カルーヤ&スタンフィールドのキャリア振り返り
いよいよ日本時間2021年4月26日(月)に開催される第93回アカデミー賞。パンデミックによる特殊な状況ではあったものの、アジア系監督/俳優陣による作品が本命視される歴史的な年ともなった。そんな中で、作品賞・助演男優賞・脚本賞・撮影賞の4部門ノミネートと大健闘している作品がある。1960年代アメリカのブラックパンサー党を取り巻く陰謀を描いた実録サスペンス『ユダ・アンド・ザ・ブラック・メサイア/Judas and the Black Messiah(原題)』だ。
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ダニエル・カルーヤとラキース・スタンフィールドという期待の若手俳優W主演で早くから注目を集めていた本作だが、ゴールデングローブ賞やアカデミー賞の前哨戦と言われるSAG(全米映画俳優組合賞)などでカルーヤが助演男優賞を受賞したこともあり期待度が急上昇。オスカー獲得も夢ではないどころか、じゅうぶん射程範囲と言えるだろう。
ところが本作の日本上陸は2021年夏までお預け……なのは致し方ないとして、気になるのは“レンタルリリース予定”とアナウンスされていること。配信スルーの可能性もあるのかもしれないが、どちらにしてもアカデミー賞ノミネート作品が劇場公開されないというのは……(驚&悲)。
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ともあれ『ユダ・アンド・ザ・ブラック・メサイア』で俳優としてさらにステップアップ間違いなしのカルーヤとスタンフィールドのこれまでのキャリアについて、印象的な過去作を挙げながらざっくり振り返っておこう。
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ダニエル・カルーヤ:コメディのセンスもあり! 巻き込まれ系がハマる英国出身俳優
『ユダ・アンド・ザ・ブラック・メサイア』でブラックパンサー党の幹部フレッド・ハンプトンを演じるカルーヤ。ハンプトンは、本年のアカデミー賞5部門ノミネートのNetflix映画『シカゴ7裁判』にも登場していて(演:ケルヴィン・ハリソン・Jr)、党のイリノイ支部代表だった人物だ。
実はカルーヤ自身は英国出身のロンドンっ子であり、幼少期から主に舞台やBBCのドラマシリーズで活躍してきた。『ブラック・ミラー(シーズン1)』(2011年)の1エピソード「1500メリット」に出演し高評価を得るが、日本の映画ファンに認識されるようになったのは2013年の『キック・アス/ジャスティス・フォーエバー』で演じた悪役“ブラック・デス”だろうか。
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クライム・サスペンス『ボーダーライン』(2015年)に続き、スマッシュヒット作『ゲット・アウト』(2017年)に主演。本作は白人の彼女の実家に挨拶に行った黒人青年が見舞われる恐怖を描き、ジョーダン・ピール監督が第90回アカデミー賞で脚本賞を受賞している。ド田舎で繰り広げられる“じわじわ被差別スリラー”かと思いきや、予想を超えるブッ飛び系スリルも味わえる傑作であり、カルーヤ渾身の「マジかよ」演技がさらに観客の恐怖を煽る。
そしてチャドウィック・ボーズマン主演のマーベル映画『ブラックパンサー』(2018年)では、主人公ティ・チャラの友でありワカンダ国境を警備するボーダー族の若きリーダー、ウカビ役でSF超大作に進出。残念ながら本編ではカットされたが、ウカビたちが国の未来を憂う重要なシークエンスはMCUファン必見だ。
ちなみにカルーヤは米人気コメディ番組「サタデー・ナイト・ライブ」(2021年4月放送回)にゲスト出演し、イギリス人であること(発音)と黒人であることをネタにしつつ、何かと話題の英国王室をピリッと皮肉る一幕も。「SNL」で笑いのセンスも証明したので、今後はコメディ映画への本格進出も期待できるかも?
Daniel Kaluuya’s Monologue! pic.twitter.com/YioaXz4Aon
— Saturday Night Live - SNL (@nbcsnl) April 4, 2021
ラキース・スタンフィールド:「デスノート」のLからスヌープ・ドッグまでこなす個性派
日本ではラキース、レイキース、キースなど呼称すら定まっていなかった(発音的にはラキース)感のあるスタンフィールドだが、出演するドラマ/映画が軒並み話題になったことで知名度急上昇。カルーヤと共演した『ゲット・アウト』では、主人公が最初に“違和感”を感じる重要な役を演じているので見覚えのある人も多いだろう。長編初出演のインディー映画『ショート・ターム』(2013年)で披露したラップは高評価を得たそうで、いい意味で役者らしくないスタンフィールドの存在感が光る秀作なので観てみてほしい。
その後は『グローリー/明日への行進』(2014年)や『ストレイト・アウタ・コンプトン』(2015年 ※スヌープ・ドッグ役!)など様々な作品に出演し、2016年にはチャイルディッシュ・ガンビーノことドナルド・グローヴァー製作・主演のドラマ『アトランタ』のダリウス役がヒット。
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ゴールデン・グローブ賞やエミー賞など多くの賞を獲得した同シリーズによって期待の若手俳優筆頭となったスタンフィールドは、その絶妙にレイドバックした独特の雰囲気を維持したまま、『ホワイト・ボイス』(2018年)、『蜘蛛の巣を払う女』(2018年)、『アンカット・ダイヤモンド』(2019年)、『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』(2019年)など話題作に次々出演。Netflix映画『Death Note/デスノート』(2017年)では原作とは一味違う“L”を見事に作り上げ、来日も果たした。
L役に抜擢されただけあって、ステレオタイプな黒人俳優のイメージとは異なる、ちょっと不思議系キャラクターを演じることも多いスタンフィールド。並行して活動中という音楽のほうも頑張っていただきたいが、やはりあのダルそうだけど実はスマート、みたいな唯一無二の雰囲気を活かして今後も映画/ドラマに出まくってほしい。
『ユダ・アンド・ザ・ブラック・メサイア(原題)』は日本公開日未定
『ユダ・アンド・ザ・ブラック・メサイア(原題)』
ケチな犯罪で捕まったウィリアム・オニールはFBIのロイ捜査官に弱みを握られ、情報を横流しするためブラックパンサー党に潜入する。イリノイ支部の代表フレッド・ハンプトンに接近したオニールは次第に彼に魅了されていくが、急速に支持を拡げていくブラックパンサー党を恐れたフーバー長官の命令により、ハンプトン暗殺に加担することになる。
制作年: | 2020 |
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監督: | |
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