映像とアートの祭典「恵比寿映像祭」が今年も開催!
東京・恵比寿の東京都写真美術館を中心に行われる映像とアートの祭典「第12回恵比寿映像祭」が2020年2月7日(金)に開幕した。
会期中は、地域連携プログラムとしてYEBISU GARDEN CINEMAやマチナカのカフェやギャラリーでも、インスタレーションやトークイベント、スタンプラリーが行われるが、今年は同時期に開催される「未来の学校祭」(2月20日~24日:東京ミッドタウン)、「DIGITAL CHOC」(2月20日~3月8日:アンスティチュ・フランセ東京ほか)、「MEDIA AMBITION TOKYO」(2月28日~3月8日、14日:渋谷スクランブルスクエアQWSなど)と連携しており、都内で身近にメディアアートに触れられる1ヶ月間となりそうだ。
恵比寿映像祭には毎年総合テーマがあり、今年は「時間を想像する」。映像とは現実を記録するメディアだが、時に過去や近未来にも行き来することができる。同映画祭ディレクターの田坂博子さんは「時間は誰にとっても身近だが、同時に現代物理学の世界でもいまだ解明されていない領域。作品を通して、新しい発見や観客との対話を生むだけでなく、アートや映像表現から時間を想像することで映像の本質に迫り、改めて現在を見つめて考察できれば」という。
3つのコンセプトから成る、生物や記憶、時代に関わる展示作品の数々
そこで下記の3つのコンセプトを設定し、映像作品や展示作品を構成したという。
- 時間を記録する:新しいドキュメンタリー
- 時間を表現する:ポストヒューマン
- イマジナリータイム(虚時間)
1に該当するのが、東日本大震災以降、東北を拠点に創作活動を行っている小森はるか・瀬尾夏美共同監督の映画『二重のまち/交代地のうたを編む』(2019年)。嵩上げ工事が進む陸前高田を舞台に、4人の旅人が土地の人から話を聞き対話を重ねた上で、瀬尾監督が綴った物語「二重のまち」を詠むというワークショップを1本の作品にまとめたもの。その過程で生まれた絵画やテキスト、映像は展示インスタレーションにもまとめられており、「記憶を継承していくこと」に挑んだ2人の試みをより深く考察できるようになっている。
2を代表するのが、実験映像作家ベン・リヴァースによるヴィデオ・インスタレーション《いま、ついに!》で、木にぶら下がるナマケモノを16mmフィルムで撮影した40分の作品。人間以外のモノ、つまり動物にとって時間とは? を体感できるに違いない。世界中の映画祭で称賛を浴びているリヴァースの作品は他にも、タイのスウィーチャー・ゴーンポンと共同監督した『クラビ、2562』(2019年)が日本初上映され、リヴァース特集として短・中編3本も上映される。
3では、1960年代のSFブームの最中、未来をイメージしたアート作品を多数発表したアニメーター・真鍋博が1963年に発表した《時間》を展示。彼らが想像した未来を見つめながら、“今”を考えさせられるだろう。
打ち上げ花火を360°全方位から体験できる巨大ドームも登場!
また東京都写真美術館のロビーには、オランダのアムステルダム・スキポール空港にある労働者が毎分手描きするユニークな時計で同じみのマーティン・バースの「リアルタイム」シリーズがお目見え。今回展示されるのは、時計の針に見立てたゴミを清掃員が毎分動かしていく《スウィーパーズ・クロック》で、ちゃんと時間通り動いているのでご注目。もっとも本作には「時は、我々の労働で動いている」というメッセージや環境問題への啓発の意味も込められているという。
さらに恵比寿ガーデンプレイス・センター広場には、直径13mのドームシアターが設置され、プラネタリウムの花火版「ハナビリウム」が無料で鑑賞できる。400年以上の歴史を持つ花火の文化と技術を伝える花火界初のフルドーム教育映像作品で、実際の花火大会では花火師にしか味わうことのできない真下から捉えた花火の映像もあり、360度の全方位を花火に包まれる体験は迫力満点だ。
制作チームは「ご存知の通り、花火に使用される火薬はかつては鉄砲、武器として利用されていたが、時代を経て花火として平和利用されている。そうした花火が歩んできた文化を次世代に伝えていけたら」と本作への思いを語った。“時間”を考えるはずが、時を忘れて真冬の恵比寿で打ち上がる花火に酔いしれそうだ。
取材・文:中山治美
「第12回恵比寿映像祭」は2020年2月23日(日・祝)まで開催。
第12回恵比寿映像祭
年に一度、15日間にわたり展示、上映、ライヴ・イヴェント、トーク・セッションなどを複合的に行う映像とアートの国際フェスティヴァル。
2020年2月23日(日)まで開催