待望のMCUドラマ「ワンダヴィジョン」配信開始!
2021年1月15日(金)から、ディズニープラスで「ワンダヴィジョン」の配信がはじまりました。『アベンジャーズ』(2012年~)好きにとっては待望のMCU(マーベル・シネティック・ユニバース)最新作! そして海外ドラマ・ファンにとってもツボになる面白さを持った作品です。
現時点(1月30日)で全9話のうち第4話までリリースされていますが、このコラムでは以下の3本立てでお届けしたいと思います。
▼そもそも「ワンダヴィジョン」とは?
▼MCUを観たことのない人のための「ワンダヴィジョン」前説
▼「ワンダヴィジョン」第4話までの展開(※ややネタバレあり)
そもそも「ワンダヴィジョン」とは?
本作はMCUの一つ、つまりドラマ・シリーズですが“シネマティック”の一つなのです。
2008年の『アイアンマン』から始まり、多くのヒーローをスクリーンに登場させて『アベンジャーズ』で集約。それを弾みにさらにヒーロー世界を広げ、『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019年)という大イベントを成功させたMCU。その直後に公開された『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』(2019年)で一旦大きな区切りを迎え、これからフェーズ4という新しいステージに入ります。その内容もさることながら、注目したいのはこれから先、さらにユニークな方法で世界を広げていくということなのです。
今後は劇場用映画だけでなく、ディズニープラスで配信されるドラマもMCUのプラットフォームとして活用し、両者をリンクさせていくんですね。今までは“映画と映画”をつなげていたわけですが、これからは“映画とドラマ”もつながるのです。従って今回のドラマ「ワンダヴィジョン」は、映画『アベンジャーズ/エンドゲーム』のその後の物語になります。
なので映画『キャプテン・マーベル』(2019年)で活躍した少女モニカ・ランボーが成長した姿(テヨナ・パリスがキャスティング)が登場。映画『マイティ・ソー』2作で人気のダーシー(演じるはカット・デニングス)、映画『アントマン&ワスプ』(2018年)でいい味出してた、元シールドでFBI捜査官のジミー・ウー(ランドール・パーク)も登場します。
そしてこの「ワンダヴィジョン」は、トム・ホランド出演のスパイダーマン映画3作目(2021年12月17日公開予定)、映画『ドクター・ストレンジ イン・ザ・マルチバース・オブ・マッドネス』(原題:2022年3月25日公開予定)につながると言われています。
そもそもMCUのフェーズ4は、2020年5月公開予定の劇場用映画『ブラック・ウィドウ』から始まるハズでしたが、コロナ禍で公開が延期。2020年はMCU映画が1本も公開されないという事態になりました。そういう意味でMCUに飢えていたファンにとって、今回の配信開始は本当に嬉しい!
MCUを観たことのない人のための「ワンダヴィジョン」前説
繰り返しになりますが「ワンダヴィジョン」はMCUに属する作品なので、今までの流れを知っていた方が楽しめますが、独立したドラマとしても魅力的です。『スター・ウォーズ』シリーズ(1977年ほか)にあまり詳しくなくても「マンダロリアン」(2019年~)が楽しめるように。特に海外ドラマ好きならハマる要素があるんですね。
というのも、このドラマはなぜか「アイ・ラブ・ルーシー」(1951~1957年)や「奥様は魔女」(1964~1972年ほか)「ゆかいなブレディ家」(1969~1974年)等、往年のアメリカのシットコム(※笑い声が入るコメディ)をモチーフにしているんです。従って「奥様は魔女」等のファンなら絶対ハマるでしょう(笑)。
その一方で、なぜこんなシチュエーションなのか? が、この先の大きな伏線になると思います。とはいえ一応、MCUを知らない方のために、このドラマの物語的背景をざっと説明しておきましょう。もしご自身で確認したいという方は、以下の5作品をご覧ください。
『アベンジャーズ』(2012年)
『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』(2015年)
『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』(2016年)
『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』(2018年)
『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019年)
もちろん「ワンダヴィジョン」を観ながら同時に予習してもかまいません。ただ、手っ取り早く知りたいという方は以下参照。
(注:『アベンジャーズ』シリーズのネタバレを含みます)
――この世界に、アイアンマンを始め様々なヒーローが同時多発的に現れるようになります。やがてヒーローたちは手を組み、アベンジャーズというチームを結成。その後、多くのヒーローが参加するようになります。サイキック・パワーの使い手ワンダ・マキシモフ、そして飛行能力や分子構造を変えて変身したり壁をすり抜けることのできるスーパー人造人間ヴィジョンもアベンジャーズ入りした超人です。
実はこの2人は複雑なオリジン(誕生秘話)を持っています。ワンダはヨーロッパの小国ソコヴィア出身ですが、アベンジャーズの宿敵である悪の組織ヒドラ党の実験によってスーパーパワーを得たのです。一方、ヴィジョンもアベンジャーズに牙をむいた邪悪な機械生命体ウルトロンが作ろうとしていた究極の人造人間がベースになっています。そして2人にはある共通点がありました。ワンダの能力もヴィジョンの命も、インフィニティ・ストーンとよばれる宇宙の秘石が絡んでいることです。
インフィニティ・ストーンは全部で6つあり、その中の一つ“マインド・ストーン”がワンダに力を、そしてヴィジョンに生命と心を与えました。ヴィジョンの額に光っているのはインフィニティ・ストーンです。そして、いつしかこの2人は恋人同士になります。ワンダのサイキック・パワーは魔法っぽいので、彼女はスカーレット・ウィッチ(紅の魔女)との異名もあります。なので、このカップルは魔女と人造人間なわけです(笑)。
しかし、ここで事件が起こります。宇宙魔人サノスが現れ、すべてのインフィニティ・ストーンを集め宇宙を変えようとするのです。このサノスの暴挙を止めるべくアベンジャーズが立ち上がりますが、この戦いは人々の運命を大きく変えてしまいます。まずヴィジョンは額のインフィニティ・ストーンをサノスにもぎ取られ、“死んで”しまうのです。
サノスは手に入れたインフィニティ・ストーンの力を使って、宇宙の生命の半分を一瞬にして消してしまいました。最終的にアベンジャーズはサノスを倒し宇宙を元に戻すのですが、それに5年かかってしまった。従って5年前に消えた人がいきなり復活したため、社会は大混乱に陥ります。
……ということを頭に入れて、「ワンダヴィジョン」を楽しんでください。ここで大きな謎なのは、死んだハズのヴィジョンがなぜ生きているのか? です。それはこの先、明らかにされていくハズです。
「ワンダヴィジョン」第4話までの展開
※以下、若干のネタバレを含みます。
先ほど書いたように、この「ワンダヴィジョン」の最大の謎は「なぜヴィジョンが生きているのか?」「このシットコムの世界観はなんなのか?」です。
なんとなくわかってきたのは、この物語の中には「シットコムの世界」と「現実の世界」があり、ワンダとヴィジョンは「シットコムの世界」に住んでいて、それを「現実の世界」側の人間・組織が監視している、という構造です。
『マトリックス』(1999年)を思い出していただきたいんですが、僕らが「現実」と思っているこの世界は、実はみんなが見ている(見させられている)「バーチャル世界」であり、それとは異なる「本当の現実」がある、という設定でしたよね。
つまり、「シットコムの世界」=『マトリックス』における「バーチャル世界」と考えるのがいいかと思います。それが見えてくるのが第3話のラストであり、第4話でハッキリします。
まず「シットコムの世界」にいるワンダとヴィジョンをモニターしている組織は、S.W.O.R.D(ソード)でした。
MCUではS.H.I.E.L.D.(シールド)という組織が有名ですが、シールド=盾に対して、ソード=剣という組織がマーベル・コミックには存在します。シールドが世界の平和を守る組織なら、ソードは宇宙の脅威から地球を守る。つまりシールドが科学特捜隊なら、ソードはウルトラ警備隊と考えてください。
このソードが、本作でMCUデビューです。ソードというからには“剣”をイメージしたロゴですが、このロゴはすでに以下の場面で登場していました。
第1話:ワンダとヴィジョンの世界を監視している組織のモニター
第2話:ワンダが拾う(なぜかカラーの)ヘリコプターの模型
第2話:マンホールから出てくる養蜂の服を着た謎の男の背中
第3話:黒人女性のジェラルディンのペンダントのデザイン部分
第3話:ジェラルディンがワンダの力によって「シットコムの世界」から弾き飛ばされ「現実の世界」に戻った時、彼女を囲む武装チームの車の扉(この時、ジェラルディンの体が赤い光につつまれているのはワンダの力が作用したから)
これらはソードが介在していることの伏線だったのです。第4話で、ジェラルディンはソードのエージェント、モニカ・ランボーだったことが明かされます。
ちなみにこの第4話では、モニカも“サノスによって消されたが、5年を経て復活した”人物であり、彼女の母マリア・ランボーがソードを立ち上げたことが語られます。そしてワンダがヴィジョンに最後の方で言うセリフや、モニカのラストのセリフから、この「シットコムの世界」はワンダが作り上げた世界だということが示唆されるのです。
となると、こういう筋書きが見えてきます。――ワンダは死んだヴィジョンのことをあきらめきれない。そこでヴィジョンが生きていて自分と幸せに暮らしている、という理想の世界=“もう一つの現実”をスーパーパワーを使って作り上げた。そして、それが「シットコムの世界」という形で実現したのではないか?
さて、ここでもう一つ、この2人に関わっていると思われる組織があります。悪のヒドラ党です。
ヒドラの影あり? 劇中の意味深なCMに隠された数々の謎
劇中、「シットコムの世界」で流れるCMのいくつかがヒドラという企業の製品という設定になっています。まず第2話のヒドラ印の腕時計が「ストラッカー」という名前であることに注目。というのも、映画『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』によればワンダを超人にしたのはヒドラの幹部ストラッカーですから。
第3話のCMは「ヒドラ・ソーク」(ソープではなくソーク。この場合はお風呂用の溶液という意味です)。この商品のキャッチコピーが「Find The Goddess Within(内なる女神を見つけなさい)」です。これはストラッカーがワンダの中に眠っていたスーパーパワーを覚醒させたことを示唆している?
確かに第3話、第4話のワンダって、ちょっとダークというかヴィランっぽさがありますよね? もしかするとヒドラ党がそそのかして、この世界をワンダに作らせた? あと気になるのが、この「シットコムの世界」の住人。どうやら“この町に元々住んでいた人たちが、ワンダの魔力によって「シットコムの世界」の住人にされた”ようです。それがソードの調査によって判明するシーンがありますが、ここで注目したいのは、なにかとワンダに絡んでくるアグネスとドッティの身元だけわからないままになっているのです! ということは、この2人も何か“訳あり”の存在?
というわけで(多少の伏線はあったにせよ)第1~2話の楽しさから、一気に衝撃の展開を迎えるのが第3話のラスト~第4話です。また、コミックでもワンダとヴィジョンの間には双子の子が生まれ、彼らはヤング・アベンジャーズというチームのヒーローになりますから、このドラマでもそうなる?? この先いよいよMCUらしい展開になること必至!? 期待しましょう。
と言いつつ、こんなことも考えてしまう。確かにこれからのストーリーを想像するとワクワクしますが、それを横に置いて、この3話までの流れはストレートにシットコムとして楽しい。ワンダとヴィジョンのかけ合いが素晴らしく、シットコムの面白さを相当研究したんだと思います。ワンダ役のエリザベス・オルセン、ヴィジョン役のポール・ベタニーがキュートでチャーミング。このままMCUの世界にならないで、シットコムのままでもいいんじゃないかと思いました(笑)。
「ワンダヴィジョン」は一筋縄ではいかない、けれどさすがMCU! と唸らせる、まさにスーパーエンターテインメントです!!
文:杉山すぴ豊
「ワンダヴィジョン」はディズニープラスで独占配信中
「ワンダヴィジョン」
とある郊外の街に引っ越してきたのは、長い恋愛の末、晴れて結婚したスカーレット・ウィッチことワンダ・マキシモフとヴィジョン。60年代のアメリカを想起させるポップでお洒落な洋服に身を包んだ2人は、夢にまでみた結婚生活を手に入れ、幸せな日々を送っていた。
『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』のヴィジョンの死……しかし、『エンドゲーム』後の世界でヴィジョンはワンダと共に幸せに暮らしている。すべてが見かけ通りとは限らない――2人は徐々に自分たちの目に見えている全てが“真実ではない”のではと疑い始める。
制作年: | 2020 |
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監督: | |
出演: |