アサイラム的には傑作!? あの動物ホラーパニックの続編
低予算早撮りとモックバスターで悪名高いアサイラム社だが、アニマル・パニック物の打率は比較的高い。サメ映画の新たな金字塔『シャークネード』シリーズ(2013~2018年)は言わずもがな、かのデボラ・ギブソンとティファニーが共演したことで特に知られている『メガ・パイソンVSギガント・ゲイター』(2011年)、動物園の猛獣が一斉にゾンビ化して暴れ回る『ZOOMBIE ズーンビ』(2016年)など、ことコメディ色の強いドタバタ劇については、やや勢い任せながらもそれなりにまっとうで楽しい作品を定期的にリリースしている。
そして2019年に公開された『ZOOMBIE ズーンビ ネクスト・レベル』(2019年)もまた、当たり外れの激しいアサイラム作品の中ではかなりまともな部類に位置づけられる、面白愉快なゾンビ・アニマル・パニック映画である。
というわけで今回は、誰もが予想だにしなかった『ZOOMBIE ズーンビ』の続編、『ZOOMBIE ズーンビ ネクスト・レベル』を紹介していこう。ちなみに原題はストレートに『ZOOMBIES 2』で、邦題の“ネクスト・レベル”なる副題は同時期に公開された『ジュマンジ/ネクスト・レベル』(2019年)に便乗したものだと考えられる。
麻酔薬のはずが凶暴化! 恐ろしいゾンビ・アニマルが次々誕生
多種多様な動物の保護活動を行っている自然公園の中に、数名の密猟者グループが侵入した。荒くれ者が多いメンバーの中で科学分野を担当していたジョゼルは、独自に開発したという特殊な麻酔薬を、一匹のミーアキャットに撃ち込む。ところが一体いかなることか、その麻酔薬を撃ち込まれた動物はかえって凶暴化。異常な攻撃性と肉食性を備えたゾンビ・アニマルと化して、公園内でゾンビ仲間を増やし始めるのであった。
一方、密猟者グループのメンバー数名を捕らえた警備員は、彼女らを自然公園の動物病院に一時拘束するが、一緒に連れてこられたゾンビ・ヤマアラシがたちまち暴走を開始。愛する動物たちを化け物に変えられ、怒りに打ち震える獣医グレッグ。しかしながら自然公園に外部の救援が到着するまでには時間がかかるとのことで、そうしている間にも事態は刻一刻と悪化していくばかり。
そしてゾンビ化の要因となった麻酔薬について知る者は、騒動の元凶であるジュゼルただ一人。やむを得ずグレッグは密猟者グループと協力し、ゾンビを元に戻すための解毒剤開発に取り組むこととなる。が、愚かな人類に対して、ゾンビ化した大自然の脅威たちは容赦なく牙を剥き……。というのが本作の概要である。
ファンでなくともそこそこ楽しめる、サービス精神旺盛なオススメの1本
監督は前作に引き続きグレン・ミラー。本作にはグレン・R・ミラー名義でクレジットされている。脚本はスコッティ・ミューレン。普段はキャスティングディレクターとして、数多くのアサイラム作品に関係している人物だ。彼は『ズーンビ』シリーズのほか、『シャークネード』シリーズの5作目と6作目、『キング・アーサー 英雄転生』(2017年)、『オーバーロードZ』(2018年)などで脚本を務めている。
前作に負けず劣らずの、多種多様なゾンビ・アニマルの襲撃シーンが本作の見所だ。死体の口から飛び出してくるゾンビ・ミーアキャット、体の針をダーツのごとく射出して獲物を撃ち殺すゾンビ・ヤマアラシ、シンプルに数と力で攻め立ててくるゾンビ・サイの群れ、そして狙った相手を丸呑みにするゾンビ・カバなど、“ズーンビ”の名に恥じないアイデアの多彩さはバカバカしくも面白い。
繰り返しになるが話運びはずいぶんと勢い任せで、この大惨事のそもそもの原因である密猟者グループがクライマックスでは英雄視されるなど、あれこれおかしな点を指摘していけばキリがない作品ではある。その一方で作品のテンポの良さと、コメディチックな作風にマッチしたいい加減さの食い合わせは案外悪くなく、少なくとも文句を言うほどではない。
そこはかとなく『ジュラシック・パーク』シリーズ(1993年~)めいた動物たちとの攻防や、前作を観ていればニヤリとできるラストなど、あの手この手で視聴者を楽しませようとするサービス精神にも溢れる一本。前作『ZOOMBIE ズーンビ』ファンにも、そうでない方にもオススメできる、意外な良作パニックである。
文:知的風ハット
『ZOOMBIE ズーンビ ネクスト・レベル』はCS映画専門チャンネル ムービープラスで2021年3月放送
https://www.youtube.com/watch?v=tdezcxHClrA
『ZOOMBIE ズーンビ ネクスト・レベル』
動物園に動物を派遣する保護施設公園に、密猟者が侵入。特殊な有毒物質を投与されたライオン、サイ、カバ、ワニ、可愛らしいミーアキャットまでもが突然変異で不死身の猛獣に変貌!密猟者や施設の職員を襲い始める。研究者のブルックは、動物たちを正気に戻すために解毒剤を作ろうとするが……。
制作年: | 2019 |
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監督: | |
出演: |
CS映画専門チャンネル ムービープラスで2021年3月放送