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Netflixならではの過激描写! 女性の本音を大胆に描くインド映画『慕情のアンソロジー』

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ライター:#松岡環
Netflixならではの過激描写! 女性の本音を大胆に描くインド映画『慕情のアンソロジー』
Netflixオリジナル映画『慕情のアンソロジー』独占配信中

ボリウッドの実力派監督たちが集結! Netflixでオムニバス製作

ボリウッド映画界の実力派監督たちの中に、仲の良い4人組がいる。『ガリーボーイ』(2018年)のゾーヤー・アクタル監督を紅一点に、『デーヴ D』(2009年)や『血の抗争』(2012年)のアヌラーグ・カシャプ監督、『シャンハイ』(2012年)のディバーカル・バナルジー監督、そして、『家族の四季 -愛すれど遠く離れて-』(2001年)や『マイ・ネーム・イズ・ハーン』(2010年)のカラン・ジョーハル監督という4人組だ。

https://www.instagram.com/p/BkQleNFhgV5/

最初の音頭取りは、多分アヌラーグ・カシャプ監督だったのではと思うのだが、インド映画100周年を記念して作られたオムニバス映画『ボンベイ・トーキーズ』(2013年)で、4人は初めてタッグを組んだ。1969年生まれのディバーカル・バナルジー監督以外は全員が1972年生まれで、4人ともほぼ同じ年齢である。しかし年代的な共通点はあるものの、経歴も作風も全く異なった4人なので、当時はインド映画100周年の旗の下にたまたま集められただけ、と思われていた。

ところが5年後、4人は再び集まってオムニバス映画を作る。それがNetflixオリジナル作品『慕情のアンソロジー』(2018年:原題『Lust Stories』)だ。さらに、Netflixでの映画製作が気に入ったのか、2020年にもまたまた4人で、今度はホラー映画『恐怖のアンソロジー』(原題『Ghost Stories』)を完成させた。

この最新作は私には今ひとつだったのだが、『慕情のアンソロジー』は女性の欲望が本音で描かれていてなかなかに興味深く、また性描写がインド映画にしては過激で、強く印象に残った。まずは『慕情のアンソロジー』の4つの短編、それぞれのストーリーを見てみよう。

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『慕情のアンソロジー』短編4作からなるオムニバス映画

1.アヌラーグ・カシャプ監督作品
大学で文学を教えているカリンディー(ラーディカー・アープテー)は、あるとき教え子と一夜の関係を持ってしまう。後日、それがセクハラに当たるのでは? との心配がきざし、カリンディーは学生に口止めをする。ところが、その学生が女子学生と付き合っているのがわかると、今度は自分勝手な理屈で邪魔をしようとする。カリンディーの行動はエスカレートしていき、偏執狂まがいになっていくが……。

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2.ゾーヤー・アクタル監督作品
スダー(ブーミ・ペードネーカル)は独身のアジート(ニール・ブーパーラム)の住居で通いのメイドをしている。毎朝アジートはやってきた彼女を抱き、コトが終わってから出勤していく。アジートの両親がムンバイに出てきて、スダーをまるで自分たちの娘のように扱ってくれるが、彼らが来たのはアジートの見合いのためだった。見合い相手の女性が両親とやってきて、すんなりとアジートの結婚が決まり、両家は大喜び。スダーも祝いの菓子をお裾分けされて……。

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3.ディバーカル・バナルジー監督作品
中年女性リーナー(マニーシャー・コイララ)は、不倫相手の医師スディール(ジャイディープ・アフラーワト)が新しく手に入れたビーチハウスに来てくつろいでいた。そこへ、夫サルマーン(サンジャイ・カプール)からスディールに電話が掛かる。実は3人は大学時代からの友人だったのだ。「妻が出て行った。俺は死ぬ」というサルマーンをなだめたスディールは、リーナーが夫婦仲を相談に来たことにして、サルマーンをビーチハウスに呼び寄せるが……。

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4.カラン・ジョーハル監督作品
メーガー(キアラ・アードヴァーニー)は女子校の教師。同僚のレーカー先生はセクシーな女性で、そんな彼女を見る校長の目はいやらしい。メーガーは見合いした相手(ヴィッキー・コウシャル)と結婚し夫の家族と同居するが、彼のセックスはいつもすぐ終わってしまって満たされない毎日だ。ある時、レーカー先生が図書室で密かにリモコン・バイブを使っていたのがバレて、校長先生がバイブを没収。メーガーはそれを盗み出し、自宅で試してみることに……。

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過激な性描写もインドの厳しい検閲を突破! 新旧女優競演が楽しめるオムニバス

日本語タイトルは『慕情のアンソロジー』だが原題は『Lust Stories』、つまり「欲望の物語集」で、インド映画にしては過激な、肉体の欲望を直接表現したシーンも描かれる。インド映画は検閲(政府は「検定」という言葉を使っている)が厳しく、特に性表現はかなり制限されているのだが、本作ではブーミ・ペードネーカルの全裸ベッドシーンやキアラ・アードヴァーニーのバイブ反応シーンがあり、初見の時は「これで検閲を通ったの?」とかなり驚いた。

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調べてみると、インドの映像文化を統括する情報・放送省は、ネット配信に関しては検閲を行わない、という方針だそうだ。「個人視聴なので、大勢が一度に見るものではないから」というのが根拠なのだという。それでも「ポルノまがいのものが流されている」等の批判が出て、Netflix、Amazon Prime Video、Hotstar(2015年から開始されたインドの配信サービス)などは独自に規制基準を設けている。

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『慕情のアンソロジー』も過激な性表現があるせいか、それを目的に見る視聴者がいるようで、YouTubeに個人がアップしたNetflix秀作映画紹介動画では、「セックスやヌードのシーンは視聴者を誘うためではなく、女性の肉体的欲望を描くことで、その意味するところを深く考えてもらうためです」というような解説をしている。これまでにない女性の視点から欲望を描く作品で、それを具現化するために過激なシーンも必要だった、というところだ。

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演じている女優たちは、みな堂々たる演技ぶりである。有名女優を使えるのも、監督4人の知名度とNetflix製作のおかげと思われるが、ベテラン女優であり、日本では『ボンベイ』(1995年)や『ディル・セ 心から』(1998年)で知られるマニーシャー・コイララから、新人に近いキアラ・アードヴァーニーまで、それぞれに魅力を発揮している。

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『パッドマン 5億人の女性を救った男』(2018年)と『盲目のメロディ ~インド式殺人狂騒曲~』(2018年)のラーディカー・アープテーは、男子学生を追い詰めるようなサイコパス的役柄を演じさせると抜群にうまいし、日本では公開作がまだない『ヨイショ! 君と走る日』(2015年)のブーミ・ペードネーカルは、セリフが2つしかない役を見事にこなしている。男優は、若手成長株のヴィッキー・コウシャルもかすんでしまっていて残念だが、女優競演が楽しめる4監督競作アンソロジーである。

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文:松岡 環

『慕情のアンソロジー』はNetflixで独占配信中

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