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2度目のアカデミー賞受賞なるか!? トレント・レズナー&アッティカス・ロスの映画音楽仕事を振り返る

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ライター:#森本康治
2度目のアカデミー賞受賞なるか!? トレント・レズナー&アッティカス・ロスの映画音楽仕事を振り返る
『ソウルフル・ワールド オリジナル・サウンドトラック』 好評発売中
https://umj.lnk.to/Soul_OST
© 2020 Disney Enterprises, Inc./Pixar
発売元:ユニバーサル ミュージック合同会社

レズナー&ロス、再びアカデミー賞受賞なるか?

デビューアルバム「プリティ・ヘイト・マシーン」(1989年)が話題を呼び、続く「ザ・ダウンワード・スパイラル」(1994年)で一躍インダストリアル・ロック界の寵児となったナイン・インチ・ネイルズ(以下、NIN)。当時の筆者はトレント・レズナーが作り出す刺激的なサウンドに圧倒されていたが、彼がのちに映画音楽の制作を手掛けるようになり、ましてやアカデミー賞を受賞することになるとは想像もしなかった。

https://www.instagram.com/p/Bc0CVm5nGi8/

2021年の第93回アカデミー賞でも、レズナーとアッティカス・ロスは『Mank/マンク』と『ソウルフル・ワールド』(共に2020年)で作曲賞にダブルノミネートされている。彼らの活躍は映画音楽界にどのような影響を与えたのか、この場を借りて少し振り返ってみたいと思う。

NINの斬新なサウンドとレズナーの鋭い音楽センスに映画界も注目

1990年代、NINの斬新な音楽は気鋭の映画監督たちからも注目され、ダニー・キャノン監督作『プレイデッド』(1993年)、アレックス・プロヤス監督作『クロウ/飛翔伝説』(1994年)などで彼らの楽曲が使用された。

のちに盟友となるデヴィッド・フィンチャー監督作『セブン』(1995年)のオープニングタイトルで使われた「Closer(Precursor)」は、カイル・クーパーの秀逸なタイトルデザインとの相乗効果で一大センセーションを巻き起こしたが、レズナーがその前後に行った『ナチュラル・ボーン・キラーズ』(1994年)と『ロスト・ハイウェイ』(1997年)におけるサウンドトラックアルバム・プロデュースの仕事も重要なものとなっている。

レズナーはこの2作に書き下ろし曲を提供したほか、サウンドトラックアルバムの選曲・編集を担当。雑多なジャンルの楽曲を劇中のセリフや効果音とミックスして、独特な雰囲気を持ったアルバムを完成させた。NINの新曲「The Perfect Drug」の効果もあって、『ロスト・ハイウェイ』のサウンドトラックアルバムはビルボード・チャート7位を記録。後年NINは『ツイン・ピークス The Return』(2017年)の第8章に出演。ロードハウスで「She’s Gone Away」を演奏してファンを歓喜させたのも記憶に新しい。

『ザ・ファン』(1996年)でNINの楽曲を使用したトニー・スコット監督は、『マイ・ボディガード』(2004年)でレズナーを音楽コンサルタントに起用。「The Mark Has Been Made」などの楽曲が壮絶な復讐劇を盛り上げた。

ビデオゲームの実写映画化作品『DOOM ドゥーム』(2005年)には「You Know What You Are?」を提供。映画本編のスコア作曲を担当した元ポップ・ウィル・イート・イットセルフのクリント・マンセルが、同曲のリミックスを手掛けている。

筆者私物

デヴィッド・フィンチャー監督作品でさらなる進化を遂げた音楽

そして2010年、レズナーとロスはフィンチャーからのリクエストに応えて『ソーシャル・ネットワーク』で本格的にスコアの作曲に着手。静かで内向的な曲から野心家の若者たちのフラストレーションを表現したキレのある曲、アナログシンセの“スワーマトロン”を使った曲まで多彩なエレクトロニック・スコアを作曲。彼らの革新的な音楽は、コンサバティブと評されることの多いアカデミー賞(第83回)で見事作曲賞を受賞した。

フィンチャーとの仕事でレズナー&ロスの音楽はさらなる進化を遂げ、『ドラゴン・タトゥーの女』(2011年)では釘~洗濯バサミを敷き詰めたピアノ(プリペアド・ピアノと思われる)やベルトーンの音を歪ませて電子音と組み合わせ、寒々としたサウンドスケープを作曲。続く『ゴーン・ガール』(2014年)ではオーケストラや自作楽器の音をシンセで加工し、より有機的な音楽で物語全体を覆う不穏な空気を表現した。

『ゴーン・ガール』 オリジナル・サウンドトラック
Sony Music Labels Inc.

そしてコラボ最新作となる『Mank/マンク』では、従来のシンセサウンドから一転、物語の舞台となる1930年代に演奏可能な生楽器だけでスコアを作曲。クラシカルなオーケストラ演奏にビッグバンドジャズやフォックストロットの要素を取り入れた、ノスタルジックかつ洗練された音楽を聴かせてくれている。

新たな音楽表現の可能性を求めて、様々な鬼才監督たちとコラボレート

フィンチャー監督作品の専属作曲家というイメージが強いレズナーとロスだが、近年は様々な監督たちとコラボレートしている。

ロスはテレビシリーズ『タッチング・イーブル ~闇を追う捜査官~』(2004年)、『ザ・ウォーカー』(2010年)、『ブロークンシティ』(2012年)でヒューズ兄弟と仕事をしたほか、『トリプル9 裏切りのコード』(2015年)や『アースクエイクバード』(2019年)などの音楽を担当。レズナー&ロス名義でもピーター・バーグ監督作『パトリオット・デイ』(2016年)、ジョナ・ヒル監督作『mid90s ミッドナインティーズ』(2018年)、スサンネ・ビア監督作『バード・ボックス』(2018年)、トレイ・エドワード・シュルツ監督作『WAVES/ウェイブス』(2019年)、テレビシリーズ『ウォッチメン』(2019年~)などの音楽を担当する売れっ子ぶりである。

筆者私物

その中でもディズニー/ピクサー作品『ソウルフル・ワールド』は異色コラボの最たるものと言えるだろう。NINの活動では“Fワード”も辞さない強烈な歌詞の楽曲を演奏しているレズナーだが、同作のスコアではNINの“静”の部分を全面に出した幽玄の音楽世界を作り上げている(ジャズのパートはジョン・バティステが担当)。

第78回ゴールデングローブ賞ではレズナーとロスがバティステと共に『ソウルフル・ワールド』で作曲賞を受賞。第93回アカデミー賞の受賞結果を予想しつつ、『Mank/マンク』と共にこちらのサウンドトラックアルバムも是非お楽しみ頂きたいと思う。

文:森本康治

『Mank/マンク』はNetflixで独占配信中
『ソウルフル・ワールド』はディズニープラスで独占配信中

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