Netflixが贈るアン・ハサウェイ主演の正統派ポリティカル・サスペンス!
意欲的なキャリアを重ねているアン・ハサウェイの最新主演作『マクマホン・ファイル』が配信中だ。公開中ではなく、配信中。この映画も、マーティン・スコセッシ監督の『アイリッシュマン』(2019年)などと同じく、Netflixオリジナル長編作品なのである。
舞台は1980年代。ハサウェイ演じる新聞記者エレナは中米でのゲリラ活動と、それにまつわるアメリカ政府の動きを追う。そこに現れるのが、離れて暮らしていた父。彼の“謎”に巻き込まれるように、エレナは武器と麻薬の密輸が絡む陰謀の中枢に踏み込んでいくことになる。
まさに正統派のポリティカル・サスペンスだ。原作(イラン・コントラ事件をモチーフにしたジョーン・ディディオンによる同名小説)もあり、つまり2時間弱の映画では描き切れないくらいの内容があるとも言える。陰謀、裏切り、謎、さらに主人公のプライベートの問題まで。
それらをどう取捨選択し映画にしていくかが重要なのだが、本作はその“交通整理”に成功しているとは言い難い。これは主人公と一緒に迷宮を旅しているとも言えるのだが、行き当たりばったりな展開にも見えてしまう。ベン・アフレックやウィレム・デフォーといったクセのある共演者たちをもっと活かしてほしかった感もある。
アン・ハサウェイの熱演と豪華キャスト共演を自宅で鑑賞できる贅沢!
そんな中で、アン・ハサウェイの熱演が光っている。くたびれた顔で取材に駆け回り、ひっきりなしに煙草を吸い、陰謀と銃弾に必死で立ち向かう。母であり娘であることの強さも弱さも見せる。実際の話、演出上のこととはいえ記者会見の場に途中から入っていく記者はいないだろうと思うのだが、ともあれタフさも脆さもあるエレナはアン・ハサウェイ渾身の主人公と言っていい。
そして、こういう映画が“配信映画”であることの面白さも感じる。他の作品もそうだが“配信だから万人受けを”ではなく、配信だからこそ幅広い企画が成立するのだ。「アン・ハサウェイ主演、ベン・アフレックとウィレム・デフォー共演のポリティカル・スリラーをネット配信で」というのは、状況としてかなり豊かだろう。
文:橋本宗洋
『マクマホン・ファイル』はNetflixで独占配信中