人になるんです。
オダギリ:でも、僕は逆のパターンでしょ?(笑)
麻生:そうだね、岩松さんは演出家モードになると怖いから(笑)。
―『オリバーな犬、 (Gosh!!) このヤロウ』を拝見して、麻生さんのはっちゃけた演技がとても楽しかったです。現場の雰囲気もすごく良かったんだろうなぁと思いました。
麻生:雰囲気はとても良かったのですが、『時効警察』のときとかだと現場の間ずうっと喋っているんですよ。それが楽しいのですが、今回のオダギリさんは監督だから、あのときほどはコミュニケーションをとれなかったかな。あとは、オダギリさんから軽くプレッシャーをかけられました。
―プレッシャー!
麻生:はい(笑)。台本のト書きにも「麻生さんはこの長ゼリフを果たして言えるのか。心配だけど頑張ってほしい」みたいに書かれていて、こんなの見たことないって思いました(笑)。それもあって、ちゃんとやらないとと思っていたところはありましたね。
オダギリ:(笑)。現場での僕と麻⽣さんのやり取りは、実はとても重要な意味を持っていたんです。麻⽣さんへの演出を⾒てもらうことで「本当はここまで細かく演出したいんだ」という意識を周りに感じてもらったといいますか。他のキャストの⽅々は「私はあそこまで演出つけられないけど、出来てるのかな?」と緊張感を持ったり、スタッフは「もっと撮影時間が取れれば、もっともっと⾯⽩くなるんだろうな」とクリエイティブな意識でいてもらう。というように、麻⽣さんに向けて演出しながらも、周りも刺激してたみたいなところがありましたね。逆に池松壮亮くんにはほとんど演出しなかったから、鈍感な⼈にとっては「麻⽣さんにだけ厳しくない?」って感じられたかもしれない……(笑)。
麻生:池松くんはなんて言ってたの?
オダギリ:池松くんは受けの芝居だから、そんなに演出する必要がないことも含めてしっかりわかってくれていて、「麻生さんのスキルが高すぎてすごいですね」って言ってたよ。
麻生:おおー。
役名や地名は、麻生久美子の発案も多数
―オダギリさんが麻生さんにオファーされたタイミングは、台本と同時だったのでしょうか?
オダギリ:いや、声をかけたのはずっと前ですね。
麻生:一回降ろされたしね(笑)。
―えっ!
麻生:すごい出し惜しみをされて、「本、第1話ありますけどどうします? 一応読んでもらう……?」って(笑)。
オダギリ:それは、お断りした夜?(笑)
麻生:お断りした夜(笑)。ひどくないですか? オダギリさんの方から「一緒にやろう」って言ったのに、私のことを降ろしたんですよ(笑)。事情を聞いたら納得はしたので「わかりました」と言ったのですが、その日の最後に「一応……」って台本をくれました(笑)。
―そうだったんですね……。いや、でも結果的に出演が決まって良かったです。「気づくと前髪が短くなっている」という設定など、漆原のキャラが麻生さんにばっちりハマっていました。
麻生:本当ですか! 嬉しいです。
オダギリ:ちょっとした裏話なんですが、ある日、麻生さんの自撮り写真が送られてきて(笑)。
麻生:「自撮り」って悪意ある!(笑)
オダギリ:「髪の毛切ったの。どう?」みたいな感じで、前髪がすごく短くなっていたんですよね。そういういきさつも、キャラクターに反映したら面白いなと思って書き足しました。だからきっかけは麻生さんなんですよ。
オダギリ:もっと言うと、「狭間県警」というネーミングも、麻生さんが考えてくれました。僕は名前を考える作業が好きじゃなくて(苦笑)、麻生さんに助けていただきましたね。橋爪功さんに演じていただいた「神々?(ししば)」も麻生さんが名付け親です。
麻生:「なんかいい名前ない?」みたいな感じで、連絡が来るんです。
オダギリ:実際、麻生さんのネーミングセンスが素晴らしいんですよね。僕からは絶対に出ないものを考えてくれる。
麻生:嬉しい。
―そういったネーミングは、パッと降りてくるのでしょうか。
麻生:降りてくるものもあれば、真面目に調べて提出するものもあります(笑)。
オダギリ:そういう意味では、麻生さんはリサーチ係も兼ねてくれているんですよね。『時効警察』のときも、麻生さんとの何気ない会話の⾯⽩い部分を即興的に芝居に⼊れてみたり、ケータイにメモっておいて脚本を書く際に引っ張り出してきたものもいくつかあります。
麻生さんのリアクションを入れると、シーンが成立する
―おふたりは本当にフィーリングが合うんですね。
オダギリ:いやぁ、僕にとっては本当に面白い研究対象ですよ。麻生さんの感性が好きなんでしょうね。くすぐられるというか、脚本を書きたくなりますし、モチベーションを上げてくれます。
麻生:嬉しいです。一緒にお芝居をしていても楽しいですし、自分がやろうと思っていた以上のことが普通にできてしまうのは、すごく楽しいですね。
オダギリ:僕はあんまり共演者の方と仲良くなれないのですが、ここまで気を遣わないで話せるのは麻生さんくらいですね。
麻生:本当、気を遣わないね(笑)。どうでもいいことばっかり喋ってる。
―『時効警察』で本格共演された当初から、すぐ意気投合されたのでしょうか?
オダギリ:うん、そうですね。
麻生:すごく話しやすかったんです。最初は悩み相談から始まったんじゃないかな? そこから始まって、「いま何食べたい?」とかそんな話ばっかり(笑)。
オダギリ:「いま何食べたい? 私は~」って2時間ごとに言ってますよ(笑)。
でも、『オリバーな犬、 (Gosh!!) このヤロウ』では「漆原が一平(池松)とオリバーをどう見ているか」がすごく大事なんです。視聴者の目線にもなるし、「何ごちゃごちゃしてんのよ」みたいな表情から、視聴者も「あ、そうか。周りにとっては⽝なんだ」と思い出させてくれる、⾔わば世界観を作るキーパーソンなんですよ。麻生さんのリアクションを入れるだけで成立しますし、面白さが増えるから編集の際にもすごく助けられました。とても重要な役だったんだなと改めて思いましたね。
取材・文:SYO
撮影:川野結李歌
衣装(オダギリジョー)
シャツ:¥47,300/パンツ:¥47,300(ともにKIDILL/サカス ピーアール)
ブーツ:¥59,400(LAD MUSICIAN/ラッド ミュージシャン 原宿)
・サカス ピーアール(03-6447-2762)
・ラッド ミュージシャン 原宿(03-3470-6760)
ドラマ10『オリバーな犬、(Gosh!!)このヤロウ』はNHK総合で2021年9月17日、24日、10月1日<全3回>金曜よる10時から放送
https://www.instagram.com/p/CTWWc9clvNd/
『オリバーな犬、(Gosh!!)このヤロウ』
鑑識課警察犬係に所属する警察官で、この物語の主人公である青葉一平と、彼の相棒である警察犬オリバーが次々と発生する不可解な事件に挑んでいくのだが、様々な思惑が入り乱れ……。ある日、いつものようにオリバーと朝のトレーニングを終えた一平。出勤すると、先輩である漆原から、優秀なオリバーの足を引っ張らないよう釘をさされてしまう。一平が所属する狭間県警の鑑識課警察犬係は、課長以下、同僚で同じハンドラーのユキナと、後輩の三浦がメンバーだ。そんな彼らのもとに、出動の要請が。このときの彼らは、まだ知らなかった。自分たちが、奇妙で不可思議な事件に巻き込まれていくことになるとは……。
制作年: | 2021 |
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出演: |
NHK総合で2021年9月17日、24日、10月1日<全3回>金曜よる10時から放送