巧妙な“盗みと詐欺”を描き「ゴージャスな見世物」に仕上げた2作
【アッチ(実写)もコッチ(アニメ)も】
「ゴージャス」というのはそれだけで見世物になる。美男美女という存在も「ゴージャス」だし、ふんだんに火薬を使ったスペクタクルも「ゴージャス」だ。ハリウッド映画なんて、それを売り物に延々と世界中で商売をしている。観客はそのゴージャスさに一時酔うことで、浮世の憂さを忘れることができる。
様々なゴージャスの形があるけれども「盗み」というのも描き方によっては十分ゴージャスの対象になる。巧妙な作戦と手際の良いオペレーション、そしてピンチを切り抜ける機転。「盗み」はその技を描くことに徹することで「ゴージャスな見世物」として成立するのだ。
見事な連携プレーによる“盗み”を描いた人気シリーズ最新作『オーシャンズ8』
『オーシャンズ8』(2018年)は、そんな「盗み」をゴージャスな見世物として描いた作品だ。本作は犯罪スペシャリストのグループ「オーシャンズ」の活躍を描いたシリーズの最新作で、第3作まで主人公だったダニー・オーシャンに代わって、今回は妹のデビー・オーシャンが“ヤマ”を仕掛けることになる。
デビーが狙うのは、カルティエの地下金庫に保管されているダイヤの首飾り「トゥーサン」。その価格はなんと1億5,000万ドル。そして、トゥーサンを盗み出すための舞台に選ばれたのが、ニューヨークで開催される世界最大規模のファッションの祭典メットガラ。メットガラに出席する女優ダフネ・クルーガーを利用してトゥーサンを金庫から出させ、それを奪ってしまおうというのだ。
ファッションの祭典が舞台ということで、名だたるブランドのドレスが登場するし、登場するジュエリーのレプリカはすべてカルティエが制作。これだけでも十分視覚的にゴージャスなのだが、ここにデビーを中心とする8人の女たちの大胆で巧妙な「盗み」のゴージャズさが加わる。お酒でも飲みながらほろ酔いで、このゴージャスな世界と戯れるのが『オーシャンズ8』の正しい楽しみ方といえる。
世界を舞台に傲慢なセレブたちをカモる“信用詐欺”アニメ『GREAT PRETENDER』
一方、アニメ『GREAT PRETENDER (グレートプリテンダー)』(2020年)は「信用詐欺」を題材にした作品。信用詐欺とは、相手と関係性を築いて信用を得たところで詐欺を行うというタイプの犯罪。『GREAT PRETENDER』では日本人の詐欺師・エダマメ(枝村真人)を含めた4人を中心に詐欺師が集まって、でかい“ヤマ”を仕掛ける。こちらもまた間違いなくゴージャスな気分が味わえる作品だ。
詐欺のカモになるのは、ハリウッドの裏社会を牛耳るマフィアのボス、エアレースを主催する産油国の王子、評論家としても知られた絵画のコレクター。この一流のセレブの顔をしたカモの面々が、「欲望」というセキュリティーホールを突かれて、まんまとハメられてしまう様子は、まさに痛快。
この「信用詐欺」を描く時もまた、巧妙な作戦と手際の良いオペレーション、そしてピンチを切り抜ける機転が大きなポイントなのは言うまでもない。そして、その痛快な詐欺の技の一部始終が、1980年代のイラストのような彩度の高い画面で描かれており、飛び交う札束の金額以上にゴージャス感を醸し出している。
「犯罪」はフィクションの中でしか楽しむことができない。だからこそ観客にとっては、それが最高にゴージャスなエンターテインメントになるのだ。
文:藤津亮太
『オーシャンズ8』はCS映画専門チャンネル ムービープラスで2020年8月放送
『GREAT PRETENDER (グレートプリテンダー)』はNetflixで配信中