スタとシュワ、がっぷり四つ、それだけで「ありがたい」
楽しい、燃える、深いなど、映画の印象を一言で表現するにも様々な言葉があるわけだが、『大脱出』の場合はやはり「ありがたい」ではないだろうか。
なにしろシルヴェスター・スタローンとアーノルド・シュワルツェネッガーのW主演である。『エクスペンダブルズ』(2010年)での共演を経てとうとう2人で主役、がっぷり四つ。その事実だけでありがたい。
作品自体は、まあシンプルなものだ。脱獄のプロ、スタローンが謎の巨大刑務所に放り込まれ、そこで出会う大物犯罪者(?)がシュワルツェネッガー。タッグを組んで悪の所長(ジム・カヴィーゼル)に立ち向かう。
ほぼストレスなしというのか、見た人には意味が分かると思うが“大船に乗ったつもりで”スタローン&シュワルツェネッガーの名コンビっぷりを堪能すればいいだけという、これは本当に気持ちがいい映画だ。いや刑務所ものだから囚人として2人が虐げられ、苦難を味わうシーンもあるのだが、逆に言えばそれも見せ場。
特にスタローンは昔から『ロッキー』(1976年)の耐える姿が似合う。何があっても屈しない、その不屈っぷりが見ものなのだし、何しろこの2人なわけで、誰がどう見ても無敵。苦境に耐える姿も安心して見ていられるのであった。
至れり尽くせりのサービス、やはり「ありがたい」
本作が公開されたのは2013年。2人の全盛期である80年代にW主演が実現していたら、とてつもない話題作&ヒット作になっていたんだろう。しかし、だ。もしかしたら、歳を取った21世紀でよかったのかもしれない。
脱獄に必要なのは、基本的に知恵と度胸と勇気。正直なところ、筋肉の重要度はそこまで高くない。拳一つで暴れたところでどうにもならないのが刑務所という空間だ。全盛期のスタローンとシュワルツェネッガーだったら、その肉体を持て余していたんじゃないか(同じ刑務所もの、89年のスタローン主演作『ロック・アップ』もよかったけど)。
歳を取って、あまり動けなくなって、そんな2人が脱獄するくらいでちょうどいい。それでもまだ無敵だし。しかも、クライマックスでは「待ってました!」的な最高のアクションも用意されている。シュワルツェネッガーの十八番“人を殺して捨て台詞”もバッチリ。至れり尽くせりのサービスの前には、やはり「ありがたい」と言うしかない。
『ロッキー・ザ・ファイナル』(2006年)、『ランボー 最後の戦場』(2008年)以降のスタローンは何をやっても許されるというか、映画人として“偉人”レベルに到達している。『クリード』シリーズで我々を泣かせ、その一方でこの『大脱出』もシリーズ化。元WWEスーパースター、新世代の肉体派デイヴ・バウティスタと共演した『大脱出2』の日本公開も決まった(2019年3月29日)。
“巨匠”“大御所”にはならず、やるべきこと、求められていることに忠実なスタローン。だからこそ彼は偉人なのだ。
文:橋本宗洋