『マグニフィセント・セブン』で裾野が広がり『バーフバリ』で急加速!
―まだ「絶叫上映」を知らない方々へ、簡単にご説明いただけますか?
E:日本の劇場で映画を観る場合には「声を出してはいけない」とか「喋ってはいけない」とか、そういうものは当然のマナーとしてあるんですが、笑ったり歓声を上げたりすることもない場合が多いのかなと。その中で、我々も基本的には静かに観る方が好き派ですけど、なんとなく“ある作品”を境に「あ、この作品はちょっと応援とかしてもいいんじゃないの?」みたいな。ぶっちゃけ『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(2015年)なんですけど。
3人:(両手を組んで“V8”ポーズ)
E:とりあえず、観ながら“V8コール”をやりたいという変な欲求から始まり、お客さん同士のお喋りはナシにして、キャラクターへ声援を送ったりとか、お決まりのフレーズを合唱、コールしたりっていうのをやったら楽しいんじゃないかな? というところから始まってますね。
K:別に我々が元祖じゃなくて、昔から『ロッキー・ホラー・ショー』(1975年)だったりとか、アニメのイベント上映、インド映画のマサラ上映(※紙吹雪やクラッカーで大騒ぎする鑑賞スタイル)とかもあったんですが、最近シネコンが世の中に多くなってきて、ちょっとそういうのがやりづらくなった空気の中では目新しさもあったのかな、という感じですね。
―応援上映と絶叫上映との違いは?
K:応援上映と絶叫上映、あと発声可能上映とかって、実は全く同じだと思っていて。作品ごと/会場ごとに「ここまでやっていい」「これはやめとこう」みたいなルールが違うだけで、名前による違いはないのかなと思います。
E:そうですね。作品のカラーによって、たまたま『マッドマックス 怒りのデス・ロード』は叫ぶ感じだったので“絶叫”っていうフレーズを使いましたけれども、当然マンガ原作で“キャラ推し”って言われるようなものに関しては“応援”っていうフレーズが使われたり。そういう感じで、お客さんの求めるカラーに合ったところで、自然発生的にそういったフレーズが生まれていったのかな、という感じはしますね。
―絶叫上映の歴史上、代表的な作品を挙げるとしたら?
K:うちのチームでやってきたもので言うと、とにかく最初に『マッドマックス 怒りのデス・ロード』。その後に大きかったのは『マグニフィセント・セブン』(2016年)も盛り上がりましたね。それから『ゴーストバスターズ』(2016年)とか『キング・オブ・エジプト』(2016年)とか。色々やってきましたけど、とにかく2018年は『バーフバリ』が大ヒットして、本当に1年中やりましたね。何回くらいやったかな?
渡久山(以降、T):100回は超えて……?
E:細かいものも含めたらね。
T:3日に1回のペースで。
K:『バーフバリ』がヒットしたことで我々の活動も機会が増えて、『コマンド―』(1985年)応援上映を吹替版(テレビ朝日/日曜洋画劇場版)でやったり。
T:映画館で流れたことがない、テレビ版の音声を流すという。
K:しかもゲストが……?
T:玄田哲章さん(アーノルド・シュワルツェネッガー公認 永久専属声優)と、土井美加さん(レイ・ドーン・チョン吹替声優)も来てくださって。
K:それで割と広がりが出てきたかなっていう。
E:『マグニフィセント・セブン』あたりから、女性のユーザーがすごく目立ってきたなっていう印象で。そこからが結構、声を出して映画を観る行為というか、イベントに対する認知が少しずつ広がっていったような感触があります。そこから『バーフバリ』で急加速、というイメージですね。
T:変な話、タイミングが良かったといいますか。
E:そうですね、それが一番大きいです。
K:我々の活動と同時進行で、別の現象としてアニメのキンプリ(『KING OF PRISM by PrettyRhythm』)だとか、邦画だと『HiGH&LOW THE MOVIE』や『シン・ゴジラ』の発声可能上映とか、そういう作品もたまたま同時期に流行していきましたね。
『マッドマックス』観ながらV8ポーズやりたい人、いますよね?
―最初に開催されたときは、どれくらいのお客さんが来られましたか?
K:池袋で『マッドマックス 怒りのデス・ロード』をやって270人ほどですね。即完売でした。
K:そのときの需要としては多分、全然もっと大きくてもいけたかと思うんですけど。
―そもそもは「絶叫したいんだけど誰か一緒にやらない?」という呼びかけだったんですか?
K:そうですね、SNSで「『マッドマックス』観ながらこれ(V8ポーズ)やりたい人いますよね?」っていう。
T:(劇場でV8ポーズをやりたい人が)いる前提だったんですね(笑)
K:で、賛同者が1,000人くらい集まって、それをベースに劇場さんに「こういうイベントしましょうよ」っていう企画書をお渡しして。その時期は結構、断られたんですけど。
E:2015年くらいかな、日本で(『マッドマックス 怒りのデス・ロード』が)公開されたのが。で、動きとしてまとまってきたのが夏前だったので、ちょうど劇場さんも配給会社さんも夏の興行時期ということで「そういう特別イベントみたいなものをやってみるのはちょっと難しいかなぁ」という感じで、お返事は頂いてたんですけどね。
K:今ほどこういう絶叫上映とか応援上映が一般的ではなかったし、なんか迷惑行為っぽく見られてたのかなって(笑)。
E:むしろ「劇場で声を出すなんてとんでもない」みたいな風潮が映画ファンの間でも結構、まだ強かった。だから理解を得るのに時間がかかったのかな。
―現在はメンバーも増えたそうですが、当初からどのように増えていったのでしょうか?
K:最初は2人(KとE)で。
E:普通に、赤坂でごはん食べてるときに(笑)、「これやんない?」っていうヨタ話から始まってるんですけど。その後、Tさんとか最初は「ちょっと手伝ってください」みたいな感じで、Twitterで。そこから徐々に「次回もお願いします」みたいな。
K:基本的に情報交換の場が全部SNSなので面白くて、職業も性別も年齢も分からない人と協力してイベントを作っていって。でも結果的に(T氏のように)舞台経験のある人とか、ナレーション経験のあるセミプロあるいはプロの方、デザイナーの方もスタッフにいますし、なかなか面白い構成になっていて。いま20人弱くらいスタッフがいて、みなさんがそれぞれの技術を活かして作品ごとにやってくれるので、非常に面白いですよね。
E:そうですね、色んな化学反応が。「あ、この人こんなジャンルですごい盛り上がる人だったんだ」みたいなものもあったり、毎回楽しいですね。
―作品選びの基準は?
E:それこそ最初は「この作品でできたらどうか?」っていうので、本当に何もないところから手探りで、TwitterなどのSNSで同志を集めて、劇場さんや配給会社さんにお伺いを立てて……っていう感じでやってきました。今は、おかげさまで話題性というか、劇場が盛り上がる一因として少しでも貢献できているのか、色々お声がけをいただくようになりまして。こちらから選ぶというよりは、お声がけいただいてやらせていただいているっていう感じが強くなってきてるかなと。
K:そうですね。増えてきてありがたいことです。
企画会議などはどうやっているんですか?
T:それこそ(上映が)終わったあと飲みに行って「何やりたい?」って、ずーっと言ってますね、そういえば(笑)。
E:それが企画会議ですね。
T:LINEグループとかもあるんですけど、そこではあまり「あれがやりたい」とかはなくて、やっぱり終わって「あ~疲れた」って酒飲みながら「あれいいよね、これいいよね」っていう話をしてますね。
E:LINEグループだと、みんなけっこう大人しい。自己主張そんなにないんだけど、飲み会になると急に(笑)。
<「『マッドマックス 怒りのデスロード』絶叫上映を観てブラック企業を辞めた人が2~3人いた」V8ジャパン絶叫上映企画チームが語る!(2/3)>