第40回すばる文学賞佳作を受賞し、小説家としても注目を浴びるふくだももこ監督の長編デビュー作『おいしい家族』が2019年9月20日(金)より公開。松本穂香主演で描く、常識ハズレな家族の物語だ。
ふくだ監督と松㟢翔平さんとの対談、最終回をお届け。「テラスハウス」出演中の松㟢さんと、同じくシェアハウスで暮らすふくだ監督が、本作で描かれた“新しい家族のカタチ”のように、共同生活の魅力や楽しみ方、そして、マルチに活躍するお二人が影響を受けた映画や、表現者としての今後の歩み方を明かしてくれた。
ふくだ「人と一緒にいたいから、撮影現場に行くのかも」
―実際にシェアハウスで暮らしているお二人ならではの共同生活の魅力は何ですか?
翔平:やっぱり、ご飯を一緒に食べるところじゃないですかね。食べて、飲んで。それ以外で一緒に何かをすることってあんまりないかな。僕、一人で食べるご飯が本当に嫌いなんです。むしろ一人だったら食べないですね。タイミングをなくしちゃうというか、ずっと一人で家にいたら、一日なにも食べないかもしれない。
ふくだ:人に会わなきゃ餓死するってこと?(笑)
翔平:さすがにめちゃくちゃ腹が減ったらなんか食べますけど(笑)。でも本当に一日一食とかになっちゃうかも。
ふくだ:私も人と一緒にいたいから、撮影現場が好き。疑似家族じゃないけど、短い間みんなでギュッと一丸になって、一緒にご飯食べて、現場っていいなと思います。
翔平:いいですよね。
ふくだ「影響を受けたのは、是枝裕和監督と山戸結希監督」
―翔平さんはどんな映画がお好きなんですか?
翔平:つい最近『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』(2019年)を観て。最後の10分ぐらい、笑いが止まらなかったです。大爆笑でした。
ふくだ:いいな~、はよ観たい~。
翔平:監督が自由に、好き勝手にやってる映画っていいですよね。だから(ヴェルナー・)ヘルツォークとか好きで。人の金で船を作って壊す、みたいな(笑)。
―監督が最近、映画館で観た映画は?
ふくだ:『存在のない子供たち』(2019年)。あれは素晴らしかった。
―映画はどういうところに注目して観ますか?
ふくだ:映画館を出た瞬間に、世界とか景色が変わる時、ありますよね?
翔平:ありますね。
ふくだ:世界って本当に綺麗やなって。映画に限らずですけど、そういう気持ちになれると、いい映画やったなあと思います。
翔平:僕は昔から、映画で流れてる音楽がいつ切れるんだろう? って気になるんですね。観ていて納得がいかない時もあって、だからといって正解はなくて。音楽の切りどころとか、すごい難しいなと。人それぞれに「ここで切ってくれ」っていうのがあるから、正解を決めるのは無理な話だと思うんですけど。
ふくだ:そんなところ観てる人おるの!?怖っ(笑)。
翔平:自分も大学時代に映画制作をしていて、編集してる時に音楽の切り方が分からないなぁと思ってて。フェードアウトしてもダサいし、バツっと切っても“いま終わりました感”が出ちゃうし。例えば、4分の曲を最初から最後まで使ってシーンを作ると、映画の中の時間が捻じれてしまうんですよね。それまで10分間の出来事を凝縮して2分ぐらいにしていたものを、音楽が4分間続くと実際の時間の感覚が入ってきてしまうから、使えない。難しいですよね。
ふくだ:それ、すごくおもしろいですね。そんなの考えたことなかった。
―では、ふくだ監督が影響を受けた作家は?
ふくだ:影響を受けたのは、是枝裕和監督と山戸結希監督です。是枝監督は、私が描きたい人生のテーマをずっと描いていらっしゃるので、影響を受けざるをえないというか。でも、私は是枝監督とは別の方法で家族を描くことをしなければならないと思います。まず、是枝監督のようには撮れないですし!山戸監督は同世代で、ライバル……って言うのもおこがましいですけど、20代前半の頃に彼女の作品を観た時に、自分が何を撮ればいいのか分からなくなってしまいました。自分が撮りたいことは全部、彼女によって素晴らしい形で昇華されていて、私が撮る意味なんてない。「どうしたらいいんだ!?」って、辞めようと思ったりもしましたけど、続けてたら山戸監督のプロデュースする映画に誘ってもらえたりもしたんで、「生きててよかったな~」って感じです。
―翔平さんは、影響を受けた作家さんはいますか?
翔平:僕は『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』(1995年)とか、押井守監督の考え方にすごい影響受けたりしてますね。あと、村上龍さんの作品にも強い影響を受けています。
―お二人の共通点として一つの仕事だけではなく、マルチな分野で活躍されていますが、それは意識していますか?
翔平:僕は、食うためです。一つのバイトをずっと続けることができない性分なので、小分けにしているだけですね。いただいた仕事を全部受けていたら、こうなってた(笑)。お話が来たら全部引き受けてます。
ふくだ:いろんなところから仕事の依頼があってうらやましい。それは人脈的なことなんですか?
翔平:どうなんですかね? 僕がヒマそうだから声をかけてくれるんだと思います(笑)。
―監督も多方面でお仕事されてますよね。
ふくだ:「映画と小説どちらが本業ですか?」みたいなことをけっこう聞かれますね。
翔平:無粋なこと聞きますね。
ふくだ:そうなの。「は?」と思いながら聞き流している(笑)。聞かれるたびに「なんで一つを選択せなあかんのやろう」って思う。そんなの「好きなことやらしてくれ」って思うよね。
翔平:思いますね。あとは体力とスケジュールだけですよね。
ふくだ:一つのことをやるのは、もちろん素晴らしいと思うけど、人生短いんやし、好きなことは何でもやった方がいいと思う。
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『おいしい家族』2019年9月20日(金)より全国ロードショー
◆取材協力◆ そうめん専門店「そそそ」
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