賢い介助犬……が、狂犬になって襲いかかる!(涙)
人類は映画の中で様々な生物と戦ってきた。宇宙人やゾンビ、サメ、ワニ、UMAなどなど。しかし『VS 狂犬』の対戦相手はそのタイトルどおり犬、つまり“わんこ”である。しかも超大型犬とか野犬とかではなく、なんと介助犬。体の不自由な飼い主に代わって身の周りのことを色々と手伝ってくれる頼もしい存在……が、いきなり恐怖の犬と化すなんて想像しただけで怖すぎやろ!
物語は、父(ミゲル・アンヘル・ジュネール)と少女エレナ(パウラ・デル・リオ)が久しぶりに我が家へ帰って来たところから始まる。エレナは交通事故により四肢麻痺となり、電動車椅子に乗っている。そんな父娘と介助犬アトスとで新しい生活が始まった矢先、事件が起こる。アトスが謎のウイルスに感染してしまうのだ。
狂犬に襲われる主人公を見て、幼き日の“犬の恐怖”の記憶が蘇る
僕はてっきりアトスが狂犬病になって襲いかかってくるんだと思って観てましたが、アトスはコウモリに噛まれたことで謎のウイルスに感染し、どんどん凶暴化していく(ちなみにコウモリから狂犬病が伝染った例もあるそうな)。そして15センチ程度しか腕を動かせないエレナは、アトスから逃れるべく密室状態の自宅から脱出を試みる……という展開。しかし、ダクトを通ったり窓を破壊したりと、神出鬼没でエレナに襲いかかるアトス。なんだったら飼ってたフェレットまで感染して襲いかかってくる!
エレナが泣き叫び狂犬アトスから逃げる様子を見て、鮮明に思い出したことがある。あれは小学校低学年の頃、公園に行こうと歩いてたら、散歩中に逃げたらしき2匹の犬(それもアトスと同じシェパード犬だった)に追いかけられて、必死に逃げたことだ。そのときは高所に登って難を逃れたが、後ろを追いかけてきた飼い主にめちゃくちゃキレたことを覚えている。小学生にして親以外の大人にあれほど怒ったのは初めてだった。エレナと同じように、泣きながら「しっかり紐を持ってくださいよぉ!」とか言ったはずだ。
狂犬ホラーを見て、ウチの「西宮の狂犬」の姿が頭に浮かんだ
本作を見て、忘れていた犬への恐怖というか、犬は怒らせたらマジで怖いよなぁ……というバカっぽい感想が頭をよぎったけど、それだけの映画ではない。どうやら父と娘に深い確執があり、それ以外のことや身体のことでも、エレナはとても傷ついている。そこから彼女がどう成長し、どう行動に起こすのか? というのが見どころの一つ。正直、間延びするシーンもありますが、その“間”こそ、腕しか動かせないエレナの恐怖体感なのだと思って見れば恐怖が増すはず!
余談ですが、『VS 狂犬』のタイトル書体を見て、ウチ(KING BROTHERS)の狂犬が頭に浮かんだ。「西宮の狂犬」と呼ばれるマーヤは、一体どうしてあんな狂犬になったんだろうか。興味がある方は是非、ライブで彼の狂犬ぶりを体感して欲しい! マーヤからは逃げないでね! 早く普通のライブができますように……。
文:ゾニー(KING BROTHERS)
『VS 狂犬』は2020年10月31日(土)より「シッチェス映画祭ファンタスティック・セレクション2020」で上映
『VS 狂犬』
交通事故で四肢麻痺になった少女エレナ。介護犬のアトスと林の中の一軒家で暮らすことになるが、アトスが謎のウイルスに感染してしまった! 片方の腕しか動かせず自動車椅子に頼るしかないエレナに、凶暴化した愛犬が襲いかかる。
制作年: | 2019 |
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監督: | |
出演: |
2020年10月31日(土)より「シッチェス映画祭ファンタスティック・セレクション2020」で上映