米オクラホマ州タルサで実際に起こった恐ろしい虐殺事件が題材!
待望の『ウォッチメン』のドラマ・シリーズがいよいよ配信でも楽しめるようになりました(Amazon Prime Video スターチャンネルEX)。アメコミ好きには説明がいらない名作だし、また2009年に映画版が公開されているので観た方も多いと思いますが、「ウォッチメン」を知らなくても大丈夫。むしろ知っている人の方がビックリしてしまう、見ごたえのあるドラマに仕上がっています。
なぜビックリしてしまうのかというと、このドラマ版『ウォッチメン』は、原作コミックや映画で描かれた物語の“続編”として作られているのです。ですから舞台は1985年のニューヨーク(原作コミックの舞台)ではなく、2019年の米オクラホマ州タルサなのです。
ドラマ版『ウォッチメン』のストーリーを説明すると、タルサの街に住む黒人女性のアンジェラ。実は彼女は“シスターナイト”と名乗るタルサ警察の刑事です。タルサ警察は3年前に<第7機兵隊>という秘密結社のテロ行為によって、多くの警官が自宅で襲われ殺されたため、刑事や警官たちは自分の身分を隠し、またそれぞれが覆面をして、つまり一切プライバシーがわからないようにして任務にあたっているのです。
第7機兵隊の正体は、過激な白人至上主義者たち。タルサの街では1921年に多くの黒人が白人の暴徒に殺されるという悲劇があり(この事件は本当にありました)、それ以来、白人以外の人種を憎む奴らが存在し続けているわけです。第7機兵隊の面子も市井の人々だったりして、マスクを被っています。共にマスクに素顔を隠した警察vsテロ組織という異常な設定の中、アンジェラの上司である白人の警察署長が殺されます。事件を追うアンジェラは恐るべき陰謀と驚愕の自分のルーツに直面するのです。
ちょっと複雑? これだけは押さえておきたい「ウォッチメン」基本設定
ドラマ『ウォッチメン』は『ゲーム・オブ・スローンズ』(2011~2019年)のHBO製作だけに、クセのあるドラマです。第1話を見ただけだと、よくわからないでしょう(笑)。ただ、見続けていくうちに色々な要素が組み合わさって、すっきり腑におちるようになります。なので、最初の4話くらいまでとにかく見続けてください。ここをのりきると本当にハマる。次々と謎が明かされていく中で、原作コミックや映画で描かれた“ウォッチメン”の設定が語りなおされていきます。
ただ、ちょっと複雑な部分もあるのでネタバレに気をつけながら、これだけ頭に入れておくとドラマ『ウォッチメン』がより楽しめる、という基本設定を書いておきます。まず『ウォッチメン』の舞台となるアメリカは、現実とはちょっと異なる“もう一つのアメリカ”です。
1938年に頭巾を被った“フーデッド・ジャスティス”という謎のヒーローが登場。やがて同じようなヒーロー仲間が集まり、<ミニッツメン>というチームを作ります。以来、こうしたヒーローたちが何度も現れました。中でも強烈なのは、核実験の失敗から生まれたDr.マンハッタンという青色の超人。あらゆる物理的現象を操り、過去・現在・未来を同時に把握するという時間感覚を持っています。彼の活躍によってアメリカはベトナム戦争に勝利し、ベトナムのサイゴンはなんとアメリカの州になっています。
そして1985年にNYで衝撃的な事件が起こり、当時対立していたアメリカとソ連(現ロシア)は「人類がいがみあっている場合ではない」と協調路線に転向。この事件の裏にはエイドリアン・ヴェイト/オジマンディアスという超天才が絡んでいました。そしてこれを機に、なぜかDr.マンハッタンは地球を捨て火星にこもってしまうのです。
……上記の設定を頭に入れておけば、ドラマ版『ウォッチメン』を深く楽しむことができるでしょう。1985年を舞台にした「ウォッチメン」は、当時の米ソ対立、そこから起こりうる核戦争の危機がモチーフになっています。ドラマ版の『ウォッチメン』は、ヘイトクライムで分断される社会への警鐘とともとれる内容になっています。ヒーローもののフォーマットを借りた社会派ドラマというのが「ウォッチメン」の魅力ですが、本ドラマもその期待に十分応えてくれます。
文:杉山すぴ豊
『ウォッチメン』はAmazon Prime Videoチャンネル<スターチャンネルEX>で配信中
https://www.youtube.com/watch?v=17Se06_r8DU&feature=emb_title
『ウォッチメン』
パラレルワールドのアメリカでは、テロ組織から身を守るために警官がマスクで身元を隠している。タルサ警察のアンジェラ・エイバーは、友人であり警察長官のジャッド・クロフォードの指導の下、銃撃戦で病院送りとなった同僚の殺人未遂事件を捜査する。彼女はルッキングラスと共にアジトが牧場であることを突き止めた。 一方、かつてヒーローだった実業家のエイドリアン・ヴェイトは忠実な使用人と共に「記念日」を祝っていた。
制作年: | 2019 |
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出演: |