序盤から世界がまるごと水没&早々に色々と壊滅!!
「自然災害でロサンゼルスが壊滅したり、困難を通して主人公たちが家族愛を再確認したりするパニック映画」をしょっちゅう日本に送りつけてくることでおなじみの製作会社・アサイラム。ときにはロサンゼルスの代わりにワシントンD.C.が壊滅したり、自然災害じみた猛威を振るうエイリアンが出たり、家族愛を親子愛にすげ替えたりしただけの映画も撮っているようだが、その内容はだいたいどれも似たりよったりのものである。
さて、そんな「手癖のようにとりあえずロサンゼルスを滅ぼしがち」な彼らが、2017年にひっそりと公開していたディザスター・パニックが存在する。その名は『エンディング・ワールド』。原題は『OCEANS RISING』だ。
本作はロサンゼルスやワシントンD.C.だけに留まらず、「わりと序盤から世界がまるごと水没して、早々に色々と壊滅する」という点で、これまでに紹介してきた作品群とは一線を画している。また、いつもの“家族愛”要素は“夫婦愛”に変更。「とある事情で決別した主人公とヒロインが、なんやかんやヨリを戻して最終的に絆を深める」ストーリーも依然健在だ。
まあ、とどのつまり結局は「これまた普段とそう大差ないディザスター・パニック」ということになってしまうわけだが、それはそれとして今回はこのアサイラムが生んだ“セカオワ”を紹介していこう。
ディザスター・パニックばかり手掛ける脚本家と、そこそこ知られた主演俳優!
地球全体が相次ぐ自然災害に見舞われている現在。気象局に勤める科学者のジョシュは、「一連の現象は地磁気が原因」とする説を訴えるが、大統領は彼を黙殺。最愛の女性であり、同じ科学者でもある妻のパムにすら愛想をつかされてしまったジョシュは、破局を宣言すると、そのまま行方をくらませてしまった……。
それから3年後。かつて彼が予言した通り、地磁気の影響で凄まじい海面上昇を引き起こした世界は、海の底に沈んでしまった。すべてが水没するまさにその直前、たまたまパムと再会していたジョシュは、前もって用意していた船に乗り、かろうじて生き延びることに成功。改めて2人で力を合わせ、事態の解決に乗り出すが……というのが本作の概要である。
監督および脚本を務めるのは、アダム・リプシウスなる男。この映画業界でかれこれ20年以上にわたり活動を続けているベテランだ。彼はかつて『アルマゲドン2014』(2014年)というディザスター・パニック物の映画でも脚本を担当している。そのキャリアにおいて、「なんかすごい天災のせいで、地球が滅亡の危機に瀕する映画」の脚本を立て続けに2本書いている辺り、彼の正体は世界になんらかの恨みを抱えている闇の大魔王であると推測される。
主演はジェイソン・トバイアス。本作のほかには『ジュラシック・リボーン』(2016年)や『エアポート2017』(2017年)に出演した俳優として、日本では知られている……かもしれない人物だ。ちなみに、『ジュラシック・リボーン』は意外と悪くないモンスター・パニック映画なので、この際どさくさに紛れてオススメしておこう。
大規模なパニック演出! ……は最序盤と最終盤をのぞいてほぼ皆無!!
というわけで『エンディング・ワールド』だが、かつて本コラムで紹介した『カリフォルニア・ディストラクション』(2015年)、『ジオディザスター』(2017年)、『エンド・オブ・アース 地球最期の日』(2018年)などのアサイラム製パニック・ムービーと比べても、トップクラスに「これといってなにも起こらず、画面に映る範囲での主要人物の死者数も少ない」作品である。
序盤から「天変地異によって世界が水没する」まではいいものの、その時点で一旦大規模な自然災害の展開に区切りがついてしまっているため、たとえば「ド派手な地震や津波で地球が崩壊していく~」ようなパニック演出は、最序盤と最終盤をのぞいてほぼ皆無。その間は主人公とヒロインのラブ・ロマンスや、数少ない生存者同士の内輪揉め、それっぽい専門用語を駆使して語られる「いかに今の状況が危険で、これから人類はどうすればいいのか」といった話など、もっぱら動きの少ない会話劇で占められる。
中盤で1人だけ主人公グループから死者が出るが、その原因は感電。地球滅亡というスケールに対して、「自然災害が直接的に主人公グループを殺すシーンがまるでない」ため、諸々込みでイマイチ盛り上がりに欠けるという感想だ。それなら『カリフォルニア・ディストラクション』のように途中で無理やりデカいカバでもねじ込んでくれればよかったが、今更そんな話をしてもしょうがない。
……と、起伏に乏しい話がまったり続く本作、賛否でいえばおそらく否の側に票が(極端に)偏る作品ではあるだろう。それでも「いや、我こそは」という方は、ぜひ一度ご覧になっていただきたい。
文:知的風ハット
『エンディング・ワールド』はCS映画専門チャンネル ムービープラスで2020年5月放送
『エンディング・ワールド』
20XX年、地球は猛烈な天変地異に見舞われていた。科学者のジョシュは、地磁気の逆転現象を大統領に警告するが無視されてしまう。その3年後、相次ぐ地震と地殻変動で海面が上昇。すべての陸地が海中に沈むかもしれない危機を前に、ジョシュは陽子加速装置を使って地球の磁気を回復させようとする。
制作年: | 2017 |
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監督: | |
出演: |
CS映画専門チャンネル ムービープラスで2020年5月放送