第四の壁を突破! アメコミ映画の常識を覆した大ヒット作の続編
『デッドプール2』(2018年)は、マーベル・コミックの人気キャラを映画化したアメコミ・ヒーロー映画の第二弾です。前作が記録的な大ヒットとなり待望のパート2、結論から言うと前作以上に派手で面白いスーパーエンタテインメントに仕上がっています。
前作や原作のことを知らなくても楽しめるんですが、一応説明すると……
デッドプールことウェイドは元傭兵。恋人ヴァネッサとの幸せな生活を夢見ていましたが、末期の癌に。藁にもすがる思いから彼は怪しげな治療実験に参加します。実は、それは人間をミュータント(突然変異体)化させ人間兵器にする恐るべきプロジェクトでした。その実験の結果、驚異的な治癒能力を持つ不死身の体になったものの、顔が醜く変形してしまいます。その顔を隠すためにマスクを被りデッドプールと名乗るようになります。そして彼は、自分を陥れた悪の組織と恋人を守るため戦います。
というのが前作の大まかなあらすじ。こう書くと正統なヒーローものっぽいですが、デッドプールの強烈すぎるキャラのおかげで一筋縄ではいかない作品になっています。
杉山すぴ豊氏による前作レビュー
まず彼は“おしゃべり傭兵”とあだ名されるぐらい毒舌やギャグをとばしますが、超人化してからその傾向がますます強くなります。さらに “第四の壁を超えられる”という特殊能力が身に付いています。
“第四の壁”とはもともと演劇用語らしく、舞台で演者が観客に話しかけてくる、みたいな演出です。デッドプールは原作で“自分がいま読者が読んでいるコミックの中の登場人物である”とわかっており、読者に話しかけてきます。映画でもこの手法がとられていて、デッドプールは観客にストレートに話しかけたり、楽屋オチを言ったりします。
さらに、お子様視聴厳禁のR指定映画なので、とにかくスプラッタ。悪党どもの血肉とびちるブラック・コメディなのです。もともとデッドプールはX-MEN系のコミックに登場するキャラなので、映画『デッドプール』シリーズはX-MEN映画の一つ。けれどX-MEN映画の世界には違う時間軸によるパラレルワールドの概念があるので、シリアスなX-MEN映画路線とは一味違う形でX-MENのメンバーと絡んでいるのです。
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アメコミ度UP! これだけは知っておきたい事前トリビア!!
さて『デッドプール2』です。デッドプールは、その力を使って彼なりに正義=悪人退治を行っていて、恋人ヴァネッサとの関係も良好。しかし思わぬ悲劇、信じられない脅威が。前作はあくまで個人の復讐が戦いの動機でしたが、今回はミュータントの少年を守る、というヒーロー性が強調されています。
1作目が『キル・ビル』(2003年~)や『ジョン・ウィック』(2014年~)的な笑えるバイオレンス活劇だったのに対し、本作はSF色、X-MENテイストがより強まりました。特にX-MENコミックで人気のケーブル、そしてジャガーノート(マーベルの中でもかなり獰猛で怪力のヴィラン)という強烈キャラが見事に映像化されています。
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ちなみに、ジャガーノートはライアン・レイノルズがモーション・キャプチャーで演じている、つまりデジタル時代の一人二役ですね。そしてケーブルを演じるのはジョシュ・ブローリン。そう、同時期に公開された『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』(2018年)でサノスを演じていました! 劇中、サノスをいじったギャグもあって、こういう反骨心もデッドプールらしい。かなり過激なバイオレンス・シーンもありますが、ひどい目に会うのは悪人ばかりで罪なき一般人が巻き込まれたりはしないので、そこは安心してください。ただし、お子様と一緒の視聴はお控えください(笑)。
一応ネタバレにならない程度に、これだけ頭に入れておくと楽しいという事前トリビアを紹介しておきます。
1.マーベル原作でもアベンジャーズは絡みません!
『デッドプール2』およびX-MEN映画はマーベル原作ですが、X-MENものはマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)を展開するディズニーではなく20世紀フォックスが映画権を持っていました。だからマーベルものでもアベンジャーズ等は絡んできません。
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2.ブラピも登場!
なんと1シーンだけ、ブラッド・ピットが出ます! お見逃しなく(ヒント:電線)。
3.あの俳優を無駄使い⁉
『IT/イット』シリーズ(2017年~)のペニー・ワイズことビル・スカルスガルドが無駄遣い的に(笑)に出演。
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4.スタン・リー氏の出演は……
マーベルものなので、スタン・リー氏がビル壁面の絵で登場(これ見逃すので注意です)。
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5.R・レイノルズの自虐ネタに爆笑
ライアン・レイノルズはDCコミック原作の『グリーン・ランタン』(2011年)という映画に出ています。この映画自体は失敗作とされていて、従って自虐的にこの作品をいじることが多いです。本作でも、すごいいじり方をします(ちなみに僕は映画『グリーン・ランタン』好きなんですけど)。
6.『X-MEN ZERO』と『デッドプール2』の関係
ライアン・レイノルズはこのウェイド・ウィルソン役を、映画『ウルヴァリン:X-MEN ZERO』(2009年)で演じていました。白い肌にスキンヘッド、口を縫って潰された異様な怪人となり、ヒュー・ジャックマン演じるウルヴァリンと戦います。『X-MEN ZERO』と『デッドプール2』はパラレル・ワールドの関係にあると思っていてください。
7.『X-MEN:ダーク・フェニックス』ともパラレル!
『デッドプール2』と同時期に撮影されていたのが『X-MEN:ダーク・フェニックス』(2019年)です。これも『デッドプール2』とはパラレル・ワールドの関係にあると思っていてください。ただ“第四の壁”はこうしたパラレル・ワールドも超越?
https://www.youtube.com/watch?v=vaFIK23cjZU&feature=emb_title
8.『デッドプール』がなければ『ジョーカー』成功もなかった⁉
デッドプールに協力するミュータント、ドミノを演じるザジー・ビーツは『ジョーカー』(2019年)にも出ていました。いわゆるアメコミ・ヒーロー映画でR指定作品として成功する先駆けを作ったのが『デッドプール』シリーズであり、それを受けての『ジョーカー』です。『デッドプール』の成功がなければR指定の『ジョーカー』にもGO! は出なかったかもしれません。
9.ディズニーいじりギャグが予定より減ったワケ
『デッドプール2』公開時に来日したライアン・レイノルズにインタビューする機会があったのですが、撮影の途中で20世紀フォックスがディズニーに買収されることが決まったそうです。なので、当初はもっとディズニーやMCUをいじったギャグをいれていたそうですが、ディズニーに配慮して(これでも)ずいぶん削った……とのことです。
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現在ライアン・レイノルズはMCU傘下で『デッドプール3』が製作できるかトライしているそうです。改めて『デッドプール2』を観ながら『デッドプール3』を楽しみに待ちましょう。
文:杉山すぴ豊
『デッドプール2』はCS映画専門チャンネル ムービープラスで2020年9~10月放送
『デッドプール2』
お気楽な日々を過ごすデッドプール。そんな彼の前に、未来からマシーン人間・ケーブルが現われ、謎の力を秘めた少年の命を狙う。恋人ヴァネッサの希望で少年を守ることにしたデッドプールは、特殊能力を持つ者たちを集めてスペシャルチーム“Xフォース”を結成する!
制作年: | 2018 |
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監督: | |
出演: |
CS映画専門チャンネル ムービープラスで2020年9~10月放送