NYのストリートでホームレス生活をしていた青年が、いかにして20世紀を代表するアーティストの一人になったのか? オダギリさんも敬愛するジム・ジャームッシュの公私にわたるパートナーでもあるサラ・ドライバーが監督した『バスキア、10代最後のとき』を、オダギリさんはどう観たのだろうか。
サラ・ドライバーが当時のニューヨークを、バスキアの視点で見直してみたということ
バスキアが10代の頃と20代の頃、要は有名になる前の姿を主に追ったドキュメンタリーだったんですけど、それを撮った監督サラ・ドライバーは、ジム・ジャームッシュのパートナーなんです。もちろんジャームッシュの作品は好きで全部観ているので、初期のものはサラ・ドライバーがプロデュースしてたりとか、役者として出てたりしてるのを若いときから観ていると、すごく感慨深いものがあって。
僕の記憶が正しければ、この映画のファーストカットがニューヨークを引きで、船の上から撮る画なんですが、多分それって『パーマネント・バケーション』(1980年:ジャームッシュ監督のデビュー作)のラストカットなんですよね。
いきなり最初から、その部分を“掴まれた”気がして。それが一つ僕にとっての、映画少年だった頃のドキドキ感を思い出させてくれる監督。そしてジャームッシュも、この中でインタビューされている姿とかが出ていますし。サラ・ドライバーがバスキアに注目して、あの時代のニューヨークをもう一度見直してみたっていうことに関して、すごく興味があったんです。
自分だったら、あのニューヨークでどういう表現をしたかっただろう?
一方で、あの時代のニューヨークの荒れ方とか、奇抜さとかアート的な感覚とかって、僕らは肌で感じてはいないじゃないですか。けど、あの時代をどこかで羨ましがっている自分は、ずっといるんですよ。パンクのムーブメントだったりとか、いろんなクラブで起こっていたアートな流れだったりっていうことが、いま僕らの世代からすると、すごく憧れていた時代だったので。そのど真ん中に生きていたバスキアが、街や文化からどんな影響を受けていたのか? っていうところにすごく興味があって。
また自分だったら、あのニューヨークでどういう表現をしたかったんだろうか? とか、いろんなことを自分に置き換えて観られたというか。
あと若いときって、やっぱり皆いろんなことがしたいじゃないですか。いろんな自分の可能性を試したいし、自分を知りたいし。そういう気持ちをまた思い出させてくれたから、きっと今、10代とか20代前半の、何かわからない焦燥感みたいなものに動かされている若者にとって、すごくいい刺激になるんじゃないかなと思って。そういう意味でも、いろんな人にいろんな面白さを与えてくれる作品だなと思いましたね。
『バスキア、10代最後のとき』は2018年12月22日から公開中
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『バスキア、10代最後のとき』
27歳という若さでこの世を去った天才アーティスト、ジャン=ミシェル・バスキア。彼の青年時代に焦点を当て、70年代末から80年代初頭のニューヨークとの関係性を、バスキアの元恋人アレクシス・アドラーや映画監督のジム・ジャームッシュなど、著名人へのインタビューを通して明らかにしていくドキュメンタリー。
制作年: | 2017 |
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監督: | |
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