旬の味覚が盛りだくさんの秋! 美味しいものへの欲求が爆発し、ただでさえ在宅勤務で運動不足なのに、ついつい過食気味……なんてお悩みの方に、観れば自然と食欲が減退するであろう“虫”映画をご紹介(虫食大好き! という方を除く)。伝説の名作から量産されるB級、リアルすぎるドキュメンタリーまでバラエティに富んだ虫映画の世界へようこそ!
ゴカイの海が人間を飲み込む! 恐怖の蠕動(ぜんどう)運動パニック『スクワーム』
まずご紹介したいのは、数あるパニック映画の中でも挑戦的な題材に挑んだ記念碑的作品『スクワーム』(1976年)だ。なにしろ無数のゴカイ(釣り餌の定番として知られるミミズみたいなアレ)が人間を襲う……というパニック~ホラー映画としては猛烈に地味な内容でありながら、それを人類の脅威として描いてみせたところが本作のミソだ。
1975年、米ジョージア州沿岸で発生した激しい雷雨によって送電線が切断され、地中に数十万ボルトの電流が流れた……というテロップから始まる本作。その後に起こった恐ろしい出来事を紹介するのがこの映画ですよ、という親切設計で、キモいゴカイの映像におぞましい悲鳴を乗せるという、陳腐ながらグッとくるタイトルコールへと続く。
主な登場人物は、物語の舞台となるド田舎にやってきたシティボーイのミック、地元民の少女ジェリーとその家族、彼女のご近所さんでゴカイ屋のロジャー(演技は大根だが生命力はすごい)、ミックを怪しむ保安官などなど。よそ者に対して異様に冷たい“田舎あるある”を序盤に盛り込みつつ、そのあたりは物語にあまり関わってこないという、実にシンプルな構成だ。
劇中の「このあたりのゴカイは少し変わっていて、人間を噛む」という説明的な前フリどおり、土中だけでなく蛇口などからも続々とわき出てくる無数のゴカイに襲われることになる。後に『狼男アメリカン』(1981年)で第54回アカデミー賞メイクアップ賞を受賞し、マイケル・ジャクソン「スリラー」のミュージックビデオでも知られるリック・ベイカーによる、スプラッタ系ホラーよりもピンポイントで生理的嫌悪感を誘う秀逸な特殊メイクは一見の価値あり。
動物パニック映画好きの間で語り継がれる伝説のゴカイ・パニック『スクワーム』。ぜひブルーレイ/DVDなどを手元に置いて何度も観返したい逸品だ。
『ポリアカ』メンバー再集結! 軽~く観られる快作B級“vsクモ”アクション『ラバランチュラ 全員出動!』
虫嫌いの中には「いつの間にか部屋の中で大量発生しているクモが苦手」という人も多いだろう。益虫なので殺しちゃダメなんて言われるクモだが、実際『ラバランチュラ 全員出動!』(2015年)に登場する巨大クモに比べれば可愛いものである。
ただ、残念ながら(?)『ラバランチュラ』の見所は昆虫というより「全員出動!」の部分にある。そう、本作はあの『ポリスアカデミー』シリーズ(1984年~)の主人公マホーニーことスティーヴ・グッテンバーグを筆頭に、効果音人間ジョーンズことマイケル・ウィンスロー、内気な狂人フックスことマリオン・ラムジー、美人教官デビーことレスリー・イースターブルックが出演! というのが最大のウリなのだ。
いわゆる同窓会映画というやつだが、主人公コルトンは過去の栄光が忘れられない俳優というメタな設定で、冒頭では巨大ゴキブリ映画の撮影中。そこから間髪入れずに火山が爆発し、謎の巨大クモが人間を襲いはじめる。
なにしろメイン登場人物がお年寄りばかりなのでアクションの迫力はイマイチだが、そのぶんチャラい若者がバンバン殺されるのでバランスは悪くない。B級映画ならではのテンポの良さでストレスを感じさせず、クモである必然性すらないモンスター・クモの戦闘能力の高さは呆れるレベル……。
主人公が元スター俳優というメタ設定に加えて、『シャークネード』シリーズ(2013~2018年)の“ビバヒルなあの人”もカメオ出演したりと、とことん軽~く観られるディザスター・モンスター・パニック・コメディな本作。
虫映画としての見どころは極小だが、リアルな虫はムリ! なんて人には(超ヒマな週末の午後なんかに)ぜひ観賞をオススメしたい快作だ。なお製作はアサイラムと並ぶB級映画工房、シネテル・フィルムズ。
体液飛び散るリアルな虫バトルが観たいならコレ一択!『劇場版 虫皇帝』
とにかくリアルな虫を観せろ! という方には、虫同士のガチンコ・バトルをじっくり観せてくれるドキュメンタリー(?)『劇場版 虫皇帝』(2009年)をどうぞ。当時この作品が劇場で公開されたという事実に驚かされるが、いまやYouTubeなどでは定番動画になっている実録VSモノの黎明期に登場した、謎多き作品である。
もちろん本作の見所は、透明のアクリルケースに放り込まれた昆虫たちの1対1のバトル。世界中に生息するパンチの効いた昆虫たちは禍々しいルックスの持ち主だが、ケンカの強さは見た目じゃない、ということを教えてくれる存在でもある。ツノやハサミ、毒といった武器の有無や身体のサイズ、特性の相性などで勝敗が決るあたりはポケモン的な要素もあり、迫真の勝負が意外な結果に終わるなど、バトルものが好きならば燃える要素が満載だ。
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ただしガチンコだけに手足が欠損したり体液が飛び散ったりと、ここに動画を載せることすら憚るグロさなので、内容が気になった方はぜひ配信やソフトで(なるべく食事の前後から時間をおいて)観賞しよう。
『ラバランチュラ 全員出動!』はAmazon Prime Videoほか配信中