コロナ禍によるステイホーム期間、配信サイトで映画やドラマシリーズを見まくったという人は多いんじゃないかと思う。その中で韓国ドラマ『梨泰院クラス』(2020年)にハマったという人の割合もなかなかに多いはず。主人公パク・セロイのキャラクター、抜群でしたね。
そんなアナタにおすすめしたいのが『ディヴァイン・フューリー/使者』。パク・セロイを演じたパク・ソジュンの主演映画だ。
『梨泰院クラス』のパク・ソジュンが演じるのは格闘家×エクソシスト!?
今回の役柄は格闘家。MMAファイター(総合格闘家)だ。試合の場面は会場の雰囲気からしてかなりリアル。レフェリーの役を演じているのは、実際のMMAレフェリーだったりする。いや実はMMAは本筋とは関係ないんだけど、それでここまできっちりやるというところに、本作の気合いを感じるのである。
セロイ演じる主人公ヨンフのニックネームは“死神”。彼は本当に神を信じていない。憎んでさえいる。幼い頃に警官だった父を亡くしたからだ。なぜ神は信じる者を助けないのか? 彼の感情は、いわば“愛憎”だ。
そんな男に異変が起きる。右手の掌に傷ができ、体調が激変。占い師の導きで出会ったアン神父は、それを磔にされたキリストと同じ“聖痕”だと言う。
アン神父は、悪魔払いのためにバチカンから帰国したエクソシスト。「闇の司教」によって世に蔓延る悪魔と闘っており、ヨンフもその闘いに身を投じることになる。
絶好調パク・ソジュンを支えるのは『シルミド』の名優アン・ソンギ!
設定としては“エクソシストもの”だ。しかしホラー、スリラーというだけでなくアクションの要素も強い。何しろ主人公は格闘家、腕っぷしにも自信があるのだ。そんな男を支えるアン神父が素晴らしい。演じるは『シルミド/SILMIDO』(2003年)のアン・ソンギ。キム・ジュファン監督によると、脚本段階からアン・ソンギを念頭に置いていたという。厳格さとユーモア、信念と慈愛。このメンターがいてこそ、主人公の成長にも説得力が出る。
パク・ソジュンのアクションもかなり見応えがある。クライマックスのアクションで繰り出すパンチは非常にシャープで、相手に最短距離で届く。映画の格闘シーンでよくある、横から振り回すようなパンチではないのだ。速く、コンパクトなパンチ。すべてのパンチがそうだというわけではないのだが、このパンチの“軌道”はラストバトルでも重要になってくるから注目してほしい。
劇中の会話でもサラッと触れられるが、ヨンフはもともとボクシングをやっており、そこからMMAに転向したという設定だ。だからパンチが速いしうまい。“悪魔払いアクション”が荒唐無稽にならない所以がここにある。キム・ジュファン監督とパク・ソジュンは『ミッドナイト・ランナー』(2017年)に続いてのコンビ。次もぜひ、と期待したくなる。
文:橋本宗洋