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超怖い怪談本を挿絵まで忠実に映画化! ギレルモ・デル・トロ製作『スケアリーストーリーズ 怖い本』

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ライター:#杉山すぴ豊
超怖い怪談本を挿絵まで忠実に映画化! ギレルモ・デル・トロ製作『スケアリーストーリーズ 怖い本』
『スケアリーストーリーズ 怖い本』©2020 CBS FILMS INC. ALL RIGHTS RESERVED.

読んだら寝られなくなる? 子どもたちを恐怖に陥れた“怖い本”の記憶

子どものころ、いわゆる怖い話を集めた本を夢中になって読んだこと、ありますよね。「学校の怪談」とか「本当にあった怖い話」みたいな類の本。これは万国共通のようで、アメリカでは80年代に「Scary Stories to Tell in the Dark(原題/アルヴィン・シュワルツ著)」という本が子どもたちの間で人気だったそうです。都市伝説やアメリカ怪談みたいな話をたくさん集めた本です。

https://www.instagram.com/p/B4kYZxyFArr/

映画『スケアリーストーリーズ 怖い本』は、この児童書が原作。ここ数年は『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』2部作(2017~2019年)の大ヒットや、『ゲット・アウト』(2017年)『アス』(2019年)、『ヘレディタリー/継承』(2018年)『ミッドサマー』(2020年)など新たな傑作が続々登場し、また配信系でもNetflixオリジナルシリーズ『ストレンジャー・シングス 未知の世界』(2016年~)が多くのファンを獲得したりと、ひさしぶりにホラー映画界が活況です。そうした追い風の中、かつて子どもたちを震え上がらせたコンテンツを復活させようと考えたのかもしれません。

『スケアリーストーリーズ 怖い本』©2020 CBS FILMS INC. ALL RIGHTS RESERVED.

そして、ここに素晴らしい才能がジョインします。それはギレルモ・デル・トロ。半魚人が主役の映画『シェイプ・オブ・ウォーター』(2017年)でアカデミー賞を獲得するという偉業をなしとげた、偉大なるモンスター・オタク! 彼の手によって昔懐かしい怖い本が、味わい深いダーク・ファンタジー映画に仕上がりました。

https://www.instagram.com/p/BrYqCKtnl7J/

スティーブン・ガンメルが手掛けたトラウマ級の超怖い挿絵を忠実に再現!

今回、彼は監督ではなくプロデューサーですが、原作を大事にしつつ、デル・トロらしい映画に仕上げています(監督は『トロールハンター』[2010年]『ジェーン・ドウの解剖』[2016年]のアンドレ・ウーヴレダル)。前述のとおり原作は、たくさんのお話を集めたアンソロジーです。従って、映画もオムニバス・スタイルになると思っていました。『トワイライトゾーン/超次元の体験』(1983年)とか『クリープ・ショー』(1982年。僕の大好きなホラー・オムニバス映画です!)みたいな。

しかし、デル・トロは巧みな構成で1本の映画に仕上げます。それは6人の男女それぞれが、呪いの本の力によって怖い物語の主役にされてしまう、という設定。こうすることで、ひとりひとりの身に起こる事件が、そのままひとつひとつのホラーストーリーになっているということです。すごく分かりやすく言うと、ある若者は「口裂け女伝説」に沿って殺され、別の若者は「人面犬」に出くわし、もう一人の若者の運命は「トイレの花子さん」の噂どおりの展開になる、みたいなイメージでしょうか(笑)。原作となった本自体が“最恐のアイテム”として劇中に登場する、という素晴らしいアイデアです。

『スケアリーストーリーズ 怖い本』©2020 CBS FILMS INC. ALL RIGHTS RESERVED.

いろいろなモンスターが出てきて楽しいのですが、ここで重要なのは、デル・トロはこの本の挿絵のイメージの再現にすごくこだわったということです。実は「Scary Stories to Tell in the Dark」は、その内容もさることながら、スティーブン・ガンメルというイラストレーターが手掛けていたモノクロの挿絵のインパクトで人気を博していた。

デル・トロもその挿絵に魅了された一人なのでしょう。だから本作は、ガンメルのデザインやトーンを活かして、この本が持っていた視覚的な怖さをできる限り再現しようとしています。みんながストレートに見たいと思う怪現象やモンスターを勿体ぶらず、ちゃんと見せてくれるのです。

『スケアリーストーリーズ 怖い本』©2020 CBS FILMS INC. ALL RIGHTS RESERVED.

とはいえ児童書の映画化なのだから、子ども向けなのでは? いえいえ、そんなことはありません。怖いシーンはしっかり怖い。特に中盤で語られる、女の子の吹き出物のエピソードはトラウマものですよ(笑)。

豊かな想像力と一歩を踏み出す勇気 ギレルモ・デル・トロが込めたメッセージ

一方、原作に敬意を払いながらも、今までのデル・トロ映画に通じるものもちゃんと加味されています。デル・トロは、この映画の時代設定を1968年としました。ベトナム戦争の影がアメリカを覆っている時代です。そして主人公の女の子は、空想好きでホラー作家を目指している、ちょっと変わった女の子です。

『スケアリーストーリーズ 怖い本』©2020 CBS FILMS INC. ALL RIGHTS RESERVED.

デル・トロの『パンズ・ラビリンス』(2006年)は、スペイン内戦時で妖精たちの存在を信じる少女がヒロインでした。『シェイプ・オブ・ウォーター』はキューバ危機・米ソ冷戦の時代を舞台に、人とは違った感性の女性が異形のクリチャーと恋に落ちます。どの作品も、戦争という暗い現実とダーク・ファンタジーが混じり合う世界が舞台であり、主人公はちょっと不思議ちゃんな女性たち。どんな状況であっても、豊かな想像力と感受性、そして一歩を踏み出す勇気があれば道は開けるのだ、とデル・トロは言いたいのかもしれません。

『スケアリーストーリーズ 怖い本』©2020 CBS FILMS INC. ALL RIGHTS RESERVED.

本作はモンスター好きもきっと満足するくらい怪物たちが大暴れですが、必要以上に残酷だったり、血しぶきが飛ぶようなシーンはありません。「そうそう、こういう怖い話みんな好きだったよね」と懐かしがりながら、たっぷり楽しめるホラー・エンタテインメントです。

文:杉山すぴ豊

『スケアリーストーリーズ 怖い本』は2020年2月28日より公開

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『スケアリーストーリーズ 怖い本』

ハロウィンの夜、町外れの幽霊屋敷に忍び込んだステラたちは地下室で一冊の本を見つける。ページを開くとそこには噂に聞いた怖い話の数々が綴られていた。作家志望のステラはこっそり本を持ち帰るが、翌日から仲間がひとり、またひとりと消えていく。のどかな町で起きた不可解な失踪事件。彼らの身を案じていたステラたちは、本の余白ページにひとりでに文字が浮き出て、新たな物語が書かれていくのを見てしまう。しかも主人公は消えた仲間たちで、それぞれが“いちばん怖い”ものに襲われる物語がそこにあった。毎夜新たに綴られる怖い話―。彼らはどこへ消えたのか?次の主人公は誰なのか? “怖い本”からはだれひとり逃げられない─

制作年: 2019
監督:
出演: