第二次世界大戦下のドイツで、ナチスはヒーローだと洗脳されていた10歳の少年ジョジョ(ローマン・グリフィン・デイヴィス)が、ひとりの勇敢なユダヤ人少女エルサ(トーマシン・マッケンジー)との出会いで大きく変わっていく姿を描いた『ジョジョ・ラビット』。
子役2人の大人顔負けインタビューを紹介する。
「オーディションでは生意気でナルシスティックなガキって思われたかも(笑)」
―ローマンさんはこれが映画初出演ですよね。
ローマン・グリフィン・デイヴィス:うん。『フォードvsフェラーリ』(2019年)のオーディションを受けにいったのがきっかけなんだ。そのとき『ジョジョ・ラビット』のオーディションがあるという話を聞いた。母もぼくも『ピーター・ラビット』(2018年)のオーディションだと思いこんでいたんだけど(笑)。
―(笑)。
ローマン:オーディションに行くとき、車のなかで台詞を覚えようとしていたんだ。そこで勘違いしていたことに気がついた。「この男の子、ナチスみたいなんだけど」ってお母さんに言ったら、「まさか、そんなわけないじゃない!」って(笑)。
―『ピーター・ラビット』にナチスは出てこないですからね(笑)。
ローマン:それでもオーディション会場には行ったんだ。ぼくは棒立ちで台詞を吐き出すだけ。正直なところ、ろくでもない出来だった。でも、なぜかまたオーディションに呼ばれて、今度は監督とのスカイプだった。これもまたひどい出来だった。でも、タイカ(・ワイティティ監督)はぼくが演技を終えるたびに、「いいね。今度はこうやってみようか」と励ましてくれて。でも、隣に座っていたキャスティング・ディレクターは、「こんなガキに7回もチャンスを与える必要があるわけ?」って呆れ顔で見てたよ(笑)。
―(笑)。
ローマン:タイカがどれだけ演技指導してくれても、ぼくが同じパターンを繰り返すから、「生意気でナルシスティックなガキだな」と思ってたんだと思う(笑)。
「学校が教えるホロコーストは、悪夢のような体験をした人々の視点が欠けていた」
―コメディとシリアスなテーマが混ざり合った野心的な映画ですが、脚本を読んで理解できましたか?
トーマシン・マッケンジー:どんな映画を目指しているのか、脚本を読んだ瞬間に理解できたわ。確かに、この映画ほど他人に口頭で説明するのが難しいものはない。伝えようとするテーマと、手法があまりにもかけ離れているから、クレイジーだと思われてしまっても仕方がない。実際、脚本を読んでも、どんなニュアンスで演じればいいのか分からなかったの。現場に行って、シーンを演じながら掴んでいった感じね。
―母親ロージー役を演じたスカーレット・ヨハンソンとの共演はいかがでしたか?
ローマン:残念ながら撮影前には会うことができなかったんだ。でも、現場では常に励ましてくれた。彼女はいまではお母さんで、子役だった経験もある。だから、ぼくを中途半端な役者のように扱わず、ぼくがベストの力を発揮できるように支えてくれたんだ。
―お二人ともまだお若いですが、第二次世界大戦やホロコーストについてはどの程度ご存じでしたか?
トーマシン:実は『ジョジョ・ラビット』の撮影のちょっと前に、第二次世界大戦とホロコーストについて学校で勉強していたの。この映画を通じて、抜けているところを埋めていくことができた。学校で学んだのは歴史的な出来事や因果関係なんだけど、悪夢のような体験をした人々の視点は欠けていたから。
ローマン:ぼくは両親から第二次世界大戦やホロコーストについて教わっていたけど、青少年団ヒトラーユーゲントについては知らなかった。それで、ドキュメンタリーを見たりして調べることになったんだけど、つくづく不気味で、クレイジーなものだったことを悟ったよ。ナチスは子供たちを殺人ロボットにするために洗脳していたんだからね。
トーマシン:この映画はすごく大事なことを描いていて、ぜひみんなに見て欲しいと思っているの。同じことを繰り返さないように過去を思い起こしてくれることはもちろん、悲しみや恐怖や怒りを描きつつ、希望や楽しさもあるから。若い世代にとって親近感を覚えやすいようにできている。映画を観たらきっと何かを学べると思うし、誰かと話したい気持ちになってくれると信じているわ。
取材・文:小西未来
ジョジョ・ラビット
10歳のジョジョは、ひどく緊張していた。今日から青少年集団ヒトラーユーゲントの合宿に参加するのだが、“空想上の友達”アドルフに「僕にはムリかも」と弱音を吐いてしまう。アドルフから「お前はひ弱で人気もない。だが、ナチスへの忠誠心はピカイチだ」と励まされたジョジョは、気を取り直して家を出る。時は第二次世界大戦下、ドイツ。ジョジョたち青少年を待っていたのは、戦いで片目を失ったクレンツェンドルフ大尉や、教官のミス・ラームらの指導によるハードな戦闘訓練だった。何とか1日目を終えたもののヘトヘトになったジョジョは、唯一の“実在の友達”で気のいいヨーキーとテントで眠りにつくのだった。ところが、2日目に命令通りウサギを殺せなかったジョジョは、教官から父親と同じ臆病者だとバカにされる。2年間も音信不通のジョジョの父親を、ナチスの党員たちは脱走したと決めつけていた。さらに、〈ジョジョ・ラビット〉という不名誉なあだ名をつけられ、森の奥へと逃げ出し泣いていたジョジョは、またしてもアドルフから「ウサギは勇敢でずる賢く強い」と激励される。元気を取り戻したジョジョは、張り切って手榴弾の投てき訓練に飛び込むのだが、失敗して大ケガを負ってしまう。
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2020年1月17日(金)より公開