ポール・ウォーカーとスラム街でパルクール!
大人気シリーズ最新作『ワイルド・スピード/ジェットブレイク』が公開延期(2021年4月全米公開予定)となり、『ワイスピ』ロスに陥っている人も少なくないだろう。そんな皆さんにお盆にこそ観ていただきたい作品が、ヴィン・ディーゼルと並んで『ワイスピ』シリーズの顔だった、故ポール・ウォーカー主演作『フルスロットル』(2014年)。あのリュック・ベッソンが脚本を手がけた、『ワイスピ』要素も盛りだくさんなスカッと爽快パルクール・アクションであり、2013年に亡くなったウォーカーの最期の主演作だ。
『フルスロットル』の舞台は現代の米デトロイト……なのだが、警察機能の消滅によって犯罪の巣窟となり、高い壁で外界から隔絶された“ブリック・マンション”をメインに物語が進んでいくという、まるでマイルドな『ニューヨーク1997』(1981年)のような世界観。ウォーカー演じる潜入捜査官のダミアンは、ブリック・マンションの首領であり父の仇でもあるトレメインが強奪した中性子爆弾の使用を阻止するべく、危険な無法地帯に乗り込むことになる。
本作はベッソン脚本のアクション映画『アルティメット』(2004年)のハリウッドリメイクであり、演出のキモとなる“パルクール”のパイオニアとして知られるダヴィッド・ベルは両作に出演。本作で演じるのは、ブリック・マンションで育ちながらも強い正義感を持つリノで、その驚異的な身体能力と地の利を活かしてダミアンと共闘することになる。正直、見どころといえばこの2人が巻き起こすドタバタがほとんどなのだが、まるで香港の九龍城砦のようにゴチャゴチャしたスラムの中で、ムキムキの男たちがアクロバティックに暴れまわる様子は、それだけで充分に楽しめてしまうのであった。
『ワイスピ』要素たっぷりの凸凹バディ展開に胸アツ! P・ウォーカーよ永遠に……
ファンにとっては『ワイスピ』要素も嬉しいところ。ターゲットの犯罪者が乗った車にしがみついて大捕物を繰り広げたり、大型のバンでド派手なカーチェイスを繰り広げたりと、クルマの登場頻度は少なくない。そこにパルクール要素が絡むため、ありがちなようで非常にフレッシュなカーアクションを堪能できる。最初は騙し合っていたダミアンとリノが次第に理解を深めあっていく様子も微笑ましく、そんな凸凹バディもの展開も『ワイスピ』を彷彿させ、思わずしんみりしてしまう。
ギャング団の首領トレメインを演じるのはウータン・クランのRZAで、相変わらずの大根演技が微笑ましい。自身の監督作以外ではチョイ役ばかりだが、本作にはリック・ロスみたいな部下を従えて終始がっつり登場し、一本筋の通った意識の高い悪人を好演している。ラストの展開にもしっかり絡んでくるので、ヒップホップ好きは要注目だろう。また、このテの潜入アクションではお約束の“怪力無双なやられ役”や、腹黒い女性キャラ、囚われの恋人、意外な黒幕などなど、安心して“ながら観”できる鉄板展開も嬉しいところだ。
6年前の作品ではあるが、『ワイスピ』ファンとしては元気なウォーカーの姿を観るだけで思わず涙腺が緩んでしまうはず。もし存命だったらどんな活躍を見せてくれていただろうか……と天国のウォーカーに想いを馳せつつ、彼の遺作をシンプルに楽しんでいただきたい。
『フルスロットル』はNetflixほか配信中
『フルスロットル』
暴力とドラッグがはびこり、高さ12メートルの壁で隔離されたデトロイトの一角。その地を仕切るマフィアの捜査にあたる潜入捜査官ダミアンは、彼らが中性子爆弾を奪い、起動させたという情報を得る。タイムリミットはわずか10時間。人質は300万人のデトロイト市民。
ダミアンは、マフィアに恋人を誘拐された驚異の身体能力を持つ男リノと手を組み、命がけで危険なミッションに挑む。その裏に巨大な陰謀が隠されている事も知らずに……
制作年: | 2014 |
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監督: | |
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