友達とも家族とも違う、バンドメンバーという絶妙な関係性
“バンドあるある”みたいな話はすごくありふれていて、誰もが一度は聞いたり記事で読んだりしたことがあると思う。僕のやっているバンド、<ミツメ>を取材していただいた時も、よく「メンバー同士仲良いんですか?」とか、なにか裏話的なものを期待して聞かれたりするし、僕自身も他のバンドについて気になったりするので、ある程度みんな興味があるのかなと考えたりもする。
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ミツメは2019年で活動10年目になるが、大学時代の結成ではあるものの、メンバーのうち2人は高校で出会っていたりで、もうそれぞれ10年以上の仲である。もはや家族の域というか、長い時間をかけてなんとなくお互いの居心地の良い距離感への理解が深まりつつ、解決しなくてはならないことはその都度、力を合わせてなんとかやってきたなあというのが実感で、ただ遊ぶだけの友達とは違った関係性であることは確かだ。
シカゴの大成功、転落、復活を映し出すドキュメンタリーに「バンドとは何か?」を見出す
さて、アメリカのロックバンド、“シカゴ”は2019年で結成52年。ドキュメンタリー映画『ザ・ヒストリー・オブ・シカゴ ナウ・モア・ザン・エヴァー』(2016年)は、メンバー本人たちや周囲のスタッフのインタビューを交えて、バンドの軌跡をまとめた作品である。いわゆる“ロックバンド”と聞いて想像される姿そのままの若かりし彼らの姿や、大成功と転落、復活からさらなる栄光へと登っていく道程を、貴重な映像とコメントと共に映し出す。
その活動の過程で、バンドの状況は目まぐるしく変わっていく。単純に超人のような音楽的才能にあふれたメンバーたちには、ただただ畏敬の念を抱く。しかし、そのメンバー同士の軋轢や齟齬も収められていて、バンドを始める以前の自分であればこの映画を見て、きっと「なんでそういう判断になるんだよ!」とか、「俺ならこうするのに」みたいな気持ちになっていただろうと思う。「合理的じゃない」とか、「情がない」とか……。
でも今となっては、そういう傍から見ればもどかしくなるようなやりとりを経て、時にバンドが誰も望まなかった結果に向かっていくのは避けがたいことだよなあ、という気持ちもある。これもまた、バンドを続けていくと陥りがちな諦観にも近い思考なのだが、自分の中にもそういった考えが着実に育っていることに気づいて、10年でそんなことじゃ、シカゴのように20年、30年と続けていけないな、と気持ちを引き締めた。ただ、なるようになるというのが全て、という気もしている。
シカゴの曲を知っていても知らなくても(CMなどでイントロだけでも聴いた曲が絶対にあると思う)、“バンドとは何か?”についての一つのケースを見ることができる映画なので、ぜひ観てみてほしい。
文:川辺素(ミツメ)
『ザ・ヒストリー・オブ・シカゴ ナウ・モア・ザン・エヴァー』は2019年9月21日(金)より新宿区シネマカリテほか全国順次公開
https://vimeo.com/344562609
『ザ・ヒストリー・オブ・シカゴ ナウ・モア・ザン・エヴァー』
「長い夜」「素直になれなくて」「サタデイ・イン・ザ・パーク」「愛ある別れ」… 誰もが知る永遠の名曲総登場。47枚のアルバムがゴールドとプラチナに輝き、70枚のシングルがチャートイン、セールス数は1億2200万枚を突破。現在も年間公演は100回以上、まさにアメリカを代表する最強バンド=シカゴ。
看板ギタリストの事故死、リード・ヴォーカル突然の脱退、幾多のメンバー交代劇そして頂点からの転落と低迷、それでも何故バンドは続いたのか?栄光の陰に潜む波乱万丈、50年の歴史を代表曲と共に紐解く全音楽ファン必見のロック・アンソロジー。
制作年: | 2016 |
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監督: | |
音楽: | |
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2019年9月21日(金)より新宿区シネマカリテほか全国順次公開