シュワちゃん主演の傑作といえば、やはり『ターミネーター』シリーズ(1984年~)や『コマンドー』(1985年)などの初期作品を挙げる人が多いだろうか。しかし名作『トゥルーライズ』(1994年)とキャリアの転換期となった心臓手術の間、まさに脂の乗り切った時期に公開された『イレイザー』(1996年)も、洋画劇場などを観て育ったTV世代の映画ファンにとっては特別な作品だ。
これぞシュワ! な豪快アクションと不謹慎ジョーク!!
『イレイザー』というタイトルどおり、本作でシュワが演じるジョン・クルーガーは“消す人”である。証人保護プログラムで守られている人々を“死んだこと”にして経歴を抹消する影の仕事人であり、自身の経歴も一切が極秘という存在だ。いま観ると細部の詰めは甘々だが、消去人としての仕事っぷりを見せる冒頭の十数分は猛烈にワクワクさせてくるし、唐突に不謹慎な笑いを盛り込んでくるあたりもシュワ作品らしくて楽しい。
クルーガーは証人を“保護する”プロでもあり、国家を揺るがす危険な兵器の秘密を握った内部告発者=ヒロインのカレン(ヴァネッサ・ウィリアムズ)を守りながら、巨大な陰謀とドンパチを繰り広げる……というのが物語の大筋だ。ネット普及以前のお話ということもあって全体的な流れに若干のモタつきはあるものの、それが逆に独特な緊張感を生んでいるのも確か。シュワ映画には必須の“痛い”シーンも散りばめてあり、極秘なはずの兵器「レールガン」が序盤でサクッと登場するのも潔い。敵は数ばかりで基本無能だが、名優ジェームズ・カーンが年季の入った悪~い顔で画面を引き締めてくれる。
大爆発からホンモノの猛獣まで! 巨悪と戦い女性を守るお約束アクションの傑作
ハイテク兵器やシステムを相手に戦うとはいえ、誰もが期待する“ワンマン・アーミー”な描写も盛りだくさん(そのぶん無能な同僚や敵がバンバン死ぬ)。愚直に任務を全うしていた男が、やがて腐敗した組織と孤独な戦いを繰り広げることになるという展開も、90年代アクション映画のお約束ではあるがシンプルに燃える。もうそろそろクライマックスかな? と思って時計を見ると、まだ半分を過ぎたあたりという詰め込み具合で、さらに人間だけでなく獰猛な猛獣とのバトルもアリというサービスぶりだ。
中盤以降はステルス・アクション的なミッション遂行展開に切り替わり、ついでに陰謀の全貌を分かりやすく解説(コンボ的に死者数も一気に跳ね上がる)。そこで単なるモブだと思われたジョニーCが意外な活躍を見せるなど、筋肉と重火器だけに頼らない展開で飽きさせない。演じるロバート・パストレッリは薬物の過剰摂取で2004年に亡くなっていて、その数年前に自殺したとされる恋人の殺害疑惑がかけられていたという闇の深い人でもある。
いわゆる“巨悪と戦い女性を守る”という定番パターンの映画ではあるものの、2時間弱を突っ走るパワフルな勢いにあふれた本作。多くのファンが代表作のひとつに挙げるシュワ映画であり、90年代を代表するアクション映画の1本と言えるだろう。
『イレイザー』はCS映画専門チャンネル ムービープラスで2020年7月放送
『イレイザー』
防衛兵器会社サイレックス社の社員リーは、最新鋭兵器“レール・ガン”にまつわる陰謀の証拠が入ったディスクを盗み出す。イレイザーことクルーガーはリーの過去を消して、安全な場所に彼女の身柄を預けた。一方、証人保護プログラム下に置かれた証人が次々に殺される事件が発生する。
制作年: | 1996 |
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監督: | |
出演: |
CS映画専門チャンネル ムービープラスで2020年7月放送