映画に愛される女優・松本穂香はどんな映画を愛しているのか? インタビュー第3弾では、さらに彼女の原点となる映画について深掘りする。松本穂香にとって、ズバリ「映画」とは?
「グザヴィエ・ドランさんからは、すごく“映画”を感じる」
―好きな映画監督を教えて下さい。
すべての作品を観ていないんですが、グザヴィエ・ドランさんとか。お勧めされて観てみたら、まだ全然若いのに、あんなのができちゃうんだって。ご自身も出演されたりしているので、どういう現場なんだろう? どういう作り方をしているんだろう? って、すごく思いました。出演者も自由な感じというか、セリフっぽくなくて、演じてるように見えない感じで。重いはずのストーリーでも、ワクワクする瞬間があったりして、すごく“映画”を感じる監督さんだなと思います。楽しんで作ってるんだろうなって感じがする。画角が観てる間に変わったりとか、画面が広がったりとか……。
―『Mommy/マミー』(2014年)ですね。
―では、海外の映画に出演したいという思いは?
アダム・ドライヴァーに会いたいかな(笑)。
―アダム出演作で一番良かったのは?
アダムは『GIRLS/ガールズ』(2012~2017年)というドラマで初めて観ました。ちょっとクセのある、どこか気持ちの悪い役なんですが、なぜか最後のほうにはすごく好きになっていて、そこが魅力だなと。彼が画面にいるだけで、なにかすごく伝わってくるものがあるなと、後に『パターソン』(2016年)を観て思いました。
―『パターソン』のアダム、よかったですよね。
すごく好きです。観ていたら少し眠くなる、その感じがいいなって。パターソンっていう人がいいのかもしれないです。キャラクターがすごく魅力的だったなと。アダムの笑顔がすごく素敵で……わぁ! って思いました。
―気に入った作品は何回も観る感じですか?
ずっと好きかもしれないと思ったら、何回も観ます。『パターソン』はまた観るんだろうなと思う作品ですね。
―過去に2回以上観た映画は他にありますか?
『耳をすませば』(1995年)と、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(1985年)と『ヘアスプレー』(2007年)です。
―一見バラバラというか、あまり共通した傾向が見えないですね。
特にこだわりとかはないですね。でも何らかの形で残っている、どこかに刺さっているんだと思います。
「自分の出演作が誰かにとっての“何度も観たい映画”になったら、すごいことだなって思います」
―何回も繰り返し観たくなったり心に引っかかったりする、やはりそこが映画の魅力でしょうか。
はい。なので、自分が出演した作品も誰かにとってそうなるのかな、なったらすごいことだなって思ったりしますね。
―それは最大の夢というか、すごいことですよね。誰かの心に、人生に入ってしまうという。
「もう7回観ました」と言ってくださったり。
―実際にそう言われたことがある!?
はい、舞台挨拶の質疑応答のときに。7回!? 何がこの人にとって……私でもそんなには観ないぞ、と思いながら(笑)。
―でもそれは、その人にとっての『ヘアスプレー』であり『バック・トゥ・ザ・フューチャー』だったということですよね。
何かしらあるんだろうなと思います、刺さるものが。
―可能性で言えば、全部あるんじゃないでしょうか。それぞれ全く違う人生と個性、感じ方を持っているから、どこでどう引っかかるとか分からないですよね。
タイミングもすごくあるなと思いますね。調子が良いか悪いかだけでも全然違いますし、寝不足かどうかだけでも全然違う。
「作る側は一生懸命だけど、それを楽しみながらじゃないと、きっと伝わるものも伝わらない」
―だからこその“縁”ですよね、映画との。中川龍太郎監督の舞台挨拶を拝見した際に、監督がおっしゃった「アニメと実写で何が違うかと言ったら、“縁”が映ってることだ」という言葉がすごく印象に残っていて。
ああ~、わかります!
―アニメって作者の中から生まれた世界をずっと描いているので、偶然はほぼ入ってこない。だけど、実写は偶然の連続で。例えば中川監督と松本さんがたまたまどこかで知り合って、「あ、じゃあ出てもらおう」って監督が思うとか。あるいは映画を撮っている、まさにそのときに生まれた何かとか。そういう自分を超えていくものという意味で「縁が入っているから実写はいいんです。やめられません」と。確かにそうだと思いました。
中川さんとも、すごい“縁”でした。仲野太賀さんと他のドラマで共演させていただいて、そのあと太賀さんが中川さんを紹介してくださって。お仕事の場ではなくて、普通にお二人が飲んでいるところに私がお邪魔してっていう……そこからでしたね。
モスクワ国際映画祭
— 松本穂香 (@matsuhonon) April 25, 2019
『わたしは光をにぎっている』
無事上映が終わりまして、素敵な感想をたくさん頂きました。
とてもあたたかい映画です。早く皆さんに観てもらいたい気持ちでいっぱいです。
📷中川監督と︎✨#わたしは光をにぎっている#モスクワ国際映画祭 pic.twitter.com/rKlNErzIB5
―それが初対面だったんですか?
はい、それが初対面で。そこから映画に繋がったので、中川さんもきっと“縁”っていうのをすごく意識して大事にされてるんだろうなって思いました。
―やっぱり映画を作り続けるのも出続けていくのも、縁をどう作っていくかっていうのも大きいと思います。そういう意味で、人生と繋がりますよね。
そうですね。
―では最後に、ざっくりとした質問で恐縮ですが、ご自身にとって“映画”とは、どういうものでしょうか。
私にとっては、どういう立場から観たらいいのか分からないですが、“娯楽”なんだなって思っています。作る側は一生懸命作るけど、それを楽しみながらじゃないと、きっと伝わるものも伝わらないのかなって。何かを表現するのは苦しいことでもあるんですが、観る側の方々には何も考えずに楽しんでもらえることが、それで皆さんの心が少しでも豊かになるのがいいんだろうなって、そういう気持ちですね。
―なるほど。
自粛期間を通して、より強く思いましたね、娯楽なんだなっていうことを。エンターテイメントだなぁって。
―最終的には、観る人が受け取るものですしね。
そんなに深い意味とかは考えてないですね、今は。いい意味で“娯楽”です。
インタビュー:稲田 浩(ライスプレス代表)
写真:嶌村 吉祥丸
撮影協力:JINNAN HOUSE
『みをつくし料理帖』は2020年10月16日(金)より全国公開
『みをつくし料理帖』
享和二年の大坂。暮らし向きは違えども8歳の澪と野江は、まるで姉妹のように仲の良い幼なじみだった。しかしそんな二人が暮らす大坂を大洪水が襲い、二人の仲は無残にも引き裂かれてしまう。それから10年後。大洪水で両親を亡くした澪は引き取られ、江戸の神田にある蕎麦処「つる家」で女料理人に。野江は吉原にある遊郭に買い受けられ、幻の花魁・あさひ太夫と名乗っていた。澪が苦心して生み出した料理が、別々の人生を歩む二人を再び引き寄せていく。
制作年: | 2020 |
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2020年10月16日(金)より全国公開
JINNAN HOUSE
渋谷と原宿の間、緑に囲まれた裏道に 位置するJINNAN HOUSE 。茶食堂「SAKUU 茶空」ギャラリー「HAUS STUDIO」フードトラック「RiCE TRUCK」企画制作会社「KIRINZI inc.」出版社「RICE PRESS INC.」 飲食・カルチャー・ビジネスが並立するミニマルな複合施設。