どうやってこのキャスト集めたの!? 豪華すぎる面々に眼福
ヘンリー・カヴィル主演、スタンリー・トゥッチ、ベン・キングズレーら豪華キャストが競演するサイコサスペンス『サスペクト-薄氷の狂気-』が2019年12月より公開中。精神異常の殺人鬼が登場する映画は数あれど、超おっぱっぴーな容疑者が冒頭から出ずっぱりながら、中盤過ぎまで主人公がそこに直接絡まないという、ちょっと不思議な展開のサスペンス映画だ。
カヴィルが演じるのは無精髭のワイルド系刑事(デカ)、マーシャル。仕事一筋のストイックさゆえか、もしくは愛情表現のスイッチが壊れてしまったせいか家族関係は崩壊していて、ティーンの娘に心配されるレベルのモサついた日常を送っている。
そんなマーシャルのボスがトゥッチ演じるハーパーで、同僚はアレクサンドラ・ダダリオ演じるプロファイラーのレイチェル。ここまでは想定内の配役だが、キングズレーの役柄にちょっと意外性がある。『アイアンマン3』(2013年)の偽マンダリン役などで怪しい爺さんキャラが定着した感もあるが、本作では少女とコンビを組んで未成年を買春するキモオヤジたちを、肉体的にも精神的にも徹底的にこらしめるビジランテおじさんを好演。あるとき相棒の少女がターゲットらしき者に連れ去られ、不本意ながら警察のお世話になったことで物語のエンジンがかかる。
凶悪事件にセラピー効果アリ!? ダウナーだったカヴィルに変化が……
迅速かつドローンを駆使したハイテクな捜査を行い、デカい屋敷の地下でパンイチで踊っていた容疑者はあっけなく御用。しかし、その容疑者が精神を病んだ風の男だったものだから、お話は面倒な方向に進んでいく。ブレンダン・フレッチャー演じるサイコなシリアルキラー(と思われる)サイモンは、サスペンス映画史上トップクラスにイラつく男! ワケの分からないことをつぶやいたり幼児のように泣き叫んでばかりのくせに、地下室には殺傷度の高い罠を仕掛けたりするスキルがあるという、謎が多すぎるキャラだ。
どう考えても心神喪失狙いか捜査を撹乱するための演技だろ……と思わざるを得ないのだが、そんなサイモンを見てもレイチェルは「何こいつ……?」みたいな表情で普通の質問をするだけなので、ちゃんとプロファイルの仕事せえや! と八つ当たりしたくなってくる。その様子を無表情で見つめるカヴィルもスーパーマン時の100倍ダウナーな雰囲気なのだが、そのぶんダダリオの瑞々しさやフレッチャーの全力狂人演技が際立っていて、結果的にバランスが取れているという奇跡的な状況が生まれていたりする。
サイコな単独犯かと思いきや、健常者の仲間がいるらしい謎多きサイモンのせいで、捜査は遅々として進まない。しかし、その過程で起こる様々なトラブルがマーシャルにとってセラピー的な効果をもたらすという、かなり珍しい展開には面食らってしまう。しかも説明的なセリフを極力避けているので、スクリーンにかぶりついていないとお話に置いていかれるかもしれない。
監督のデヴィッド・レイモンドは本作が初の長編のようだが、脚本も務めた初監督作にここまで豪華なキャストを集めた手腕はスゴい。統合失調症かと思われたサイモンの最後の種明かしにビックリ! と思ったらクライマックスはまだ先で、さらなる驚愕の大オチが待っているのでご用心を。
『サスペクト-薄氷の狂気-』は劇場発信型映画祭「のむコレ3」にて2020年1月17日(金)よりシネマート新宿、2019年12月9日(月)よりシネマート心斎橋で公開中
https://www.youtube.com/watch?v=r_tjh9ChLdo
『サスペクト-薄氷の狂気-』
ある日、若い女性の遺体が見つかった。捜査官らは手がかりから犯人と思われる男サイモンを逮捕する。彼の尋問にあたるのは、女性プロファイラーのレイチェル。数々の事件の痕跡は見つかったが、彼には知的障害があるのか、子供っぽい振る舞いばかりを見せ、捜査は一向に進まない。そんな折、さらなる事件が発生する。投獄されたサイモンの仕業なのか? だとしたら彼はどのように犯行に及んだのか?? 果たして真実は!?
制作年: | 2018 |
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劇場発信型映画祭「のむコレ3」にて2020年1月17日(金)よりシネマート新宿、2019年12月9日(月)よりシネマート心斎橋で公開中