不安を煽る“しゃべくり”展開にA・サンドラーの怪演がどハマり!
ヒット作連発のインディーズの製作スタジオ<A24>とNetflixが贈る、アダム・サンドラー主演のノンストップしゃべくりギャンブル中毒者映画『アンカット・ダイヤモンド』、超絶最高でした。演技、演出、脚本、カメラ、衣装、全部よかった。めちゃくちゃ面白かったです。
借金しまくりで首がまわんない妻子&愛人持ちの男・ハワード(サンドラー)がある日、値千金(らしい)のでっかいでっかい宝石をゲットする。そいつを売ってお金を返せばいいのに、そこはギャンブル中毒者、さらに大きい金に変えようと目論んで、どドツボにはまっていくという展開。この宝石に惚れ込んだNBAスター、ケビン・ガーネット(本人役)との絡みが見所。
金に追われる話なのに、絶望感が全くないままストーリーは進む。主人公は常にどこか抜けていて、悪いことが起きても他人事のように気持ちをすぐに切り替えるフシがある。局面局面で超人的に「うまくやれる」才能を持っていて楽観的。きっと、ずっとこうやって生きてきたんだろう。お前、もっと人生マジメに考えろよ! と言いたくなる。
その一方、全ての登場人物が終始しゃべりまくりでセリフの隙間がない演出は、“とはいえ切迫している”主人公や各キャラクターの感情と日常を描いていて、この対比がたまらなかった。せかせかしているのに、どこか抜けている奴ら。
ジェットコースターよろしく↑↑上がるテンション……その先には衝撃の結末が!
うまくコトが運んだり、やっぱり運ばなかったりが連続するジェットコースーターのような脚本。観ているこっちは途中からその中毒者になってしまう。「そりゃお前さん、そんなことしてたらうまくいきゃしないよ」と呆れるほどダメ男なハワードに共感など全くもってしないが、“ジェットコースター中毒”の自分は、もはや“ギャンブル中毒”の彼となんら変わらない気がしてくるから怖い。
クライマックスが近づくにつれて昇り下りのテンポは上がり、ハワードと僕のテンションはどんどんシンクロしていく。それが最高潮に達したとき、画面に映る全てがバカバカしく思えた。どこがいいんだかわかんないハワードに惚れる愛人、未知の宝石に惹かれてハワードに巻き込まれるNBAスター、そのスターの活躍とスピーチに歓喜する大衆…‥。みんながみんな、“おかしい人”に見えてくるではないか。そして、この映画に魅了された僕。ああ、最も愚か。最高に気持ちいい。
文:夏目知幸(シャムキャッツ)
『アンカット・ダイヤモンド』はNetflixで独占配信中
『アンカット・ダイヤモンド』
ニューヨークのカリスマ宝石商、ハワード・ラトナーは常に金儲けのチャンスを狙っていた。だが、巨額の金を手に入れようと無謀な賭けに出たために、失敗は命取りの危ない橋を渡ることに。仕事と家庭を両立し、あちらこちらから迫り来る敵をかわしながら、彼は勝利を信じてがむしゃらに突き進んでいく。
制作年: | 2019 |
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監督: | |
出演: |
Netflixで独占配信中