韓国映画/ドラマが絶好調だが、優れているのは『哭声/コクソン』(2016年)や『パラサイト 半地下の家族』(2019年)のようなホラー/スリラー系ばかりじゃない。同国を代表する兄貴系俳優チャ・スンウォン主演の『がんばれ! チョルス』は、ポップなビジュアルとファニーなキャラクター、そして感動的なストーリーが一体となった快作コメディだ。
見た目はチャ・スンウォンなのに中身は子ども! な主人公が強烈
本作の主人公チョルスはソース顔のイケメンマッチョなのだが脳ミソがどうにもピュアすぎるという、まさに「見た目は大人、頭脳は子供」を体現したような人。それには深い理由があるのだが、このチョルスを演じるのがあのチャ・スンウォンという対比がまずインパクト大。『古山子(コサンジャ) 王朝に背いた男』(2016年)や『毒戦 BELIEVER』(2018年)などで見せたシリアスな演技のイメージからは程遠い、キャッチーなキャラクター造形が秀逸だ。
当然チョルスは女性に激モテなわけだが、知能は小学生レベルなので異性に興味はなく、兄が経営する食堂で働きつつ筋トレに励む毎日。そんなマイペースなチョルスが、あるとき怪しい女性に病院に連行され、各種検査を受けさせられる。しかも、そこで紹介された少女セッピョルが自分の娘だと告げられ、ひょんなことからソウルから車で2時間ほど離れた東テグまで2人っきりの珍道中が始まるのだった。
「チャジュンマ」の異名を持つ世話焼き兄貴スンウォンの新たな魅力が爆発!
スンウォン・ウォッチャーの皆さんはご存知だと思うが、彼は映画やドラマでの活躍はもちろん、人気バラエティ番組「三食ごはん」で“アジュンマ(おばさん)”ばりの料理の腕前を発揮したせいで“チャジュンマ”と呼ばれるまでになった芸達者な人。見た目があまりにもイケすぎているため想像しづらいが、実はおしゃべり好きで世話焼きキャラのスンウォンにとって、そもそもコメディは得意分野なのだ。
そして本作の監督は、その「三食ごはん」でも共演したユ・ヘジン主演作『LUCK-KEY/ラッキー』(2016年 ※『鍵泥棒のメソッド』の韓国リメイク)のイ・ゲビョク。主人公を取り巻く人々が“配慮”をフル稼働させ、本人の意に反してコトが運んでいく超ご都合展開で笑いを誘う手法が、本作でも大いに活かされている。あの野球界のレジェンド、イ・スンヨプ絡みのネタが重要なキーになっていて、本人登場シーンは予定調和ながらも笑いをこらえることができない面白さだ。
また、韓国のスナック菓子や高速道路の売店のホットスナック、さらに屋台メシなど、食い意地の張ったチョルスのおかげでフード映画としての魅力も抜群。いわゆる“みんなが優しい”系の映画なので心臓に悪いようなスリリングなシーンはないし、クライマックス前にチョルスの壮絶な過去(※実際に起こった放火事件がモチーフ)を描くことで、そこから先は涙なしには観られない感動ドラマに仕上がっている。コメディとして笑えつつ、トラウマを抱えた人間の“成長物語”として涙を誘う、チャ・スンウォンの新たな代表作の誕生だ。
『がんばれ! チョルス』は2020年6月12日(金)よりロードショー
『がんばれ! チョルス』
チョルスは通行人が思わず足を止めてしまうほどの容姿と鍛え上げられた肉体を持ち合わせながら、頭脳は幼いまま。それでも彼は街の人たちから愛されていた。ある日、チョルスは病院で、大人びた少女セッピョルと出会う。彼女は入院しており、難病と戦っていたのだが、そこで祖母から「チョルスがあなたの父親よ」と衝撃的な告白をされる。初めて出会ったはずなのに俺の娘だと!? 予想もしなかった展開に目を白黒させるチョルス。果たして彼の隠された過去とは……?
制作年: | 2019 |
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監督: | |
出演: |
2020年6月12日(金)よりロードショー