“普通”ってなに？ マジメすぎた高校生活を一晩でリベンジ！『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』

「あのとき、こうしてればな～」って思うことありませんか？ 僕はあります、それもまあまあな頻度で。

普段の生活もそういう瞬間が多くて、例えばマックに入ってダブルチーズバーガーを頼んだあとに「やっぱりビッグマックが良かった」みたいな些細なことから、学生時代に言葉の意味の取り違いでぎくしゃくしてしまい今でも連絡してないあいつのこととか。でも、後悔とはちょっと違う。

そうなったことも必然だったな、なんて過ぎてみればその程度のことだったりしますよね。「昔はよかったよだなんて、よかったことないね」という名パンチラインもあるくらいですから。

「私もイェール大に行く。勉強以外も楽しんでただけ」

勉強一筋で名門イェール大学の進路を勝ち取った生徒会長・モリー（ビーニー・フェルドスタイン）が、バカだと見下していたクラスメイトたちにそう告げられたのは卒業前日。打ちひしがれたモリーは親友のエイミー（ケイトリン・デヴァー）と共に高校生活を取り戻すべく一大決心し、ハイスクールで一番のチャラ男であるニック（メイソン・グッディング）主催の卒業パーティを目指す。そんな、たった一晩の話。

『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』© 2019 ANNAPURNA PICTURES, LLC. All Rights Reserved.

この映画にはモリーとエイミーを含め、“普通”を装うキャラクターがいない。金持ちで世間知らずだけど繊細な男の子、ボーイッシュな格好のガールスケーター、ジェンダーに悩んでるけどクラスでは斜に構えた女生徒、ニッチな演劇にいそしむ二人組、その他いろいろ……。

『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』© 2019 ANNAPURNA PICTURES, LLC. All Rights Reserved.

「こうあるべき」なんて説教くさい言葉もほとんど出てこない。モリーやエイミーもクラスメイトをバカにすることはあれど、あなたはあなたたちの世界の中で幸せに生きていてね、と皮肉りつつも相手を肯定している。

『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』© 2019 ANNAPURNA PICTURES, LLC. All Rights Reserved.

チューニングが狂ってることに自覚的になって、そんな自分を許してあげる

そもそも“普通”ってなに？ もはやこんな世の中では、都合の良いように相手をコントロールしたい人たちが口にする言葉だろう。だからこそオリヴィア・ワイルド監督いいじゃん、もっとやれ！ って感じ。だって誰しも少しづつチューニングが狂ってるんだから。

『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』© 2019 ANNAPURNA PICTURES, LLC. All Rights Reserved.

まず狂ってることに自覚的になって、そんな自分を許してあげる。わがままに生きながら、周りの人も同じように許していこうよ、チューニングがズレててもグルーヴあげていこうよってことに、モリーとエイミーは一晩かけて少しずつ気づいていく。もちろん正さなきゃいけない場面のときは、ちゃんと正しながら。

『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』© 2019 ANNAPURNA PICTURES, LLC. All Rights Reserved.

なにより2人は最初のシーンから別々のダンスを踊っている。それがもう答えじゃないでしょうか。

『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』© 2019 ANNAPURNA PICTURES, LLC. All Rights Reserved.

文：巽啓伍（never young beach）

『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』は2020年8月21日（金）よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほかロードショー