いまのうちに観て! デ・パルマ監督の代表作『アンタッチャブル』
巧みに再現された1930年代シカゴの街、随所に挿入される大胆なカメラワーク、ジョルジオ・アルマーニが手がけたクールな衣装、そして巨匠エンニオ・モリコーネの手がけた重厚な音楽……。ブライアン・デ・パルマ監督による『アンタッチャブル』(1987年)は、どこを切り取っても見どころしかない映画史に残る名作だ。
本作は禁酒法時代の米シカゴを舞台に、汚職にまみれた同市警に財務省のエリオット・ネスが派遣されてくるところから始まる。禁酒法(その名の通りアルコールの製造や販売を厳しく取り締まった法律)によって横行した10億ドル規模の闇市場を牛耳っていたのは、悪名高きギャングのアル・カポネだ。赴任早々に酒の密輸・密造を取り締まろうと張り切るネスだったが、すでに警察はギャングに買収されていて使いものにならなかった。
そこでネスは、偶然出会った高潔な老警察官マローン(ショーン・コネリー)に協力を求め、銃の名手で気の強い新人警官ストーン(アンディ・ガルシア)らを特捜部のメンバーとしてスカウト。経験豊富なマローンの嗅覚と過激な捜査によって密造所や取引を摘発するが、それはギャングとの血で血を洗う抗争の始まりを意味していた……。
新人コスナーと低迷するコネリーを救った好キャスティング
公開当時は新人同然だったケヴィン・コスナーが演じたエリオット・ネスは実在の人物で、財務省酒類取締局の捜査官。本作は彼の自伝をベースにしているものの、そちらはショボい事実を捻じ曲げて過剰にヒロイックに描いているそうで、調べると夢が壊れるのでオススメしない。
ともあれ、本作のおかげでコスナーやガルシアはハリウッドスターの座を駆け上がり、さらにジェームズ・ボンド役のイメージからなかなか抜け出せなかったショーン・コネリーのキャリアをも開放(第60回アカデミー賞で助演男優賞を獲得)。そこに前髪を抜いてまでカポネになりきったロバート・デ・ニーロが加わるという、結果オーライだったとはいえ本作が異常な熱量を放っている理由がよく分かる好キャスティングである。
また、当時のシカゴを想わせるロケーションも見逃せない。カポネの残虐性を印象づける冒頭の爆破シーンで使用されたバーや、警察署として使用されたルッカリー・ビル、ネスとマローンが出会うミシガン・アベニュー橋、最初に摘発を成功させた密造所として使用された郵便局、あの“乳母車シーン”でおなじみのユニオン駅など、いまも残る名所の数々は実際にシカゴを訪れてロケ地巡りをしたくなること請け合いだ。
嫌でも燃えるコッテリ展開をモリコーネの音楽が引き締める!
大見得を切ってから銃を撃ったり、マシンガンで乱射されてもすぐには絶命しなかったりと、ひと昔前の西部劇のようなコッテリした演出はいま観ると逆に新鮮。マローンやストーンらメンバーのキャラ設定はマンガ的な分かりやすさだし、そのほか多くのシーンにケレン味たっぷりの“燃える”演出が施されていて、さすがに少々くどく感じるほど。それを重厚な音楽でまとめ上げているのが、巨匠モリコーネだ。メインテーマは日本のテレビ番組等でもよく使用されているので、聴き覚えのある人も多いだろう。
とにかく見どころの多い『アンタッチャブル』だが、スッキリ2時間弱でまとめてみせたデ・パルマの手腕はさすが。様々な要素が良い方向に転びまくり、撮影時の不確定さすら勢いに変換されているかのような奇跡的な映画と言えるだろう。できればスクリーンで鑑賞すべきなのだが、リアルタイムで体験できたのはアラフィフ以上の世代だろうし、動画配信サービスで気軽に鑑賞できることに感謝しつつ、ひとまず気軽に鑑賞してみてほしい。
『アンタッチャブル』はNetflixほか配信中
『アンタッチャブル』
1930年代、禁酒法時代のシカゴを支配していたギャングの首領アル・カポネを逮捕するべく、財務省の捜査官たちは銃を手に取り命がけの戦いに挑む。
制作年: | 1987 |
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監督: | |
出演: |