イーサン・ホークを父に、ユマ・サーマンを母に持ち、女優・モデル・歌手としてマルチな才能を発揮している注目の新星マヤ・ホーク。『ストレンジャー・シングス 未知の世界』シーズン3(2019年)のロビン役で人気急上昇中の彼女が、ミュージシャンとして2019年11月20日(水)・21日(木)にブルーノート東京にて待望の来日公演を行った。
マヤは、自ら作詞を手掛けた先行シングル「To Love a Boy / Stay Open」の2曲をはじめ、来年リリース予定のアルバムに収録される楽曲も披露。ある時はチャーミングに、またある時はマニッシュに、ステージ上で様々な表情を見せるマヤの所作と、情感豊かでナチュラルな彼女の歌声に心を奪われる至福のライブだった。
ラジオの生出演や取材で多忙な中、マヤへの独自インタビューが実現。彼女の楽曲プロデュースを手掛け、来日公演のサポートも務めたジェシー・ハリス(ノラ・ジョーンズに提供した「Don’t Know Why」でグラミー賞受賞)も同席し、音楽活動や『ストレンジャー・シングス』の思い出、父イーサンとジェシーの親交、イーサンの監督作『痛いほどきみが好きなのに』(2006年)の音楽製作についてなど、たっぷり語ってもらった。
「お母さんが買ってくれたギターで、ジェシーと一緒に曲を書いたんです」
―ジェシーさんは、あなたのお父さん(イーサン・ホーク)と長年の友人なので、彼があなたの歌をプロデュースするのは自然な流れだと思います。このコラボレーションはどのようにして実現したのでしょうか?
マヤ:ジェシーのことは子供のころから知っていて、曲を作ってはお父さんやジェシーに渡していたの。ある時、ジェシーに曲を褒めてもらえたんだけど、「もっと皆が歌える曲にできるといいね。メロディが大切だよ」とアドバイスをくれました。ただ、子供だったので、ジェシーのアドバイスを難しく感じて、どうやったら良い曲が作れるのか分からずに悩み、曲を作らなくなってしまったんです。
その頃、演技にも興味を持ちだして演技学校に通うようになりました。初めて役をもらえた時に(英BBC製作ドラマ『若草物語』[2017年])、お母さんがギターを買ってくれました。ドラマの撮影のため、ひとりでアイルランドに3ヶ月間住んでいた頃、買ってもらったギターを弾きながらまた歌を作ってみたんです。1曲だけ納得いく曲ができたので、ジェシーに連絡を取ってみました。そしてジェシーと会って、アドバイスを貰いながら新しいコードを追加していき曲を完成させました。
その後も、私がジェシーに歌詞を送って彼が音楽をつけてくれて……と、自然と一緒に曲を作ってレコーディングしていきました。ジェシーは才能あふれる人で、とても優しくて、喜んで一緒に作品を作ってくれるんです。それに「まずはやってみよう!」と背中を押してくれるから、曲を作ることへの恐怖心を振り払ってくれるし、音楽の楽しさを教えてくれました。
―マヤさんのファーストシングルを聴いた時、彼女のソフトでナチュラルな声がジェシーさんのアコースティックなサウンドと、とても合っていると思いました。あなたは多くの才能あるミュージシャンとコラボレーションしていますが、マヤさんの魅力はどこにあると思いますか?
ジェシー:マヤと曲を作っているけど、こういうコラボレーションの仕方はとても珍しいんだ。彼女が歌詞を書いて、それを僕に送ってくれて、僕がメロディをつける。でも普段は、共同で作業する人たちと集まって座りながら、じっくり考えて曲を作っているんだ。マヤが書いた美しい歌詞にメロディをつけていく作業をとても楽しんだよ。
マヤ:役割がハッキリしているから、そのぶんケンカをしなくて済むんです(笑)。
ジェシー:マヤの声が彼女の曲にはぴったりなんだ。歌っているときの表現方法がとても豊かで、観客の心の琴線に触れることができる。マヤとの音楽活動はとても楽しいね。これまでNYでライブをやっていたけど、今回の日本でのツアーが海外初ライブなんだ。
マヤ:とても遠くまで来ちゃったね(笑)。
ジェシー:NYから飛び出してアジアまで来た。アルバムも完成してリリースが控えているし、皆が聴いてくれて、どんな反応をしてくれるか楽しみにしているよ。
「私自身の感情から自然と出てきた様々な“愛”をテーマに曲を書いています」
―マヤさんのファーストアルバムは、どのようなサウンドに仕上がっているのでしょうか?
ジェシー:クラシック・フォーク・ロックという感じかな。フリートウッド・マックやジョニ・ミッチェルのような感じの曲もあるし、(ライブで演奏した)「SO LONG」や「MENACE」のような、ちょっとエキゾティックな曲や、カントリー風の曲もある。心地よい雰囲気のアルバムになっているよ。
―マヤさんがご自身で詩を書いて歌おうと思ったきっかけを教えて下さい。
マヤ:私は演じること、音楽を作って歌うこと、物語を伝えることが大好きなんです。私が作った曲は、私が誰かに伝えたいと思い、私自身の感情から自然と出てきたもので、様々な“愛”をテーマに書いています。この2年間はとても充実していて、いろんなことに刺激を受けて15曲ぶんの歌詞を書いたんです。歌詞を書き上げるたび、ジェシーに送っていますね。
―ジェシーさんのニューアルバム『SONGS NEVER SUNG』はジャジーなサウンドに仕上がっていますが、どのようなコンセプトでレコーディングしたのでしょうか?
ジェシー:このアルバムは昔ながらのやり方で作ったんだ。アレンジャーと一緒にスタジオに入って、ミュージシャンたちと一緒にライブで録音して、僕もバッキングボーカルなしで歌をレコーディングしている。オーバー・ダビングも極力使わず、リズムもスウィング感のあるものにして、クラシックな音作りを心がけた。その結果、歌詞もジャズやバラードのスタンダードナンバーのような雰囲気になったんだ。とても楽しいレコーディングだったよ。
<後編に続く>
取材・文:森本康治(映画音楽ライター)