伝説のアクションスターにしてジークンドーの創始者、ブルース・リーの功績
世界にはさまざまな格闘技があり、プロ、アマ含めて数えきれないほどの選手がいる。格闘技ジムで汗を流す一般の愛好家はさらに多い。そして、その中の何割かは映画(スター)に憧れて、格闘技を始めたはずだ。
ブルース・リーやジャッキー・チェン作品、『ロッキー』(1976年)を見てボクシングジムに入ったとか、『ベスト・キッド』(1984年)きっかけで空手を始めたとか、筆者は実際に何度も聞いてきた。
「キン肉マン」や「ドラゴンボール」、「グラップラー刃牙」といったマンガ/アニメの影響も大きい。格闘家として有名になり、ハリウッドに進出するというパターンもある。
映画と格闘技について語る時、絶対に外せないのはブルース・リーの存在だ。史上最高の格闘アクションスターにして、現実に武術家でもあった。
『燃えよドラゴン』(1973年)の冒頭で披露している寝技ありの格闘技・ジークンドーは、リーが創始したもの。そのため、総合格闘技(MMA)の起源の一つとも言われている。UFCや、かつてのPRIDE、現在のRIZINもブルース・リーがいてこそ、というわけだ。
カンフー映画への愛を捧げた宇宙最強ドニー・イェン、エンタメ性抜群のムエタイで世界に羽ばたいたトニー・ジャー
リーに憧れて武術を学び、その師匠である詠春拳の達人を演じた『イップ・マン』(2008年~)が人気シリーズとなったのがドニー・イェン。“宇宙最強”というキャッチフレーズを持つドニーは、多彩なスタイルの格闘シーンが持ち味だ。
『イップ・マン』の詠春拳、『導火線 FLASH POINT』(2007年)などでは、本格的なMMAをアクションに導入。タックルや関節技で“魅せる”映画を作り上げてみせた。
『カンフー・ジャングル』(2014年)ではカンフー、そしてカンフー映画そのものへの愛とリスペクトを捧げている。この幅の広さもドニーの“最強”たる所以だろう。
カンフーとは別の流れで世界に衝撃を与えたのが、『マッハ!』(2003年)のトニー・ジャー。彼がベースとする格闘技はタイの国技、ムエタイである。
キックボクシングの源流でもある打撃格闘技で、中でも主武器となるのがヒザ蹴り、ヒジ打ちだ。人体の中でも特に堅い部分を鋭角にぶつけるわけで、アクションとしてもバイオレンス度高め。なおかつアクロバティックでエンタメ性も抜群なのが、ジャーのムエタイバトルと言っていい。
『SPL 狼たちの処刑台』(2017年)ではルイス・クーと共演し、ハードでダークな作風の中で輝きを見せている。
https://www.youtube.com/watch?v=ljzKc7EkYfk
アクション映画をきっかけに格闘技に興味を持てば、アクション映画をさらに楽しめる
映画には、観客にとってさまざまな“出会い”がある。『IT/イット』二部作(2017年~)を見てスティーヴン・キングの小説を読むようになったという人、『ボヘミアン・ラプソディ』(2018年)でクイーンを知ったという人も多いのではないか。
格闘技もその一つであってほしいと、プロレス格闘技のライターでもある筆者は思う。映画を見て気になったら、ぜひ現実のMMAやムエタイ、キックボクシングを見てもらいたい。そうすれば、間違いなくカンフー/格闘アクション映画をさらに深く、面白く感じられるから。
文・橋本宗洋
「特集:24時間 カンフー映画」はCS映画専門チャンネル ムービープラスにて2019年11月放送